最初で最後の我儘を

みん

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第二王女ジゼル

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実際に目の前にしたロルフ様は、本当に優しい人だった。王子としてはどうなのか?─と言うところはあるけど、王太子がだから、丁度良いのかもしれない。

そして、知る事もできた。 

リルを見る目が、とても優しいのだ。きっとあれは、無意識だろう。ひょっとしたら、ロルフ様自身、リルへの気持ちには気付いていないのかもしれない。一応の婚約者が居るから。


「王太子殿下から、その言葉が聞けて良かったです。王太子殿下の助けがあれば、問題なく婚約が解消できる気がします。」

「なんと言うか……うん、何となく良心は痛むけど……助力させてもらうよ。」

ー痛む良心はお持ちだったんですね?ー

「そこで、一つお訊きしたいのですが…レイノックスの王族は、平民と結婚はできるのですか?」

フォレクシス─獣人国は実力主義。それ故に、相手が平民であっても実力があれば、王族と結婚する事はできる。実際、何代か前の王妃が平民出身の狐族だった。

「平民は…難しいけど、できない訳ではない。その者にもよるが、やり方はいくらでもある…が、何故そんな事を?」

「おそらく、2人とも無自覚だと思いますけど、ロルフ様とリルは、お互い想い合ってるかと……。」

ロルフ様は“自分には婚約者が居る”
リルは“私は平民だから”

と言う意識があるせいか、自分の気持ちに気付いていないようだけど、どう見ても、お互い想い合っているのがよく分かる。

「それは……本当か?」
「本人に確認した事はありませんけど……十中八九。」

隣に座っているヴァレリアも静かに頷いている。

「リルは平民ですけど、とても努力家で他人ひとに優しい聖女です。人間にとっての聖女とは、とても大切な存在なんですよね?ならば、リルを……ロルフ様の婚約者にする事はできませんか?」

爵位で言えば、公爵令嬢であるオコーエル様になるのかもしれないけど、が王族入りとか……

ー無いわー……ー

絶対リルの方が相応しい。

「リル嬢か………うん。良いね。」
「─!!」
「前々から、オコーエル公爵がね…エリアナ嬢の聖女としての実力問題無いんだけど……うん。リル嬢なら、実力はこれからつくだろうし……他の点でも上だろう。うんうん。何とかしよう。」

ー良かったー

この王太子が言うのだから、私との婚約解消の後は、必ず何とかしてくれるだろう。

「ありがとうございます。2人の事は、宜しくお願いします。」

可能であれば、2人の結婚式に参列できれば嬉しいけど………なんて、それは我儘な願いだろう。



「しかし、何故、ジゼル様について、が広がっているんだ?私には…今、目の前に居る第二王女ジゼル様が、噂通りの無能な王女には見えないが……」
「そうですとも!!」

バンッ──

と言う音と共に、隣に座っていたヴァレリアが立ち上がった。

「ヴァレ──」
「ジゼル様と直接お話さえすれば、いかに優れたお方かと言う事がお分かりにまりますよね!?だと言うのに!!噂を疑いもせず鵜呑みにして……本当に阿呆な者ばかりなんですよ!!」
「え?あ……うん……そう……だね?」
「ヴァレリア、落ち着きなさい………」

ー王太子がひいてるからね?ー

決して、私は優れているワケではない。“噂よりはマシ”なぐらいだ。ヴァレリアだけは、いつも私を過大評価してくれているけど……。その気持ちだけは素直に嬉しいとは思っている。

「すみません…つい……」

シュン─とした顔のヴァレリアは可愛い。

「傍から見れば、私は王族としての務めを一切していないので、無能だと思われていてもおかしくないと思います。」

「ひょっとして……ジゼル様も……獣化できるのでは?」

噂の一つで、第二王女は王妃の実の娘ではないと言われている。それは、第二王女の獣化した姿を見た者が居ないからだ。その噂に関しても、王族は誰一人、否定も肯定もしていない。

「獣化は……できますが……今はできません。このブレスレットを着けていると、獣化できないんです。獣化する事でも……体調が崩れやすくなってしまうので……。」

その為、獣化姿が基本であった年齢の時は、常に体が重たかった。勿論部屋から出る事もなかった。だから、私の獣化した姿を目にした者はごく限られた者だけだ。

「なら、ジゼル様も…髪は黒色だが……白虎…なのか?」

母は黒猫だが、父、兄、姉、妹の4人は白虎だ。でも、私は──

「私は……黒虎こっこです」
「───こっこ……」

ポツリ─と呟いたのは、今迄ずっと黙っていたサクソニア様だった。

「えっと…“こっこ”とは、“黒色の虎”です。」

とは言え、幼かった頃にしか獣化した事がなく、あの頃の私は……黒色の犬にしか見えなかっただろうけど。黒色の虎自体が珍しかったりもする。

「───だからか………」
「ん?何か?」
「いえ…何も……あ……の…一つ、質問させていただいてもよろしいでしょうか?
「答えられる事なら……」

ー何だろう?ー

「その獣化した姿で……王宮を抜け出した事は……ありませんでしたか?」

「───ごふっ……え!?」

ー何で知ってるの!?ー








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(ㅅ´ ˘ `)♪




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