49 / 75
新たな噂
しおりを挟む
書類上、ブルーム伯爵家から籍を抜き、ローアン侯爵の養女となってから1ヶ月が経ったけど、日々の生活に変化は無かった。
お互い、色々とバタバタと忙しく、養女になったにも関わらず、直接会って挨拶すらもできていない。
ローアン侯爵様からは、「生活環境を変える必要はないから、エヴィの好きなようにして良いよ」と言う趣旨の手紙をもらい、私は今でも寮生活をしている。それと、リンディ達がゲルダン王国に移住する迄は、“ブルーム”を名乗る事になっている。
姉も、婚姻については正式な発表はしていない為、卒業する迄は“ブルーム”を名乗り、今もローアン邸から学校に通っている。なので、「私もローアン邸から通いたい!」と言えば、姉と一緒に過ごせる時間は増えるんだろうけど、変に注目を浴びるのも嫌なので、今迄通りの生活スタイルを続ける事にした。
それから更に2週間が過ぎた頃、ようやくローアン侯爵と会う事ができた。
「やっと会えたね。私はアレクシス=ローアンだ。知っての通り、ジェマの伯父にあたる。そして、こっちが私の妻のリリアンだ」
「初めてお目に掛かります。私はエヴィです。宜しくお願いします」
この2人が、私の父と母になった人達。
アレクシス様は、姉のジェマとどことなく似ていて、姉と同じ金髪に碧色の瞳をしている。きっと、フリージア様もこんな感じの人だったんだろう。
リリアン様も金髪で、瞳は水色。少しふっくらとした体型の、ふわふわした感じの人だ。
「エヴィ─と呼んでも?」
「はい。どう呼んでもらっても大丈夫です」
「うん。エヴィの事は、ジェマからよく聞いていたから、私達としては初めて会ったと言う気がしなくてね。エヴィ……1人だったジェマの側に居てくれて、ありがとう。きっと、フリージアも喜んでるだろう」
そう言って、アレクシス様はフワリと優しく微笑む。
ーこれが、子を思う親なのかー
私が知っている父や母は、今迄こんな顔をして子の為にお礼を言う事なんてなかった。いつもそこには、貼り付けられたような笑顔しかなかった。
でも、アレクシス様の笑顔はとても優しくて温かい。
時々見る、殿下の優しい笑顔も温かい
「………」
ー何故、ここで殿下?ー
「それで、エヴィ─」
ん?と、首を傾げそうになった時、アレクシス様に名前を呼ばれて、そこで思考が途切れ、そこからはアレクシス様とリリアン様とたくさん話をした事もあり、その時思った事は、すっかり忘れてしまっていた。
改めて話し合った結果、ブルーム家が移住する迄は寮生活を続け、私が3年生に進級する時に、ローアン邸に住むと言う事になった。
「んー……多分、その方が安全だと思うんだ。おそらく、これから大変になると思うから」
と、アレクシス様は困った顔をして笑っていた。「何が?」と訊いてみたけど、「そのうち…分かるよ」としか教えてくれなかった。
それから更に1ヶ月が経った頃─
「今、噂になっている事、知ってる?」
朝、教室に入って来たメリッサが、挨拶もそこそこに、ニコニコしながら話し出した内容は─
「公の夜会ではなかったんだけど、ある夜会の時に、あの王太子が、とある令嬢をエスコートしながら入場したんですって!しかも、王太子の色のピアスを身に着けて!」
「あぁ、私もその噂は母から聞いた。まだ発表も何もないから、表立って騒ぎになっていないだけで、事は色々進んでるのではないかと言っていた」
どうやら、ルイーズも知っているようだ。
「へー。それじゃあ、殿下にも遂に婚約者ができたのかもしれないね」
殿下も今年で卒業だ。これまで婚約者の“こ”の字も出なかったのが、おかしいくらいだよね?でも、一体誰なんだろう?あ、ユナ様とか?アンカーソン様の幼馴染みで、生徒会役員もしてて、ハッキリ言う人だから、王太子妃になっても問題無さそうだよね。
「──って、これ、エヴィの事じゃないの?」
「──はい?」
「だって、その噂になってる令嬢の容姿がエヴィにそっくりなんだもの」
“琥珀色の髪で、少し小柄な令嬢で、他国の言葉にも堪能”
「えー?でも、琥珀色の髪色なんてよくあるし……それに、殿下の色のピアスなんて──────」
あれ?───ピアス???
そう言えば、着けた後確認できなくて、夕食会が終わったら確認しようと思ってたけど、結局色々あって………起きた時には、ピアスは外されてたんだっけ……あれ??
