13 / 42
第二王女ジゼル
しおりを挟む
実際に目の前にしたロルフ様は、本当に優しい人だった。王子としてはどうなのか?─と言うところはあるけど、王太子がコレだから、丁度良いのかもしれない。
そして、知る事もできた。
リルを見る目が、とても優しいのだ。きっとあれは、無意識だろう。ひょっとしたら、ロルフ様自身、リルへの気持ちには気付いていないのかもしれない。一応の婚約者が居るから。
「王太子殿下から、その言葉が聞けて良かったです。王太子殿下の助けがあれば、問題なく婚約が解消できる気がします。」
「なんと言うか……うん、何となく良心は痛むけど……助力させてもらうよ。」
ー痛む良心はお持ちだったんですね?ー
「そこで、一つお訊きしたいのですが…レイノックスの王族は、平民と結婚はできるのですか?」
フォレクシス─獣人国は実力主義。それ故に、相手が平民であっても実力があれば、王族と結婚する事はできる。実際、何代か前の王妃が平民出身の狐族だった。
「平民は…難しいけど、できない訳ではない。その者にもよるが、やり方はいくらでもある…が、何故そんな事を?」
「おそらく、2人とも無自覚だと思いますけど、ロルフ様とリルは、お互い想い合ってるかと……。」
ロルフ様は“自分には婚約者が居る”
リルは“私は平民だから”
と言う意識があるせいか、自分の気持ちに気付いていないようだけど、どう見ても、お互い想い合っているのがよく分かる。
「それは……本当か?」
「本人に確認した事はありませんけど……十中八九。」
隣に座っているヴァレリアも静かに頷いている。
「リルは平民ですけど、とても努力家で他人に優しい聖女です。人間にとっての聖女とは、とても大切な存在なんですよね?ならば、リルを……ロルフ様の婚約者にする事はできませんか?」
爵位で言えば、公爵令嬢であるオコーエル様になるのかもしれないけど、あんなのが王族入りとか……
ー無いわー……ー
絶対リルの方が相応しい。
「リル嬢か………うん。良いね。」
「─!!」
「前々から、オコーエル公爵が煩くてね…エリアナ嬢の聖女としての実力だけは問題無いんだけど……うん。リル嬢なら、実力はこれからつくだろうし……他の点でも上だろう。うんうん。何とかしよう。」
ー良かったー
この王太子が言うのだから、私との婚約解消の後は、必ず何とかしてくれるだろう。
「ありがとうございます。2人の事は、宜しくお願いします。」
可能であれば、2人の結婚式に参列できれば嬉しいけど………なんて、それは我儘な願いだろう。
「しかし、何故、ジゼル様について、あんな噂が広がっているんだ?私には…今、目の前に居る第二王女ジゼル様が、噂通りの無能な王女には見えないが……」
「そうですとも!!」
バンッ──
と言う音と共に、隣に座っていたヴァレリアが立ち上がった。
「ヴァレ──」
「ジゼル様と直接お話さえすれば、いかに優れたお方かと言う事がお分かりにまりますよね!?だと言うのに!!噂を疑いもせず鵜呑みにして……本当に阿呆な者ばかりなんですよ!!」
「え?あ……うん……そう……だね?」
「ヴァレリア、落ち着きなさい………」
ー王太子がひいてるからね?ー
決して、私は優れているワケではない。“噂よりはマシ”なぐらいだ。ヴァレリアだけは、いつも私を過大評価してくれているけど……。その気持ちだけは素直に嬉しいとは思っている。
「すみません…つい……」
シュン─とした顔のヴァレリアは可愛い。
「傍から見れば、私は王族としての務めを一切していないので、無能だと思われていてもおかしくないと思います。」
「ひょっとして……ジゼル様も……獣化できるのでは?」
噂の一つで、第二王女は王妃の実の娘ではないと言われている。それは、第二王女の獣化した姿を見た者が居ないからだ。その噂に関しても、王族は誰一人、否定も肯定もしていない。
「獣化は……できますが……今はできません。このブレスレットを着けていると、獣化できないんです。獣化する事でも……体調が崩れやすくなってしまうので……。」
その為、獣化姿が基本であった年齢の時は、常に体が重たかった。勿論部屋から出る事もなかった。だから、私の獣化した姿を目にした者はごく限られた者だけだ。
「なら、ジゼル様も…髪は黒色だが……白虎…なのか?」
母は黒猫だが、父、兄、姉、妹の4人は白虎だ。でも、私は──
「私は……黒虎です」
「───こっこ……」
ポツリ─と呟いたのは、今迄ずっと黙っていたサクソニア様だった。
「えっと…“こっこ”とは、“黒色の虎”です。」
とは言え、幼かった頃にしか獣化した事がなく、あの頃の私は……黒色の犬にしか見えなかっただろうけど。黒色の虎自体が珍しかったりもする。
「───だからか………」
「ん?何か?」
「いえ…何も……あ……の…一つ、質問させていただいてもよろしいでしょうか?
