未練があるなんて、思わないで下さい

みん

文字の大きさ
12 / 27

12 離婚

「簡単に言うと、夫人が損をする事なく離婚できますよ」

アシュトンへの気持ちが切れた翌日。カロリーヌさんが、コペリオン様を連れて執務室にやって来た。離婚についての話と言われて、話を聞いていると、コペリオン様が離婚の手続きを手伝ってくれると言ってくれた。しかも、私が損をする事もなく。

「あの2人が、事故前に関係を持ったと言う証拠は、フラヴィアさんの証言以外にはありませんよ?妊娠予定日も、何かと難癖をつけられるかもしれないし、世間では向こうの支持が多いから、影響を受ける可能性が……」
「証拠はあるから大丈夫です」
「え?証拠が……ある?」
「我が家の……情報部は優秀で、証拠はすぐに掴めました」
「え?何故……調べて………?」

離婚すると決めたのは昨日だった。だから、裏切りの証拠を探して欲しい──なんてお願いもしていない。

「叔母上に頼まれていたんです」
「カロリーヌさんに?」

何故?と思ってカロリーヌさんを見る。

「私も主治医を辞めて、スカレティアに帰るから言いますけど、私がブレイザー家の主治医になったのは、マリレーヌ様の母親のアレッサのお願いだったからなんです」
「お母様の?」

私の両親は、10年前に流行り病を患って亡くなった。それ以降、父の弟の叔父が家督を継ぎ、私の事も本当の娘のように育ててくれた。

「アレッサがスカレティア皇国生まれだという事は知ってますか?」
「はい」
「私とアレッサは幼馴染だったんです」

母がサザリアン王国に嫁ぐ事になり、滅多に会う事はなかったけど、手紙でのやり取りは続いていたそうで、両親が流行り病にかかったと聞いてすぐに駆けつけようとしたけど間に合わず、母の死の数日後に最後の手紙が届いたらしい。

“娘に何かあった時は、気にかけて欲しい”

「今でこそ、スカレティアには女医も増えてきて、貴族社会にも受け入れられるようになったけど、私が医者を目指し始めた頃は偏見があって、学校では虐められたりもして。でも、虐められた時はいつもアレッサが助けてくれたんです。だから、いつか恩返しができたら──と思っていたら、ブレイザー家が主治医を探していると聞いて、すぐに応募したんです」
「そうだったの……」
「なので、マリレーヌ様がここを出て行くのなら、私も出て行きます。留まる理由がありませんから。慰謝料をきっちりいただく為に、いざという時の為に、リシューに証拠集めをしてもらっていました」
「この集めた証拠で十分だし、附加案件もあるから、夫人に有利な形で離婚できますよ。私に任せてもらえますか?」
「え?」
「あ、この子の事は信用してもらって大丈夫です。私が保証します」

コペリオン様の事はよく分からないけど、カロリーヌさんの事は信用できる。正直、私は何から何をすれば良いのか分からないから、してくれると言うなら、是非ともお願いしたい。

「よろしくお願いします。お礼は必ずさせていただきます」
「お任せください」




******


それからの事は、あっという間に話が進んだ。難癖をつけてくるだろうと思っていた義母も、特にごねる事もなく、コペリオン様の提示した書類にサインをした。
ただ、意外な事に、すぐにサインをしなかったのが、アシュトンだった。アシュトンの目には、フラヴィアさんしか映っていなかったし、子供の為にも私とはすぐに離婚して、フラヴィアさんを夫人にすると思っていたから。

「マリレーヌさんは、これからどうするつもりなんだ?私が言うのもなんだけど、離婚女性が生きやすい世界ではないだろう?運良く次の相手が見付かったとしても、マトモな相手とは限らない。それなら、このまま──」
「『離婚』ではなく、『離婚』です。それと、離婚して女性が不利というのは、サザリアンの悪習です。他国では、離婚しても何のしがらみにもなりません」
「それは、他国の話で──」
「このままの生活を続けろと言う方が、苦痛を強いるという事が分からないのか?」

まだ食い下がろうとするアシュトンに、コペリオン様がピシャリと言い放つ。

ー私が好きだったアシュトンは、どこに行ってしまったんだろう?ー

それとも、これが本来のアシュトンだったのか。胸に残っている痛みが、少しずつ消えていくのが分かる。

「これからの事を、アシュトンに心配してもらわなくても大丈夫よ。そもそも、離婚をお願いしたのは私だから」
「そ……そうか………なら……」

と、アシュトンはようやく離婚届にサインした。

「この書類を神殿に提出して、受理されるまで2日から10日ほどかかり、成立するとすぐに連絡が入ります。それまで、夫人はここで過ごしますか?」
「いえ……ある程度、身辺の整理は終わっているので、荷物がまとまり次第、この家を出ます」
「分かりました」

コペリオン様が書類を纏め終わるのを確認した後、私はコペリオン様と一緒に部屋を出た。




感想 8

あなたにおすすめの小説

愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

あなたを守りたい……いまさらそれを言う?

