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スタンピード
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*ヴィンス=サクソニア視点*
ジゼル様が竜国に行ってから半年が過ぎた。未だに、ジゼル様とは会えていない。つい先日、1年間の留学生活を終えたヴァレリア=メルサンデス嬢も、1人でフォレクシス国王へと帰って行った。
今、俺とジゼル様を繋いでいるのは、水の妖精─プリュイだけだ。
プリュイは、ほぼ毎日レイノックスと竜国を行き来しては、手紙などを届けてくれ、そのついでにと、ジゼル様の様子を教えてくれたりしている。
彼女は、時々寝込む事もあるそうだが、比較的穏やかな日々を送っているらしい。
そんな天空の国とは違い、下界の人間族の国では、魔獣や魔物の出現が多くみられるようになり、聖女様や騎士達は、その対応で忙しい日々を送っている。たまに怪我をする事もあるが、そんな時はプリュイが俺の怪我をサッと治癒してくれるお陰で、ある意味薬師要らずで過ごせている。
ジゼル様は元気だろうか
“魔女の呪い”はどうなったのだろうか
今度は、いつ会えるのか
また、一緒にフルーツタルトを食べに行けたら
ゆっくりする時間ができると、ついついジゼル様の事ばかりを考えてしまう。会っていた時よりも、思う時間が増えていると思う。
魔獣や魔物の討伐が増え、怪我をすることもよくある。そんな怪我をしている時に、ジゼル様に会う事はできない。
エデルバートやフォレクシス王国でも、魔女の呪いについて調べられてはいるが、未だに解呪方法は見付かっていない。ジゼル様にとっては、竜国が一番安全な場所だろう。それでも、本当は、俺が側に居てジゼル様を守りたかった。
次に会えた時は───
それから、すぐの事だった。
レイノックス王国で、魔獣のスタンピードが発生したのは。
*竜国にて*
「スタン……ピード…ですか…」
「そうです。レイノックスの王都から離れた領地で、スタンピードが発生したそうで、王都の騎士達も討伐に向かうとの事です。その中に……ヴィンス殿も居るそうです。」
「…………」
スタンピード──それこそ、獣人国のフォレクシスでは発生した事は、過去に一度も無い。昔本で読んで知ったぐらいだ。魔物や魔獣が一気に溢れ出し、被害も大きいとあった。
昨日の夜、私の居る竜城内が一気にざわつき、竜王様をはじめシモン様も休む事なく朝を迎え、昼食を終えて部屋で本を読んでいるところに、シモン様が私の部屋にやって来て、レイノックス王国で起こっている事を教えてくれた。
先ず、竜国の対処として、竜騎士を派遣したそうで、特に、周りに気付かれないように、ヴィンス様に気を配るようにと言ってあるそうだ。それと、プリュイもこっそり付いて行っているそうだ。
「そのプリュイ殿からは、プリュイ殿が創り出した水を預かっているので、もしもの時はこれを飲んで下さい。“何もしないよりは良いから”と、プリュイ殿が言ってましたから。」
渡されたのは、手のひらサイズの小瓶3本。中には、薄っすらと水色の色が付いた液体が入っている。プリュイが創り出した水は、いつもこの色をしていて、キラキラと輝いていてとても綺麗だ。
「シモン様。お願いがあるんですけど……聞いていただけますか?」
******
スタンピードの可能性を視野に入れていた為、各種族の対応は素早く実行に移された。魔物達が統率を取る前にできる限り早く倒していく事。獣人族が前線で魔獣や魔物と対峙し、人間族の魔法使い達が魔法で後方支援する。そして、空から竜族が攻撃する。特に、空からの竜族の攻撃は凄まじいものだった。竜族の力は圧倒的なものがあった。このまま、予定より早くに殲滅させる事ができるかもしれない──と。
ある知能高い魔物が目にしたのは、騎士に護られながら穢れを浄化しているある1人の聖女だった。今はまだ、その力を上手く発揮できてはいないが、何となく……魔物にとって嫌な感じのする聖女だった。
ーあの聖女は…そのうち脅威になるー
そう直感したその魔物は、獣人と戦いながら、その聖女へと近付いて行く。周りは、目の前の敵に集中していて誰も気付かない。
その魔物が、その聖女を自分の攻撃範囲内捉えた瞬間、その聖女に攻撃魔法を展開させた。
「───リルっ!」
それに気付いたのは、この討伐の指揮をとっていた第二王子ロルフだった。ロルフは穏やかな性格ではあるが、騎士としては優れた能力をもっていた為、今回の討伐には父である国王は難色を示したが、王族が討伐に参加する事で士気が上がる─と言う事で参加が許されていたのだ。
その魔物が放った攻撃は、リルを狙い、そのリルを庇うようにロルフがリルを抱きしめ──
「ロルフ様!」
その2人を庇うように、その2人の前に立ち塞がったのは───
