今更ですか?結構です。

みん

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思わぬ来客

「何とか…ギリギリだったわね。」

「そうですね。これなら、明日の朝には積もってそうですね。」

王都から2日掛けて帰って来た翌日の夜、雪が降り出した。
観光地として栄えているエルダイン領。夏は避暑地として観光客が多いが、冬の時期も雪景色がとても綺麗で、夜は魔石を使いライトアップさせたりと、冬でもそれなりの観光客が訪れている。

私は、雪で閉ざされたこの空間がとても好きだ。
雪が積もった夜は、耳が痛い程の静寂さが辺りを支配し、その冷たい空気が、私の心を落ち着かせるのだ。

数年前まで、雪が積もっている夜に庭に出て夜空を眺めては、「風邪をひきます!」と、ココに怒られる─と言う事を繰り返していた。

兎に角、雪が積もれば、万が一にも…絶対に有り得ないけど第一王子からお茶会のお誘いがあっても、積雪を理由に断る事ができる。

ーこれで、残りの冬休みは安泰ねー

何て、その日の夜は嬉しくて、久し振りに義母妹達が居ないと言う事もあってスッキリとした気持ちになり、いつもよりグッスリと寝る事ができた。








────のは、たった2日前だったよね?





「エルダイン辺境伯にお伺いの手紙を出したら、是非どうぞ─と、返事を頂いてね。」

「ソウデスカ…」

ー本当に…本当に!何故か!誰か教えてくれませんか!?ー

本当に何故か分からないけど、エルダイン領に帰って来てから3日後の早朝。珍しく父に呼び出されたと思ったら、今日は来客があるが、父は観光客の為の宿泊施設のホテルの役員との会合で邸を留守にする為、代わりに私が対応をしろ─と言われたのだ。
今迄父の代理で何かをする─なんて事がなかった為、驚いた。“否”と答える事も“何故?”と訊く事もできる筈もなく、兎に角来客を饗す準備を整え、その来客を待っていると─

兄のシリルが、ディラン=カレイラ様と共にやって来た。

ー兄が居るなら、私は要らないよね?ー

何て思いながらニッコリ微笑んで

「カレイラ様…ようこそいらっしゃいませ。お兄様…おかえりなさいませ。」

「やぁ、エルダイン嬢、久し振りですね。急な訪問を受け入れて頂き、ありがとうございます。」

「いえ──。お兄様も…こちらに来るとは…聞いていなかったのですが…父の手伝いでも?」

「いや。手伝いの予定はない。もともと帰って来る予定ではあったけど、その話をしたら、ディラン様にエルダイン領の案内を頼まれたんだ。」

ーそれなら、やっぱり私は要らないよね!?ー

「それなら、私は遠慮し───」
「街の事に関しては、シリル殿よりエルダイン嬢の方が詳しいと聞いてね。良ければ、案内してもらえませんか?」

と、これまたカレイラ様はニッコリ微笑んで、被せ気味にお願いをして来た。“お願い”と言っていても、相手は公爵の子息だし、父にも頼まれてしまっている。チラリと兄を見るも、相変わらずの無反応。

「分かりました。取り敢えずは…お昼はお済みですか?」

「お昼は、もう料理長に話してあるから、ここで食べる事になっている。街へは、明日で良いでしょう?」

「そうだね。」

ーここで食べるなんて聞いてませんけど?ー

本当に、私への対応酷過ぎませんか?と思いながらもグッと我慢して、兄とカレイラ様と食堂へと向かった。

「あ、私は自室で食べますね。」

と言ったが、カレイラ様に「折角だから一緒に」と言われた上、食堂にキッチリ3人分の用意が済んでいて…結局は3人で食べる事になった。

ー本当に、一体どんな嫌がらせなの!?ー






*ディラン視点*

「すみませんが、私は、お先に失礼致します。」

食後、3人でサロンに移りお茶を飲んでいると、エルダイン嬢の侍女がやって来て、エルダイン嬢の耳元で何かを伝えた後、彼女はそう言ってサロンから出て行った。
それはそれは嬉しそうに。

ーいや、本人はその喜びを隠せているつもりだろうけどー

「それで…ディラン様は、どうして急にエルダイン領ここに来る事になったんですか?」

エルダイン嬢が部屋から出て行った事を確認すると、シリル殿が訊いてきた。

「特に理由はないよ。前から、ここの冬の景色を見てみたかったと言うのがあったからだよ。」

「──殿下に…何か言われたんですか?」

「メルヴィルに?いや、何も言われていないよ。シリルに言うのもなんだけど…メルヴィルがエルダイン嬢を気に掛けているように見える?」

ーまぁ、気に掛けているんだろうけどねー

「─さぁ?私には…その辺の事はよく分からないので。ただ、フェリシティは…母は違えど妹ですから。何か裏があるなら──」

ーこれは…意外…驚いたなー

これは知られてはいないが、エルダイン嬢は義母妹から虐げられている。タウンハウスの使用人達からもだ。実の父親は、彼女には興味がないのか放置している。異母兄のシリルも、メルヴィルがいくら目の前で彼女の悪口を言おうとも、表情がピクリとも動かないから、シリルも彼女の事を嫌っているのかと思っていた。それが…違ったのか─。

「シリル殿は、本当に分かりにくいね。安心して良いよ。本当に、ここには観光として来ただけだから。それに、私はエルダイン嬢に対して、特にこれと言って感情は持っていないから。寧ろ、尊敬してる位だからね。」

と、私はまたまたニッコリと微笑んだ。





ー“興味がある”とは、言わないでおこうー




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