「答えられる事なら……」
ー何だろう?ー
「その獣化した姿で……王宮を抜け出した事は……ありませんでしたか?」
「───ごふっ……え!?」
ー何で知ってるの!?ー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(ㅅ´ ˘ `)♪
そして、知る事もできた。
リルを見る目が、とても優しいのだ。きっとあれは、無意識だろう。ひょっとしたら、ロルフ様自身、リルへの気持ちには気付いていないのかもしれない。一応の婚約者が居るから。
「王太子殿下から、その言葉が聞けて良かったです。王太子殿下の助けがあれば、問題なく婚約が解消できる気がします。」
「なんと言うか……うん、何となく良心は痛むけど……助力させてもらうよ。」
ー痛む良心はお持ちだったんですね?ー
「そこで、一つお訊きしたいのですが…レイノックスの王族は、平民と結婚はできるのですか?」
フォレクシス─獣人国は実力主義。それ故に、相手が平民であっても実力があれば、王族と結婚する事はできる。実際、何代か前の王妃が平民出身の狐族だった。
「平民は…難しいけど、できない訳ではない。その者にもよるが、やり方はいくらでもある…が、何故そんな事を?」
「おそらく、2人とも無自覚だと思いますけど、ロルフ様とリルは、お互い想い合ってるかと……。」
ロルフ様は“自分には婚約者が居る”
リルは“私は平民だから”
と言う意識があるせいか、自分の気持ちに気付いていないようだけど、どう見ても、お互い想い合っているのがよく分かる。
「それは……本当か?」
「本人に確認した事はありませんけど……十中八九。」
隣に座っているヴァレリアも静かに頷いている。
「リルは平民ですけど、とても努力家で他人に優しい聖女です。人間にとっての聖女とは、とても大切な存在なんですよね?ならば、リルを……ロルフ様の婚約者にする事はできませんか?」
爵位で言えば、公爵令嬢であるオコーエル様になるのかもしれないけど、あんなのが王族入りとか……
ー無いわー……ー
絶対リルの方が相応しい。
「リル嬢か………うん。良いね。」
「─!!」
「前々から、オコーエル公爵が煩くてね…エリアナ嬢の聖女としての実力だけは問題無いんだけど……うん。リル嬢なら、実力はこれからつくだろうし……他の点でも上だろう。うんうん。何とかしよう。」
ー良かったー
この王太子が言うのだから、私との婚約解消の後は、必ず何とかしてくれるだろう。
「ありがとうございます。2人の事は、宜しくお願いします。」
可能であれば、2人の結婚式に参列できれば嬉しいけど………なんて、それは我儘な願いだろう。
「しかし、何故、ジゼル様について、あんな噂が広がっているんだ?私には…今、目の前に居る第二王女ジゼル様が、噂通りの無能な王女には見えないが……」
「そうですとも!!」
バンッ──
と言う音と共に、隣に座っていたヴァレリアが立ち上がった。
「ヴァレ──」
「ジゼル様と直接お話さえすれば、いかに優れたお方かと言う事がお分かりにまりますよね!?だと言うのに!!噂を疑いもせず鵜呑みにして……本当に阿呆な者ばかりなんですよ!!」
「え?あ……うん……そう……だね?」
「ヴァレリア、落ち着きなさい………」
ー王太子がひいてるからね?ー
決して、私は優れているワケではない。“噂よりはマシ”なぐらいだ。ヴァレリアだけは、いつも私を過大評価してくれているけど……。その気持ちだけは素直に嬉しいとは思っている。
「すみません…つい……」
シュン─とした顔のヴァレリアは可愛い。
「傍から見れば、私は王族としての務めを一切していないので、無能だと思われていてもおかしくないと思います。」
「ひょっとして……ジゼル様も……獣化できるのでは?」
噂の一つで、第二王女は王妃の実の娘ではないと言われている。それは、第二王女の獣化した姿を見た者が居ないからだ。その噂に関しても、王族は誰一人、否定も肯定もしていない。
「獣化は……できますが……今はできません。このブレスレットを着けていると、獣化できないんです。獣化する事でも……体調が崩れやすくなってしまうので……。」
その為、獣化姿が基本であった年齢の時は、常に体が重たかった。勿論部屋から出る事もなかった。だから、私の獣化した姿を目にした者はごく限られた者だけだ。
「なら、ジゼル様も…髪は黒色だが……白虎…なのか?」
母は黒猫だが、父、兄、姉、妹の4人は白虎だ。でも、私は──
「私は……黒虎です」
「───こっこ……」
ポツリ─と呟いたのは、今迄ずっと黙っていたサクソニア様だった。
「えっと…“こっこ”とは、“黒色の虎”です。」
とは言え、幼かった頃にしか獣化した事がなく、あの頃の私は……黒色の犬にしか見えなかっただろうけど。黒色の虎自体が珍しかったりもする。
「───だからか………」
「ん?何か?」
「いえ…何も……あ……の…一つ、質問させていただいてもよろしいでしょうか?
「答えられる事なら……」
ー何だろう?ー
「その獣化した姿で……王宮を抜け出した事は……ありませんでしたか?」
「───ごふっ……え!?」
ー何で知ってるの!?ー
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(ㅅ´ ˘ `)♪
応援ありがとうございます!
15
お気に入りに追加
461
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる