(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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王太子宮②

光の魔力持ちのリンディには、王家直属の影が付いている。
その為、リンディの行いは全て、王族は把握していると言う事だ。

「なるほど……だから、リンディの婚約相手がなかなか決まらなかったんですね」

「ハッキリ言うとそうだな。例え、俺が光の魔力持ちではなかったとしても、王族としてはお花ば─リンディ嬢を迎え入れる事は無いな」

ー殿下……今、“お花畑”って言い掛けたよね?確かにその通りだから突っ込まないけどー

「エヴィ、一応確認しておきたいんだが…誰が、何を盛られたのか分かるか?」

殿下は、心配そうな顔をしている。

「お姉様と私だけに、媚薬が盛られていました。“誰が”とは……もう知ってますよね?」

まさか実の母親に媚薬を盛られるなんて、思いもしなかった。

『魔力無しのくせに』

それこそが、ポーリーンの本音なんだろう。

「私は……あの人にとって……何だったんでしょうか……」

娘として見てくれた事はあったんだろうか?否。一度も無かったのかもしれない。私がベリーが嫌いな事も、ピンク色が嫌いな事も知らなかった。それに、あの人とマトモに会話をしたのはいつだったのか─それも思い出せない程だ。

あの人達に期待をするのは止めた。
ブルームを棄てて、ローアンになったのも私の意思だ。今更、あの人達に何を言われても、傷付く事なんて無いと思っていたのに。

「棄てた筈なのに、どうして……胸が痛いんですかね?」

ふふっ─と、笑ったつもりだけど、うまく笑えている自信は無い。

「エヴィ」

優しい声で名前を呼ばれたのと同時に、フワリと優しい温もりに包まれた。いつの間にか私の横まで来ていた殿下に、抱きしめられている。

『離して下さい!』と言って突き放したい気持ちと、この温もりが安心する気持ちが半分─でも、今は……この温もりに縋り付きたいと思っている自分が居る。

「確かに、エヴィが棄てて、今はローアン侯爵の令嬢だけど、残念ながら、どうしたって、ポーリーン夫人とは血が繋がった母娘なんだ。本当に残念な事だけどな?」

その、あんまりな言い方に「ふっ」と、少しだけ笑みが溢れる。

「子が親に、“見て欲しい”、“愛して欲しい”と思うのは、当たり前の事だ。それらが叶えられなくて、胸が痛くなるのも、何もおかしい事じゃない。だから、無理して笑わなくても、泣けば良い。我慢なんかせずに、思い切り泣けば良いんだ」

「………」

ーそっか……泣いても…良いのかー

「──っ」

それからは、もう駄目だった。何かのスイッチが入ったかのように、次から次へと涙が溢れ出た。途中からは、ひっくひっくとしゃくり上げながら泣いてしまった。
そんな私の背中を、殿下が優しく撫でてくれていた。

泣いて、泣いて──少し落ち着いて来ると、今度は眠たくなって──








「ん───」

ー何だろう……温かい何かがあるー

あれ?いつの間にベッドに入ったんだっけ?ソロソロと目を開けると

「あ、起きたか?」
「────え???」

何故か……椅子に座っている殿下の膝の上だった。

「──っ!!!???」
「泣き疲れたんだろうな。1時間程寝ていたぞ」

「なっ……え?え???」

「怒るなよ?俺だって、この格好のままだと可哀想かと思ったんだが……エヴィが俺を掴んで離さなかったんだからな?」

「私が……離さなかった???」

視線を少し下に落とすと、私の左手が、殿下の服をガッツリと掴んでいた。

「すっ……すみません!本当に申し訳ありません!」

バッと慌てて手を離す。

「普段、俺に威嚇してくるエヴィが、俺にしがみついて寝てる姿は……可愛かったぞ?」

「ぬあ──っ!?」

ボフッと顔が熱くなると、殿下は更に笑みを深めた。





それからはアッサリしたもので、「女官を呼んでいるから、入浴した後は、ゆっくりすると良い」と言って、やって来た女官と入れ替わるように、殿下は部屋から出て行った。



用意されていたお風呂には、ジャスミンの花が浮かべられていた。そのジャスミンの花の香に、少し心が癒やされた気がする。腹黒な王子様だけど、心遣いは流石だな─と、自然と笑みが零れた。


「明日の朝食は、王太子殿下がご一緒に─と仰っていました。」

女官の人はそう言いながら、ホットミルクティーを用意した後、「おやすみなさいませ」と言って、下がって行った。

そこで、ようやくホッとして力が抜けた。

『流石に、俺が一晩中この部屋に居る訳にはいかないからな。扉の外に護衛騎士を立たせているから、何かあったら声を掛けると良い』

一人になりたかったのも本当だけど、一人になるのが少し怖い言うのもあったから、護衛騎士の存在は心強い。



『──魔力無しのクセに……侯爵令嬢なんて………』

アレが、母の本音だ。魔力無しと蔑んでいたが、自分よりも上の侯爵令嬢になったのが、気に喰わなかったのだ。たったそれだけの為に、あの人は姉と私に媚薬を盛ったのだ。ショックだった。でも───いっぱい泣いて、スッキリした。

「うん。もう……大丈夫だ」

コレで、今度こそ、本当の意味で、ブルームを棄てられそうだ。







って──あれ?何で……王太子宮に泊まらされてるんだろう?あれ?何で、誰も反対したりしないの?


と気付いたのは、眠りに落ちる少し前だった。




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