(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

文字の大きさ
6 / 75

婚約者

しおりを挟む
「今日、ジェマの婚約者が来る」

ー…………はい?ー

ジェマ──姉の……婚約者???姉に婚約者が居るなんて、知らなかった……と言うか、今日来るとは?視線だけを動かして、皆の顔を窺うと、誰も驚いている様子がない事から、知らなかったのは私だけだと言う事が分かった。エメリーを見ると、困惑した顔をしていた。

「相手は公爵家の子息だ。皆粗相の無いように、しっかり挨拶をする事。分かったな?」

これにはまた驚いた。姉の婚約者が……公爵の子息とは…。一体どんな人なんだろう?少しわくわくした気持ちで、その婚約者が来るのを待った。






「ブレイン=アンカーソンです。宜しくお願いします」

姉の婚約者は、アンカーソン宰相の子息だった。
肩辺りでキッチリと切り揃えられた金髪に、青空を連想させるような青色の瞳の、とても綺麗な男の子だ。

ーお姉様と並ぶと、とてもお似合いだわー

うっとりと見ていた私は気付かなかった。母とリンディが、どんな顔をして、姉とアンカーソン様を見ていたのかなんて──


その日は、お互い挨拶をして、皆で少し話をした後アンカーソン様は帰っ行き、アンカーソン様を見送った姉もまた、そのまま別邸へと帰って行ってしまった。だから、私も自室へと下がった。






「お嬢様、今日はすみませんでした」

部屋に戻って来ると、エメリーに謝られた。と言うのも、エメリー自身も、姉の婚約者の来訪を今朝知ったそうで、それからは姉の支度や迎えの支度等で、私に伝えるのを忘れていたらしい。確かに、今日は朝からエメリーには会ってなかったし、私の準備をしに来たのは、最近新しく入った侍女だった。その侍女からも何も説明などはされなかった。

「それは…仕方無いなわ」

と、言った後、エメリーは、姉の婚約について色々と教えてくれた。

姉の婚約は、姉の実の母─フリージア様の父であるローアン侯爵と、前アンカーソン公爵とが結んだ婚約なんだそうだ。お互い領地が隣同士の幼馴染みらしく、フリージア様が亡くなった後、孫娘である姉を心配していたところ、アンカーソン前公爵が『では、我が孫のブレインの嫁に──』と言う話になったそうだ。

ジェマに婚約者が居る─と、父は聞かされてはいたが、その時点では正式には婚約が調っていなかった為、誰か迄は知らなかったらしい。そして、つい先頃正式に婚約が調い、早いうちに─と、急遽挨拶をしに来たと言う事だったそうだ。

何故、正式に婚約が調っていなかったのか──。

それは、ジェマの妹が光の魔力持ちだから。

光の魔力持ちは稀なる存在故に、王族やそれに準ずる身分の者と婚姻を結ぶ事が多い。そこで、リンディにも王族や高位貴族との婚約の話が出たのだが、リンディは病弱で、生きるか死ぬかの不安定な状態が続いていた為に、なかなか婚約者を決める事ができなかった。

病弱ならば、王妃、王族に入る事は無理なのでは?
第二、第三王子を婿入りさせては?

王族が無理ならば公爵家から─となった場合、筆頭であるアンカーソン家から選ばれる可能性もあった。その為に、なかなか姉との婚約を進める事ができなかったそうだ。

「お姉様との婚約が調ったと言う事は……リンディの婚約者も……決まったと言う事なの?」

ーそんな話も、私は全く知らなかったけどー

「私も詳しくは知らないのですけど、王太子様ではないと言う事は確かだそうです。ひょっとしたら、第二か第三王子かもしれませんね」

リンディが……王子と……。
そうなれば、父も母も、更にリンディばかりになって、私の事なんて………。エメリーに気付かれないように、軽く溜め息を吐く。

「……ブレイン=アンカーソン様が、優しくてお姉様を大切にしてくれる人だったら良いんだけど…」




*その頃のリンディの部屋にて*


「お母様、ブレイン様って、とっても素敵な方だったわね」

「そうね……」

ーまさか、あの娘の婚約者がアンカーソン公爵の嫡男だったとはー

アンカーソン公爵と言えば、この国の10ある公爵の筆頭で、現当主は宰相を務めている。そんな将来有望な人物の婚約者が…何故あの娘なのか…。

ー私の娘─リンディの方が相応しいでしょう!?ー

可愛い事は勿論のこと、何と言っても光の魔力持ち。あの娘より、リンディの方が───。

ーあぁ、ひょっとして……リンディの相手は…王太子様とか?ー

現国王陛下は賢王と謳われる程、この国を豊かに繁栄させた。その第一王子である王太子様も、まだ10歳程の年齢だが、父王にも負けず劣らずの才能を持ち合わせている─と、専らの噂である。そんな王太子の婚約者は未だに決まっていない。ならば、光の魔力持ちのリンディが、その婚約者になる可能性は十分にある。気掛かりと言えば、健康にはなって来てはいるけど、身体が弱いと言う事。将来、王妃が務まるのか。

ーエヴィと身体が逆だったら良かったのにー

「お母様、どうしたの?」

黙り込んだ私を、心配そうに見上げてくるリンディ。

「少し考え事をしていただけよ。さぁ、時間があるから、今からお茶でもしましょうか?」

「うん!するわ!あ、サイラスも呼びましょう!」

リンディの髪を撫でて微笑めば、リンディも嬉しそうに笑った。



しおりを挟む
感想 188

あなたにおすすめの小説

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

冷遇された聖女の結末

菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。 本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。 カクヨムにも同じ作品を投稿しています。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。

紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。 「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」 最愛の娘が冤罪で処刑された。 時を巻き戻し、復讐を誓う家族。 娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。

アズやっこ
恋愛
 ❈ 追記 長編に変更します。 16歳の時、私は第一王子と婚姻した。 いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。 私の好きは家族愛として。 第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。 でも人の心は何とかならなかった。 この国はもう終わる… 兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。 だから歪み取り返しのつかない事になった。 そして私は暗殺され… 次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。

処理中です...