10番目の側妃(人質)は、ひっそりと暮らしたい

みん

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*竜王国*

38 一区切り

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お姉様達との区切りの挨拶が済むと、今度は無性に竜王様に会いたくなった。



『これから先、あの3人と竜王陛下の代わりに、俺にレイラーニ様を護らせて下さい』

『“護衛”としてではなく、“1人の男として”護らせて欲しいと言う事です』

「…………」

まさか、あんな事を言われるとは思わなかった。
いつも眉間に皺を寄せられていたから、嫌われてる─とまではなくても、そう言う感情を持たれているとは思ってもみなかった。自分でもイマイチ分からないけど、眉間に皺を寄せた顔が可愛く見えていたのは……私もテオフィルさんにそう言う感情を持っていたって事なんだろうと思う。

ー好きなんだ……ー

そう自覚してしまえば単純なもので、テオフィルさんが側に居るだけで意識してしまう。よく、今迄2人だけで居られたよね…とすら思えてくる。

「とっ…兎に角、邸に戻りましょう!」
「分かりました……ふっ………」

焦っているのがバレバレなのか、テオフィルさんは邸に辿り着く迄の間クスクスと笑っていた。







「この後予定があるから、このまま帰ります」と言えば、「少しだけお時間をいただけますか?」とジャレッド様に言われて、応接室で待っていると、一つの箱を持って戻って来た。


「これは………」
「全部は無理でしたが、見付けた物だけは買い取っておきました。グレッタは知らないので、レイラーニ殿下に受け取って頂かなければ、また売ってしまわなければなりません」

その箱に入っていたのは、ダンビュライトのお姉様とお母様が身に着けていたアクセサリーだった。お姉様達を嘘つきだと、罵り嫌った叔父が売り払ったアクセサリー。そんな公爵家に婿入りした身で、それらのアクセサリーを探して買い取る事は、とても大変だっただろう。

「ジャレッド様、ありがとうございます。これらは…私にとってはとても大切な物です。有り難く頂きます。また、改めてお礼をさせていただきます」
「お礼は必要ありません。有るべき所に戻るだけですから」

「レイラーニ様、そろそろ発たなければ日が暮れてしまいます」

申し訳無さそうな顔で、帰りを促すテオフィルさん

もっと、ジャレッド様とは話をした方が良いのかもしれないけど、あの時言われた事が、これで無くなる事はない。それに、ジャレッド様も、これで赦して欲しいとは思っていないだろう。なら、私は、今はこれを受け取って帰るだけだ。

「ジャレッド様、今日は色々とありがとうございました。どうか、これからもお元気で…」
「レイラーニ殿下も、お元気でお過ごし下さい」


お互い軽く挨拶を済ませると「見送りは不要です」とテオフィルさんが告げた後、テオフィルさんは竜化して、私を手の平に包んで一気に大空へと飛び立った。







******

「いやー…まさか本当に動くとは思わなかったなぁ」
「──くっそ…この拘束具を外せ!私を誰だと思っている!?」

手足を拘束具で拘束された上、地面にうつ伏せ状態で転がされ、更にその背中を俺の足でギュッと押さえつけられているのは、先代のダンビュライト公爵。その先代公爵を踏みつけているのは、赤色の短髪で緑色の瞳をした竜人─四天王の1人の赤竜のラヴァ。

「誰って…元公爵だった老いぼれだろう?いや…罪人か?」
「老いぼれ!?罪人だと!?何を─!」




『レイラーニがダンビュライトに来ると知れば、はレイラーニを害そうと動くだろうから、ある程度泳がせて証拠を掴んでから拘束しろ』

竜王陛下がニッコリ微笑んだ。背中がゾクゾクするあの笑みは、レイラーニ様は知らないだろう。

兎に角、今回のお忍びは極秘に行われたのにも関わらず、何故か情報が先代公爵に漏れてしまったようで、レイラーニ様に逆恨みしていた先代公爵が、レイラーニ様に仕返しをしようと計画を立てていたのだ。

ー竜王陛下に転がされただけだがー

「軽い処罰で甘んじていれば良かったのに…」

甘んじていれば、爵位がなくとも領地で贅沢さえしなければ優雅な生活を過ごせただろうけど、懲りずにまた、レイラーニ様を傷付けようとしたのだから、もう逃げる事も生きる事も難しい事になった。

「お前もこのまま竜王国に連れて行くから。グレスタンこの地には、二度と戻って来れないと思うんだな」
「何を───」

と、また声をあげようとした所で俺は竜化して、先代公爵を鷲掴みにして防御魔法は掛けず、全速力で竜王国まで飛び続けた。





*竜王国地下牢*


「レイラーニ様を攫って、とある獣人貴族に売り付ける計画を立てていました。勿論、その獣人貴族も拘束して、ウィスタンス国王の元に送ってあります」
「うん。それで良いよ。アーノルド様なら良いようにしてくれるだろうし、私はだけで十分だから」

と言って、竜王陛下は目の前に転がっている先代ダンビュライト公爵を見下ろしている。その視線だけではなく、体中から殺気が溢れていて、先代公爵はガタガタと震える事しかできない。

「本当の馬鹿とはお前の事だね。竜王の娘─王女と分かっていても手を出そうとしたのだから、その身をもって償ってもらおう」
「ぐぅ……っ」

竜王陛下が、先代公爵の胸に魔法陣を組み込み呪術を刻み込む。ヘイスティングスに掛けたモノと同じモノだけど、ヘイスティングスのモノより進行が早く、劇痛を伴うモノのようだ。

「今迄のレイラーニが負った苦痛を思い知ると良い。あ、レイラーニが帰って来たようだから、私は先に戻るよ」
「承知しました」

竜王陛下から殺気が一瞬にして消え去り、穏やかな微笑みを浮かべて地下牢から出て行った。

「たすけ…てく…れ……いた……い……」
「助ける訳ないだろう?ほら、これは、俺からのプレゼントだ」
「プレ……あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ーっ!!」

俺に助けを求めて来た先代公爵に、火属性の俺からのプレゼントを付与した。

「痛みを感じた時に、同時に体が燃えるように熱くなるプレゼントだ。いつまで耐えられるだろうな?」

それだけ言うと、俺も地下牢を出て竜王陛下の元へと向かった。




そうして、先代ダンビュライト公爵は人知れずグレスタン公国から姿を消す事になったが、彼を捜す者は誰一人居なかった。






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