奪われたものは要りません

みん

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76 ピサンテへ

パーティーが終わって皆を見送った後、ルチア様達にお礼を言って邸に戻って荷物の整理を──

「セレーナ、今日は招待してくれてありがとう」
「あ、クロード様。こちらこそ、来てくれてありがとうございました」

クロード=ハイセン

ハイセン伯爵家の次男で、ロイド様とマリッサ様の友達で、今は第二騎士団に所属している見習生だ。

「来週、ロイドとマリッサと一緒にウチに来ない?皆で集まろうって話になったんだ」
「予定が合えば行かせてもらって良いですか?」
「勿論。誘ったのは俺だから、何も気にせず来てくれたら嬉しいよ。それじゃあ、これで俺も帰るね。本当に、誕生日おめでとう。またね」
「ありがとうございます。気を付けて帰って下さいね」

フリフリと手を振って去って行くクロード様に、私も手を振って見送った。

「仲が良いんだな」
「うわっ──ジェラール様!?」
「彼は……ハイセン伯爵の息子だったか?」
「よく覚えてますね」

ハイセン伯爵は王都ではなく領地に居る事が殆どで、あまり社交界には出て来ない上に、クロード様は次男なのに、顔を見ただけで分かるとは、流石は王弟。高位貴族にもなると、貴族名鑑が頭に詰まっていると聞いた事があったけど、本当の事だったのか。

「まあね……一応私も王族だからね………で?彼からのお誘いは受けるんだろう?」
「オリビアさんに訊いてからですけど。あ、勿論、夕食には間に合うように帰って来ますから、食事の事は大丈夫です!任されたはきっちりしますから」
「セレーナは……真面目だね……」

ぽんぽんと、私の頭を優しく叩くジェラール様。最近、よくされているような気がする。以前は特に思わなかったけど、元の年齢に戻った今では、少し恥ずかしいなと思ったりもする。

「今から荷物の整理をするんだろうけど、その前に……すまないが、あそこの花に水をやってくれないか?」
「花に……水ですか?」

ジェラール様が指さす方を見ると、少し元気のない花があった。それに気付くジェラール様は、あの花が好きなんだろうか?
勿論、して欲しいと言われたらするけど、わざわざ媒介する魔法陣を介さないと魔法が使えない私がするより、水属性の魔力持ちのジェラール様がした方が早いのでは?と、私が言いたい事が分かっているような顔をして微笑んでいる。

ー何かあるのかな?ー

不思議に思いつつも、私は常に持ち歩いている、自分で紙に描いた魔法陣を媒介にして、その花に水やりをした。

ちなみに、私は“無属性”だけど、カイリーさんに水の攻撃を加えたと言う事で、(パルティアーズ公爵側に)秘密扱いにはしてもらっているけど、報告書に記載する為に“水属性”の魔力持ちと言う事にしてもらっている。

「アレで、おとなしくしていれば良かったものを……」
「はい?何か言いましたか?」
「いや、何でもない。水遣り、ありがとう」
「はい。ジェラール様も、今日はありがとうございました。それでは、私は邸に戻りますね」
「私はもう少ししてから戻るよ」

と言って、ジェラール様とはそこで別れて、私は邸に戻り荷物の整理を始めた。




その翌日の早朝に、アデールさんは出立した。
私は、朝食を食べてからの引っ越し──と言っても、もともと私の荷物は少ない上、移動は魔法陣で一瞬だし、家には私の物があるから、引っ越しは一瞬で終わってしまう。

「ん?」

そこで気付く。

「引っ越しする意味……ある?」

魔法陣で一瞬で移動できるなら、わざわざ引っ越さなくても、ご飯を作る時だけに来る事もできる。その方が、ジェラール様の邪魔にもならない筈。『この家はセレーナの家だから』と、気を遣ってくれているだけなのかもしれない。本当に私がここに住んで良いのか──

「うん。一度ジェラール様に確認してみよう」

荷解きはそれからする事にして、取り敢えず、部屋の掃除から始めた。





「あ、おかえりなさい」
「……ただいま。私からも、おかえり」
「あ…はい。ただいま?なんですけど……私、本当にここに住んでも大丈夫ですか?」
「え?何が?」

と、私は早速ジェラール様に確認する事にした。




「あぁ、そう言う事か……何度も言うけど、私はそれなりの身分があって、嫌な事は嫌だと言える立場の人間だから、本当に嫌ならセレーナをこの家に住む事を勧めてない。それに、私がセレーナの料理が食べたいからお願いしたんだ。しかも、この家はセレーナの家─と言うより、セレーナの為にある家だから、セレーナが住むべきなんだ。だから、寧ろ私の方が邪魔者なのかもしれない。ただ、ここは国の管理下にあるから……申し訳無いが、私が居る事は我慢して欲しい」
「邪魔者ではないし、私も我慢なんてしてません。ジェラール様が一緒だと、私も安心ですから。ただ、迷惑になってないかと……」
「迷惑になんてなってないよ」

ぽんぽんと、また優しく頭を叩かれる。本当に、少し恥ずかしいけど、これをされると安心して嬉しくなる。

「それでは……今日から宜しくお願いします」
「うん。こちらこそ、宜しくお願いします」



こうして、私のピサンテでの生活が始まった。






この日がだった


なんて気付いた時には────




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