未練があるなんて、思わないで下さい

みん

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17 伯爵一家

改めて話を聞くと、驚く事ばかりだった。

ブレイデン=コペリオン伯爵は、現役バリバリのスカレティア皇国の宰相。

リシュー=コペリオン様は、その宰相の補佐官の1人。

ベレニーチェ=コペリオン様は、リシューさんの妹で、ビアンカ皇太子殿下の専属侍女。

夫人は、5年前に病死したそうだ。

爵位こそ伯爵だけど、公爵並の権力を持っている。

カロリーヌさんは、宰相の妹であり、この国では有名で優秀な医者で、今回の帰国と同時に皇城お抱えの医者となったそうだ。そこに投入された私。



「リシュー推薦だから、マリレーヌさんの能力は疑ってはないが、3ヶ月の研修期間を設けさせてもらう。それから、本格的に補佐官として受け入れるかを判断させてもらいたい。万が一にも、それを『否』と判断しても、マリレーヌさんには新たな職を用意させてもらう」
「はい。それで構いません」

コペリオン宰相の言う事はもっともな話だ。いくら息子推薦とは言え、無条件に受け入れられるような職ではない。

「あ……まさか、私の家名を変更したのも……」
「勿論、以前話した理由もそうだけど、他国の者が皇帝の近くに侍るのも良くないと思ったからね」

ーリシューさんは策士だー


『マリレーヌさんが、サザリアンの家名を名乗っているままだと、ブレイザー家が難癖をつけてくるかもしれない』

あり得ない事ではないと思った。離婚届の時に、かなり大人しかった義母だったアニエス。彼女があのまま大人しくしてくれれば良いけど、最悪、ホランド家に何かをしてくる可能性があった。だから、私はサザリアンを出る前に、母方の家名“ナルターレル”に変更して籍も移した。勿論、伯父である母の兄のナルターレル候爵の許可を得ている。それと同時に、私はスカレティアの国民となった。
そんな複雑?いろんな手続きがあっという間に終わったのは、リシューさんがスカレティアの宰相補佐官だったからだ。
この様子をみると、宰相様と皇太子殿下も噛んでいたのかもしれない。

ーここまで来たら、後はやるしかないー

騙された事は置いといて、私をスカウトしてくれたリシューさんに恥をかかせる訳にはいかない。それに、自立したいという気持ちは本当だ。

「私、頑張ります。よろしくお願いします」

パンッ──と手を鳴らしたのは王太子殿下。

「堅苦しい話はここまでにして、今から美味しい物を食べながら楽しい話をしよう!」

と皇太子殿下が言えば、数人の女官が現れていろんなデザートと紅茶を用意してくれて、そこからはいろんな話をしながら楽しい時間を過ごす事ができた。





**カロリーヌ視点**


皇城でティータイムを過ごした後、私はリシューとマリレーヌとコペリオン邸へと帰って来た。

「「「おかえりなさいませ」」」

いつもより豪華な出迎えには理由がある。

「あの、暫くの間、どうぞよろしくお願いします」

マリレーヌが居るから。
研修期間の3ヶ月の間、コペリオン邸で過ごす事になった。これからの執務の指導をスムーズに進める為に──と言ったのはリシュー。それに、素直に納得したのはマリレーヌ。

「無自覚なのに、策士ぶりを発揮するのね」

優良物件なのに彼女の1人もいなかったリシューが、初めて女性を家に連れてきた。しかも、当主である兄が受け入れた──となれば、この邸内が一気に色めき立ったのは言うまでもない。執事のサムなんて涙目になっていた。
マリレーヌがアレッサの娘だと知っているから、コペリオン家ではマリレーヌに対しては好印象しかない。あの気難しい兄でさえ、マリレーヌには優しかった。
マリレーヌの纏う雰囲気もあるのかもしれない。何故か、マリレーヌの傍に居ると穏やかな気持ちになる。

「無自覚と生真面目かぁ……リシュー次第ね」
「何がですか?」
「気配を消して近付くのはやめなさい!」

兄もそうだけど、リシューも気配を消すのが上手い。諜報活動もこなすのだから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけど。

「消しているつもりはないんですけど。それで、何が俺次第なんですか?」
「気にしなくて良いわ。そうそう、明日から1週間は、マリレーヌの時間は私が預かるわよ」
「何故ですか?」
「マリレーヌに必要な物を揃える為よ」
「なるほど」

少し不機嫌さを表すリシュー。マリレーヌとの時間を取られるのが嫌……なのかもしれない。

「コペリオンで過ごすのだから、それ相応のおもてなしをしなければいけないでしょう?それとも、リシューはマリレーヌが侮られても良いと思っているの?」
「叔母上、よろしくお願いします」

スカレティア皇国では、働く女性が増えて来たと言っても、それを良しとしない老害貴族もまだまだ皇城には居る。能力的には問題ないと思うけど、第一印象と見た目も重要だ。見た目だけで侮られるなど、もっての外。

「任せてちょうだい」

と、私はニッコリ微笑んだ。



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