たろ
恋愛
幼い頃に起きた事件がきっかけで実の父親に疎まれて暮らすファナ。  唯一の居場所は学校。 毎日、屋敷から学校まで歩いて通う侯爵令嬢を陰で笑う生徒達。 それでも、冷たい空気の中で過ごす屋敷にいるよりはまだマシだった。 ファナに優しくしてくれる教師のゼバウト先生。 嫌がらせをされてあまりにも制服が汚れるので、毎回洗って着替えを用意しておいてくれる保健室のエリーナ先生。 昼休みと放課後は、図書室で過ごすことが多いので、いつも何かと気にかけてくれる司書のマッカートニーさんと、図書委員の優しい先輩達。 妹のリリアンは、本人に悪気は無いのだけど、嫌なことや自分が怒られそうになると全て姉のファナに押し付ける。 嫌なことがあればメソメソと泣き姉に頼ってばかりだった。 いつも明るく甘えん坊のリリアンは顔もとても可愛らしく屋敷の中心で、使用人たちも父親も甘やかして育てられた。 一方、ファナはいずれ婿を取り侯爵家を継がなければならないため、父親に厳しく躾をされていた。 明るくて元気だったはずのファナの笑顔は、大きくなるにつれ失ってしまっていた。 使用人達もぞんざいな態度を隠そうともしない。ファナはもう諦めていた。 そんななか唯一、婚約者のジェームズだけはファナのことを優先してくれる優しい男の子だった。 そう思っていたのに……… ✴︎題名少し変更しました。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

知らない結婚

鈴木葵
恋愛
親が決めた相手と11歳の時に結婚した伯爵令嬢、エマ。しかし16歳になっても、いまだに一度も夫に会った事がない。よほど妻に興味がないのか、例えそうだとしても社交界へデビューする日にはエスコートしてくれるはずだと思った。けれど他の女性をエスコートするからと断られてしまう。それに耐えかねて夫の領地まで会いに行けば、宿屋の軒先で女の人と揉めている夫とばったり出会ってしまい……。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

見切りをつけたのは、私

ねこまんまときみどりのことり
恋愛
婚約者の私マイナリーより、義妹が好きだと言う婚約者ハーディー。陰で私の悪口さえ言う彼には、もう幻滅だ。  婚約者の生家、アルベローニ侯爵家は子爵位と男爵位も保有しているが、伯爵位が継げるならと、ハーディーが家に婿入りする話が進んでいた。 侯爵家は息子の爵位の為に、家(うち)は侯爵家の事業に絡む為にと互いに利がある政略だった。 二転三転しますが、最後はわりと幸せになっています。 (小説家になろうさんとカクヨムさんにも載せています)

夏の眼差し

通木遼平
恋愛
 伯爵令嬢であるティナの婚約者とティナの妹が恋仲になり、ティナは婚約を解消することになる。婚約者に対して特に思い入れはなかったが、姉妹の婚約のすげ替えについての噂と勝手なことばかり言う妹に気疲れしたティナは、昔から彼女を気にかけてくれていたイライザ夫人の紹介で夫人の孫娘リネットの話し相手として雇われることになった。  家から離れ、リネット共に穏やかな日々を過ごすティナは、リネットの従兄であるセオドアと出会う。 ※他サイトにも掲載しています

白い結婚を望んだのは旦那様の方でしたが、捨てられるのはそちらです

なつめ
恋愛
政略結婚の初夜。 公爵セヴランに告げられたのは、妻として愛するつもりはないという冷たい宣言だった。 形だけの白い結婚。 都合のいい妻。 やがて用済みになれば捨てるつもりだったのは、あちらのはずだった。 けれど、夫の家を陰で支え続けていたのが誰なのか。 夫が見ようともしなかった彼女の価値を、別の男だけが見抜いていたとき。 捨てられるのは、夫の方になる。 再構築なし、元さやなし。 冷遇された公爵夫人が誇りを取り戻し、正しく愛してくれる相手と未来へ進む、離縁ざまぁ恋愛譚。