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黒虎と黒狼
あの日は、体調が良かった。体に羽が生えたのか?と思うぐらいに体が軽くて……
こっそりと王宮を飛び出した。
自由に動き回れる事が楽しくて。
誰の目にも留まらない、陰口をたたかれる事もなくて……。道を歩いていてるだけで楽しかった。
「………そう言えば……」
初めての外で歩き回って疲れて…休もうと思って入り込んだ庭園の片隅に、怪我をした狼が居たっけ。私と同じ黒色の毛並みで…。でも、お腹が血でベットリしてて……それで────。
ーあの狼も綺麗な青色の瞳をしてたなぁ…この、サクソニア様みたいに……ー
「…………え?」
ーちょっと待って……まさかー
目の前に居るヴィンス=サクソニア様は、長い黒色の髪を後ろでひと括りにしている。
「まさか……」
「その“まさか”ですね。私は、ミックスの黒狼なんです。あの時は──」
「あの!何も……何もしてませんから!」
「──え?」
「………」
ーお願い!その先は…言わないでー
ギュッと手に力が入り、そのままサクソニア様を見つめ続ける。
「──あの時は、道に迷った私を助けていただいて、ありがとうございました。」
「いえ……無事に戻れて…良かったです。」
まさか、あの時の狼が……何とか、空気を読んでくれる人で良かった。でも……サクソニア様とは、また改めて話をしないと…いけないわね。
「そろそろ訓練が終わる頃か……まだまだ色々と詰める事があるんだが……ああ、そうだ。今年は友好記念の祭典があるのは知っているだろう?その準備を手伝ってもらう─と言う名目で、ロルフとリル嬢と一緒に王城に来てもらうようにしよう。」
もともと、第二王子のロルフ様と聖女のリルは、その祭典に参加する為に準備も携わっているらしく、その2人と仲が良いから─と、私とヴァレリアが登城してもおかしくない理由を作ってから、私達は応接室を出た。
*ヴィンス=サクソニア視点*
『だいじょうぶ?』
薄っすら残る意識で目を開けると、黒色の幼犬が俺の顔を心配そうに覗きこんでいた。
15歳になった俺は、初めての任務として、レイノックス王国王太子の暗殺を計画していた一味を追ってフォレクシス王国にやって来ていた。そこで、少しの油断から反撃を喰らい怪我を負い、そこから何とか逃れたは良いが、動けなくなっていた。その時、俺に声を掛けて来たのが、その幼犬だった。
ー獣人かー
このままここに居れば、この幼犬も危ないかもしれないと思い『俺の事は放っておけ!今すぐここから去れ!』と、威嚇しながら声を上げると、その幼犬はビクッと震えた後、その場を後にした──と思っていたのに、暫く経った後また戻って来た。
『お前は──』
『目を……とじててくれる?見て見ぬふり…してくれる?』
『何を───』
最後まで言葉を口にする前に、その幼犬は俺の傷口に手を当てた。
『──っ!』
当てられた手が痛くて、思わず目をグッと閉じると、痛かった筈の処が少しずつ温かくなり、少しずつ痛みもなくなった。
ー痛く…ない?何故?ー
不思議に思い目を開けると、幼犬が俺から離れて去って行く後ろ姿が目に入った。『待て!』と手を伸ばして声を掛けようとした時、大きな鳥─鷲が現れた。
『アレにはこれ以上関わるな』
鷲は、それだけ言うと、また飛び去って行った。
そして、そこにはもう幼犬の姿もなかった。
それからも、その幼犬をなんとなく探してはみたが、見付ける事はできなかった。
黒色の毛並みで、ペリドット色の綺麗な瞳の犬。
ーまさか……虎だったとは…ー
そりゃあ、見付からない訳だ。まぁ、虎だと分かっていたとしても、見付けられていなかっただろうが。
あの時の怪我を治したのは…ジゼル様で間違いないだろう。何故、そんな聖女のような力を持っているのに…隠しているのか?それを公表すれば、無能などと言われないだろうに。
ージゼル様には…まだ何か秘密があるのか?ー
ジゼル様の事だ。おそらく、向こうから俺にまた、接触して来るだろう。
「───ヴィンス、今から書斎に行く。」
「書斎?」
王太子であるエデルバートが言う“書斎”とは、王族の限られた者だけが閲覧できる書物等が収められている部屋の事だ。
「さっき、私が病名を訊いたのに対し、ジゼル様は“原因は判っているが薬は無い”と言っただろう?病名とは言わなかった。彼女は、言葉の使い方が……上手い。そして、嘘はつかない。彼女が患っているモノは、病気ではない可能性がある。」
ー病ではない?ー
「それと“25歳迄生きられるかどうか”とも言っていただろう?それと竜王が作ったブレスレット……どこかで聞いた事のあるキーワードなんだ。それが気になってな。少し、調べてみようと思う。」
「分かった。何か…ジゼル様の助けになる事が見つかれば良いですけど……」
「──だな。本当に…惜しい王女だ。本来の彼女のまま生きていけるなら…素晴らしい王女だっただろうな。」
ジゼル=フォレクシス
本当の彼女は、どんな彼女なのか──