ヴィンス=サクソニアだった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*⋆⸜(๑•ᗜ•๑)⸝⋆*
ジゼル様が竜国に行ってから半年が過ぎた。未だに、ジゼル様とは会えていない。つい先日、1年間の留学生活を終えたヴァレリア=メルサンデス嬢も、1人でフォレクシス国王へと帰って行った。
今、俺とジゼル様を繋いでいるのは、水の妖精─プリュイだけだ。
プリュイは、ほぼ毎日レイノックスと竜国を行き来しては、手紙などを届けてくれ、そのついでにと、ジゼル様の様子を教えてくれたりしている。
彼女は、時々寝込む事もあるそうだが、比較的穏やかな日々を送っているらしい。
そんな天空の国とは違い、下界の人間族の国では、魔獣や魔物の出現が多くみられるようになり、聖女様や騎士達は、その対応で忙しい日々を送っている。たまに怪我をする事もあるが、そんな時はプリュイが俺の怪我をサッと治癒してくれるお陰で、ある意味薬師要らずで過ごせている。
ジゼル様は元気だろうか
“魔女の呪い”はどうなったのだろうか
今度は、いつ会えるのか
また、一緒にフルーツタルトを食べに行けたら
ゆっくりする時間ができると、ついついジゼル様の事ばかりを考えてしまう。会っていた時よりも、思う時間が増えていると思う。
魔獣や魔物の討伐が増え、怪我をすることもよくある。そんな怪我をしている時に、ジゼル様に会う事はできない。
エデルバートやフォレクシス王国でも、魔女の呪いについて調べられてはいるが、未だに解呪方法は見付かっていない。ジゼル様にとっては、竜国が一番安全な場所だろう。それでも、本当は、俺が側に居てジゼル様を守りたかった。
次に会えた時は───
それから、すぐの事だった。
レイノックス王国で、魔獣のスタンピードが発生したのは。
*竜国にて*
「スタン……ピード…ですか…」
「そうです。レイノックスの王都から離れた領地で、スタンピードが発生したそうで、王都の騎士達も討伐に向かうとの事です。その中に……ヴィンス殿も居るそうです。」
「…………」
スタンピード──それこそ、獣人国のフォレクシスでは発生した事は、過去に一度も無い。昔本で読んで知ったぐらいだ。魔物や魔獣が一気に溢れ出し、被害も大きいとあった。
昨日の夜、私の居る竜城内が一気にざわつき、竜王様をはじめシモン様も休む事なく朝を迎え、昼食を終えて部屋で本を読んでいるところに、シモン様が私の部屋にやって来て、レイノックス王国で起こっている事を教えてくれた。
先ず、竜国の対処として、竜騎士を派遣したそうで、特に、周りに気付かれないように、ヴィンス様に気を配るようにと言ってあるそうだ。それと、プリュイもこっそり付いて行っているそうだ。
「そのプリュイ殿からは、プリュイ殿が創り出した水を預かっているので、もしもの時はこれを飲んで下さい。“何もしないよりは良いから”と、プリュイ殿が言ってましたから。」
渡されたのは、手のひらサイズの小瓶3本。中には、薄っすらと水色の色が付いた液体が入っている。プリュイが創り出した水は、いつもこの色をしていて、キラキラと輝いていてとても綺麗だ。
「シモン様。お願いがあるんですけど……聞いていただけますか?」
******
スタンピードの可能性を視野に入れていた為、各種族の対応は素早く実行に移された。魔物達が統率を取る前にできる限り早く倒していく事。獣人族が前線で魔獣や魔物と対峙し、人間族の魔法使い達が魔法で後方支援する。そして、空から竜族が攻撃する。特に、空からの竜族の攻撃は凄まじいものだった。竜族の力は圧倒的なものがあった。このまま、予定より早くに殲滅させる事ができるかもしれない──と。
ある知能高い魔物が目にしたのは、騎士に護られながら穢れを浄化しているある1人の聖女だった。今はまだ、その力を上手く発揮できてはいないが、何となく……魔物にとって嫌な感じのする聖女だった。
ーあの聖女は…そのうち脅威になるー
そう直感したその魔物は、獣人と戦いながら、その聖女へと近付いて行く。周りは、目の前の敵に集中していて誰も気付かない。
その魔物が、その聖女を自分の攻撃範囲内捉えた瞬間、その聖女に攻撃魔法を展開させた。
「───リルっ!」
それに気付いたのは、この討伐の指揮をとっていた第二王子ロルフだった。ロルフは穏やかな性格ではあるが、騎士としては優れた能力をもっていた為、今回の討伐には父である国王は難色を示したが、王族が討伐に参加する事で士気が上がる─と言う事で参加が許されていたのだ。
その魔物が放った攻撃は、リルを狙い、そのリルを庇うようにロルフがリルを抱きしめ──
「ロルフ様!」
その2人を庇うように、その2人の前に立ち塞がったのは───
ヴィンス=サクソニアだった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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