召喚先は、誰も居ない森でした

みん

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10 久し振りの平穏な時間

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「❋❋❋❋❋?❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋?」

咳が落ち着いたのを見て、年配の女性が私に何か話し掛けて来たけど、やっぱり言葉が全く分からない。
首を左右に振ってから「分からない」と言葉を口にする。首輪が外れたお陰で、声を出す事はできるようになった。その事に少しだけホッとする。

「❋❋❋❋❋❋❋❋❋?」
『❋❋❋❋❋?』

年配の女性とライオンが何かを話した後、年配の女性は自身を指差した後「エ・メ・ル」と言った。

ー“え・め・る”?ー

その次に、ライオンを指差して「リ・オ・ナ」と言った。

ーあぁ、名前だ!ー

「………ま・し・ろ」
「マシロ?」
「はい………エメルさん?」

コクコクと頷いて、私も年配の女性の名前を口にすると、ニコリと微笑んでくれた。名前で合っていたようだ。
兎に角、声が出せるようになった事と、言葉が通じないと言う事は伝わったようで、それからは簡単な事は身振り手振りで「軽く食事をした後、薬を飲んで寝るように」と言われた。
訊きたい事はいっぱいあるけど、今は訊く術が無い。ただ、ここが安全な場所だと言う事だけは分かるし、この人達が良い人だと言う事も分かる。

ーいつぶりの温かい食事と平穏な時間だろう?ー

安心して、また涙が溢れ出しそうになるのを我慢して、急いで食事をして、また布団に潜り込んだ。






*リオナ視点*


『よく寝ているわね』
「精神的消耗が激しいからね」

ロールパン1つとスープだけを口にした後、薬を飲むとそのまま直ぐに眠ってしまった
首に嵌められていた魔道具で声が出せなくなっていたのは分かっていたけど、まさか、言葉が通じないとは思わなかった。

『エメルは、さっきの言葉が何処の国の言葉か分かる?』
「それが……サッパリ………」
『……よね………』

この大陸の殆どの国では、数百年程前から共通語が使用される事となっているから、国が変わっても言葉や文字で困る事はあまり無い。小さい国や、国交の少ない国ではそうではなかっりもするけど、そう言う国の者は自国を出る事が無いから、その国以外で見かける事がない。それでも、ある程度の外国語も勉強して知っているけど、私の知っている言葉ではなかった。

『翻訳機能の魔道具を用意しないとね』

翻訳機能のある魔道具は貴重な物だけど、今回の摘発で、被害者であるマシロにも事情聴取をしなければならないから、国が直ぐにでも用意をしてくれるだろう。

「かなり遠くにある小さな国から連れて来られたのかもしれないわね」

マシロは黒色の髪と瞳だ。この国では珍しい色で高値で売れるそうで、マシロも今回のオークションでは目玉商品の1つだった。売られる前に保護できて良かったと言うべきか?それでも、連れ去られた後は、大変な日々だっただろう。

『可哀想に………』

ー1日でも早く、母国─親元に帰してあげなければー


『私は一度現場に戻るわ。後は頼んだわ』
「分かったわ。気を付けてね」





******


「リオナ、あの子は大丈夫だった?」
『ええ、大丈夫よ。今は薬を飲んで寝ているわ』
「それは良かった」

私より先に現場に戻っていたルパートと合流した。
魔獣はコカトリスの他にバジリスクが居たが、バジリスクもまた竜騎士が仕留めたそうだ。

「他にも数体の魔獣が居たけど、下級レベルだったから直ぐに片付いた。今は、このオークションに参加した者達をそれそれ拘束して移動する準備をしているところだ」
『予定より早く進んでるわね』

それもこれも、コカトリスとバジリスクの対処があっと言う間にできたからだろう。

ー本当に、竜人を敵に回す事だけは避けないとねー

あの一撃は本当に凄かった。あれですら余裕があったのだから、竜王ともなれば、一体どれ程の強さなのか。想像するだけで恐ろしい。そんな事を考えていると、あの時の竜騎士を見付けて、彼の元へと駆け寄り、そのままスルリと人の姿に戻った。

「先程は、助けていただき、ありがとうございました」
「あぁ……コカトリスの。ライオン獣人のリオナ様でしたか。なら、俺が出なくても大丈夫だったかもしれませんね」
「そんな事はありません。流石にコカトリス相手に、貴殿のようにはいきませんでした」
「そうですか?でも、助けになったのなら良かったです。あの時の子は、大丈夫でしたか?」
「はい。食事をして、今は寝ています」
「なら良かったです。では、また……」
「はい」

お互いまだまだする事もあり、軽く会話を交わした後直ぐに別れた。




名前を訊くのを忘れていた事に、翌日の会議で再会する迄全く気付かずにいた。



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