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
♪♪(*´▽`*)ノ゙
こっそりと王宮を飛び出した。
自由に動き回れる事が楽しくて。
誰の目にも留まらない、陰口をたたかれる事もなくて……。道を歩いていてるだけで楽しかった。
「………そう言えば……」
初めての外で歩き回って疲れて…休もうと思って入り込んだ庭園の片隅に、怪我をした狼が居たっけ。私と同じ黒色の毛並みで…。でも、お腹が血でベットリしてて……それで────。
ーあの狼も綺麗な青色の瞳をしてたなぁ…この、サクソニア様みたいに……ー
「…………え?」
ーちょっと待って……まさかー
目の前に居るヴィンス=サクソニア様は、長い黒色の髪を後ろでひと括りにしている。
「まさか……」
「その“まさか”ですね。私は、ミックスの黒狼なんです。あの時は──」
「あの!何も……何もしてませんから!」
「──え?」
「………」
ーお願い!その先は…言わないでー
ギュッと手に力が入り、そのままサクソニア様を見つめ続ける。
「──あの時は、道に迷った私を助けていただいて、ありがとうございました。」
「いえ……無事に戻れて…良かったです。」
まさか、あの時の狼が……何とか、空気を読んでくれる人で良かった。でも……サクソニア様とは、また改めて話をしないと…いけないわね。
「そろそろ訓練が終わる頃か……まだまだ色々と詰める事があるんだが……ああ、そうだ。今年は友好記念の祭典があるのは知っているだろう?その準備を手伝ってもらう─と言う名目で、ロルフとリル嬢と一緒に王城に来てもらうようにしよう。」
もともと、第二王子のロルフ様と聖女のリルは、その祭典に参加する為に準備も携わっているらしく、その2人と仲が良いから─と、私とヴァレリアが登城してもおかしくない理由を作ってから、私達は応接室を出た。
*ヴィンス=サクソニア視点*
『だいじょうぶ?』
薄っすら残る意識で目を開けると、黒色の幼犬が俺の顔を心配そうに覗きこんでいた。
15歳になった俺は、初めての任務として、レイノックス王国王太子の暗殺を計画していた一味を追ってフォレクシス王国にやって来ていた。そこで、少しの油断から反撃を喰らい怪我を負い、そこから何とか逃れたは良いが、動けなくなっていた。その時、俺に声を掛けて来たのが、その幼犬だった。
ー獣人かー
このままここに居れば、この幼犬も危ないかもしれないと思い『俺の事は放っておけ!今すぐここから去れ!』と、威嚇しながら声を上げると、その幼犬はビクッと震えた後、その場を後にした──と思っていたのに、暫く経った後また戻って来た。
『お前は──』
『目を……とじててくれる?見て見ぬふり…してくれる?』
『何を───』
最後まで言葉を口にする前に、その幼犬は俺の傷口に手を当てた。
『──っ!』
当てられた手が痛くて、思わず目をグッと閉じると、痛かった筈の処が少しずつ温かくなり、少しずつ痛みもなくなった。
ー痛く…ない?何故?ー
不思議に思い目を開けると、幼犬が俺から離れて去って行く後ろ姿が目に入った。『待て!』と手を伸ばして声を掛けようとした時、大きな鳥─鷲が現れた。
『アレにはこれ以上関わるな』
鷲は、それだけ言うと、また飛び去って行った。
そして、そこにはもう幼犬の姿もなかった。
それからも、その幼犬をなんとなく探してはみたが、見付ける事はできなかった。
黒色の毛並みで、ペリドット色の綺麗な瞳の犬。
ーまさか……虎だったとは…ー
そりゃあ、見付からない訳だ。まぁ、虎だと分かっていたとしても、見付けられていなかっただろうが。
あの時の怪我を治したのは…ジゼル様で間違いないだろう。何故、そんな聖女のような力を持っているのに…隠しているのか?それを公表すれば、無能などと言われないだろうに。
ージゼル様には…まだ何か秘密があるのか?ー
ジゼル様の事だ。おそらく、向こうから俺にまた、接触して来るだろう。
「───ヴィンス、今から書斎に行く。」
「書斎?」
王太子であるエデルバートが言う“書斎”とは、王族の限られた者だけが閲覧できる書物等が収められている部屋の事だ。
「さっき、私が病名を訊いたのに対し、ジゼル様は“原因は判っているが薬は無い”と言っただろう?病名とは言わなかった。彼女は、言葉の使い方が……上手い。そして、嘘はつかない。彼女が患っているモノは、病気ではない可能性がある。」
ー病ではない?ー
「それと“25歳迄生きられるかどうか”とも言っていただろう?それと竜王が作ったブレスレット……どこかで聞いた事のあるキーワードなんだ。それが気になってな。少し、調べてみようと思う。」
「分かった。何か…ジゼル様の助けになる事が見つかれば良いですけど……」
「──だな。本当に…惜しい王女だ。本来の彼女のまま生きていけるなら…素晴らしい王女だっただろうな。」
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