10番目の側妃(人質)は、ひっそりと暮らしたい

みん

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*竜王国*

39 始まりと終焉

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「レイラーニ、おかえり」
「ただいま。ダンビュライトに行かせてくれて、ありがとうございました」
「ゆっくり話はできた?」
「はい。これで、私の気持ちも一区切りつける事ができました」
「なら良かった」

私を出迎えてくれた竜王様の顔を見ると、嬉しくてホッと安心する。

「夕食は一緒にとろう。その時に話を聞かせて欲しい。それまで部屋でゆっくりしておいで」
「はい。それじゃあ、また後で………

ニコッと笑った後、お父様の横を通り過ぎて自分の部屋へと向かった。




*テオフィル視点*


『はい。それじゃあ、また後で…

「────“お父様”!!??」
「そうですね。“お父様”と呼んでいましたね」

レイラーニ様が去って暫くしてから、ようやく陛下が反応した。
今回の事で、レイラーニ様の気持ちが一区切りついたからだろう。それに、さっきの笑顔は今迄で一番輝いていたようにも見えた。出会った頃の全てを諦めたような、無感情で無表情のレイラーニ様は、もうどこにも居ない。

ー俺にも、あの笑顔を向けてもらえるように頑張ろうー

“遅咲きの春”とはよく言ったものだ。恥ずかしくもあるが、レイラーニ様に俺を選んでもらえるように頑張る事は、全く嫌ではない。

「テオフィル、ダンビュライトでは問題は無かったか?」
「はい。特に問題はありませんでした。現当主のグレッタ嬢からは何とも言えない苛立ちが見えましたけど、竜王国の王女に手を出す馬鹿ではないようです。ジャレッド殿も居ますから、もう大丈夫でしょう」
「なら、ダンビュライトもの処分だけで終わりにしよう」

レイラーニ様は距離をとってはいたか、ジャレッド殿は、レイラーニ様の事を大切に思っているようだった。ロズリーヌ嬢の事が、本当に好きだったんだろう。だから、そのロズリーヌ嬢が大切にしてきたレイラーニ様を、大切に思ってくれているのだろうと思う。




それから、ようやく本当の意味で父娘になった竜王陛下とレイラーニ様。その日の夕食は、なんとも微笑ましい空気になったのだとか。アルマが「これで、ようやくレイラーニ様も安心して過ごす事ができますね」と笑っていた。

「テオフィル様も、頑張って下さいね。勿論、レイラーニ様が嫌がるような事をした時は、兎の私ですが、全力で立ち向かわせていただきます」
「頼もしい侍女だね。勿論、嫌がる事はしない」

それに、アルマに怪我をさせようものなら……それこそ、俺はレイラーニ様に嫌われるかもしれない。このアルマも、最近では良い感じの竜人が居るらしい。

「アルマも、何か嫌な事をされたら俺に相談してくれ。どうしたって、竜人相手では大変だろうから」
「ありがとう…ございます………」

普段はキリッとしたアルマも、恋が絡むと普通の女の子なんだな─と、顔を赤くして恥ずかしそうに笑っているアルマには気付かないふりをしておいた。






それから2ヶ月後─


「今朝、元公爵が亡くなっているのが確認されました」
「そうか…………」

先代公爵を捕らえて呪術を掛けてから2ヶ月。やはり、人間の体ではそれ程耐えられなかったようだ。おまけに、ラヴァが更に呪術を上掛けしたせいもあるだろう。

「後は、ヘイスティングスがどこまで耐えられるかだね」

流石は元獣人の国王だけあって、彼はまだ苦痛と闘いながら生きている。なまじ、強靭な身体能力を持っている為、と言うのが正しいのかもしれない。

ーまぁ、ざまあみろ…だがー

グレスタン大公に関しては、貴族と民からの反発を食らい、近々代替わりをする事になるそうだ。竜王の加護がなくなった上、ラズベルト家の結界師の力が落ちているとなれば、これからあの国は今以上に苦労する事になるだろう。

「あ、陛下、いっその事、先々代のダンビュライト公爵の3人のお墓を、竜王国ここに移しますか?」

実は、既にコーデリア様とその両親のお墓は竜王国ここに移している。あの時は色々と大変だったが、今回はジャレッド殿が居るから比較的楽に移せるだろう。

「あぁ、そうだね。そうした方がレイラーニもグレスタンとスッキリ切れるかもしれないね」
「では、今週中に移します」

これで、レイラーニ様もいつでも3人と話ができるだろう。

「明日は、レイラーニと街に行くのだろう?今日の仕事は終わってるから、もう帰っても良いよ」
「それでは、お言葉に甘えて上がらせていただきます」
「うんうん。明日も、レイラーニをよろしくね」

想いを寄せている女性の父親に応援されるもの程気恥ずかしいものはないが、有り難いものだなと思う。



『相手がつがいでなくても、2人で幸せになれるからね。何より、私の唯一の願いは“レイラーニの幸せ”だからね』

未だに、番ではなくコーデリア様を想っている竜王陛下の言葉は有り難くもあり、とても重いものだ。


「はい。それでは、失礼致します」

そう言って、俺は執務室を後にした。






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