「…………」
「“ピアスなんて”何?どうしたの?」
メリッサが、少しワクワクした顔で私の顔を覗き込んで来るけど、今はそれどころではない。内心焦りつつも、何とも無いフリをする。
「ううん…何でも……無い事も無いけど…………兎に角、殿下と私の間には、婚約の話なんて……出てないから!」
「そうなの?んー……仕方無いなぁ。今はそう言う事にしといてあげるわ」
と、メリッサにはニッコリ微笑まれ、ルイーズにはクスクスと笑われた。
ー後で、ピアスを確認しなきゃ………だよね!ー
お互い、色々とバタバタと忙しく、養女になったにも関わらず、直接会って挨拶すらもできていない。
ローアン侯爵様からは、「生活環境を変える必要はないから、エヴィの好きなようにして良いよ」と言う趣旨の手紙をもらい、私は今でも寮生活をしている。それと、リンディ達がゲルダン王国に移住する迄は、“ブルーム”を名乗る事になっている。
姉も、婚姻については正式な発表はしていない為、卒業する迄は“ブルーム”を名乗り、今もローアン邸から学校に通っている。なので、「私もローアン邸から通いたい!」と言えば、姉と一緒に過ごせる時間は増えるんだろうけど、変に注目を浴びるのも嫌なので、今迄通りの生活スタイルを続ける事にした。
それから更に2週間が過ぎた頃、ようやくローアン侯爵と会う事ができた。
「やっと会えたね。私はアレクシス=ローアンだ。知っての通り、ジェマの伯父にあたる。そして、こっちが私の妻のリリアンだ」
「初めてお目に掛かります。私はエヴィです。宜しくお願いします」
この2人が、私の父と母になった人達。
アレクシス様は、姉のジェマとどことなく似ていて、姉と同じ金髪に碧色の瞳をしている。きっと、フリージア様もこんな感じの人だったんだろう。
リリアン様も金髪で、瞳は水色。少しふっくらとした体型の、ふわふわした感じの人だ。
「エヴィ─と呼んでも?」
「はい。どう呼んでもらっても大丈夫です」
「うん。エヴィの事は、ジェマからよく聞いていたから、私達としては初めて会ったと言う気がしなくてね。エヴィ……1人だったジェマの側に居てくれて、ありがとう。きっと、フリージアも喜んでるだろう」
そう言って、アレクシス様はフワリと優しく微笑む。
ーこれが、子を思う親なのかー
私が知っている父や母は、今迄こんな顔をして子の為にお礼を言う事なんてなかった。いつもそこには、貼り付けられたような笑顔しかなかった。
でも、アレクシス様の笑顔はとても優しくて温かい。
時々見る、殿下の優しい笑顔も温かい
「………」
ー何故、ここで殿下?ー
「それで、エヴィ─」
ん?と、首を傾げそうになった時、アレクシス様に名前を呼ばれて、そこで思考が途切れ、そこからはアレクシス様とリリアン様とたくさん話をした事もあり、その時思った事は、すっかり忘れてしまっていた。
改めて話し合った結果、ブルーム家が移住する迄は寮生活を続け、私が3年生に進級する時に、ローアン邸に住むと言う事になった。
「んー……多分、その方が安全だと思うんだ。おそらく、これから大変になると思うから」
と、アレクシス様は困った顔をして笑っていた。「何が?」と訊いてみたけど、「そのうち…分かるよ」としか教えてくれなかった。
それから更に1ヶ月が経った頃─
「今、噂になっている事、知ってる?」
朝、教室に入って来たメリッサが、挨拶もそこそこに、ニコニコしながら話し出した内容は─
「公の夜会ではなかったんだけど、ある夜会の時に、あの王太子が、とある令嬢をエスコートしながら入場したんですって!しかも、王太子の色のピアスを身に着けて!」
「あぁ、私もその噂は母から聞いた。まだ発表も何もないから、表立って騒ぎになっていないだけで、事は色々進んでるのではないかと言っていた」
どうやら、ルイーズも知っているようだ。
「へー。それじゃあ、殿下にも遂に婚約者ができたのかもしれないね」
殿下も今年で卒業だ。これまで婚約者の“こ”の字も出なかったのが、おかしいくらいだよね?でも、一体誰なんだろう?あ、ユナ様とか?アンカーソン様の幼馴染みで、生徒会役員もしてて、ハッキリ言う人だから、王太子妃になっても問題無さそうだよね。
「──って、これ、エヴィの事じゃないの?」
「──はい?」
「だって、その噂になってる令嬢の容姿がエヴィにそっくりなんだもの」
“琥珀色の髪で、少し小柄な令嬢で、他国の言葉にも堪能”
「えー?でも、琥珀色の髪色なんてよくあるし……それに、殿下の色のピアスなんて──────」
あれ?───ピアス???
そう言えば、着けた後確認できなくて、夕食会が終わったら確認しようと思ってたけど、結局色々あって………起きた時には、ピアスは外されてたんだっけ……あれ??
「…………」
「“ピアスなんて”何?どうしたの?」
メリッサが、少しワクワクした顔で私の顔を覗き込んで来るけど、今はそれどころではない。内心焦りつつも、何とも無いフリをする。
「ううん…何でも……無い事も無いけど…………兎に角、殿下と私の間には、婚約の話なんて……出てないから!」
「そうなの?んー……仕方無いなぁ。今はそう言う事にしといてあげるわ」
と、メリッサにはニッコリ微笑まれ、ルイーズにはクスクスと笑われた。
ー後で、ピアスを確認しなきゃ………だよね!ー
134
あなたにおすすめの小説
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
0歳児に戻った私。今度は少し口を出したいと思います。
アズやっこ
恋愛
❈ 追記 長編に変更します。
16歳の時、私は第一王子と婚姻した。
いとこの第一王子の事は好き。でもこの好きはお兄様を思う好きと同じ。だから第二王子の事も好き。
私の好きは家族愛として。
第一王子と婚約し婚姻し家族愛とはいえ愛はある。だから何とかなる、そう思った。
でも人の心は何とかならなかった。
この国はもう終わる…
兄弟の対立、公爵の裏切り、まるでボタンの掛け違い。
だから歪み取り返しのつかない事になった。
そして私は暗殺され…
次に目が覚めた時0歳児に戻っていた。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。こういう設定だとご了承頂けると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる