今更ですか?結構です。

みん

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今更ですか?

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『はじめまして。フェリシティです。』
『わたしは、グレイシーです。』
『ぼくはエスタリオン。よろしくね。』

フェリとグレイシーとエスタリオンに初めて会ったのは5歳位の時だった。
その時のフェリは、琥珀色の髪をフワフワさせて、クリッとした目で私に笑いかけてくれた。そのクリッとした─の瞳が、まるで青空みたいだな─と思った。




なのに────


「ふじ……いろ?」

フェリの…藤色の瞳に、私が映っている。


ー何故?ー


「メルヴィル。あなたは一体、フェリシティ嬢をの?」

「いつから?」

母上の質問の意味が…分からない。

「はぁ───────。メルヴィル…あなたは、本当に何も知らないし、見てもいないのね。」

母上は更に深いため息を吐いた後、その視線をフェリへと移した。

「フェリシティ嬢。申し訳無いのだけど、そこの馬鹿に説明してあげてくれるかしら?」

ふふっ─と、母上は恐ろしい程の笑顔をしていたが……。「承知しました。」と、母上に答えたフェリの顔は、とても冷たい笑みを浮かべていた。

「殿下、確かに、私の瞳の色は青色でした。ですが……。私の実の母親が亡くなって…暫く経った頃からですが…少しずつ瞳の色が変わっていったのです。青色が少しずつ薄くなって…5年程前には、今の薄藤色になっていました。」

「色が…変わった?」

ソフィア様が亡くなって暫くとは…もう10年程経つと言う事か?
あぁ──だから、母上は“か”と私に訊いたのか。

「完全に変わったわけではなく、普段は薄藤色なのですが……光の加減や…感情によって、青色になる事もあります。そう…ですねぇ……。」

と、フェリは右手の人差し指を自身の顎に当てて、少し思案した後、冷たい笑みを更に深めて私に視線を絡め直す。

「薄藤色が基本になってからですが……私の感情が“無”に近ければ近い程……青色に見えるようです。」

ヒュッと息を呑む。

“感情がに近ければ近い程に”

私の記憶の限りでは、幼い頃から今迄ずっと、フェリの瞳の色は────青だった。

私は、いつからフェリを見ていなかった?
フェリは、いつから私に対して無感情だった?

それでもやっぱり、私はフェリが良いと。
エスタリオンと2人で仲良くしているのを目の当たりにして、フェリを渡したくないと思った。だから、もう一度、フェリに信頼してもらおうと……

「私は…フェリと共に、この国の為に頑張りたいと思った。だから、聞くだけではなくて、自分から動かないといけないと思って……。フェリが私を選んで良かったと、思われるような王太子になろうと思って…」

滞っていた事業計画の見直しをはかり、改めて進め直す事もした。これには、事業主と一緒に計画に参加していた弟のジュリアスの見直し案も参考にはしたが、最終的には私の案になった。それで、私は少し自信がついた。また、フェリに見てもらえると。

だから、2学期が始まってからは、私からフェリに挨拶をするようにした。

「──どうすれば良かった?これからどうすれば、フェリはまた私を見てくれる?どうすれば、フェリは喜んでくれる?」

縋る思いでフェリに視線を向けると、フェリの瞳が青色になっていた。

無の感情に近ければ近い程青色に──

「フェリ……どうして?」





フェリシティわたしの目の前に居る人は、人間なんだろうか?ー

一体、何を言っているのか、何が言いたいのか…分からない。
“これから”って何?第一王子と私の間に、“これから”があると…思っているの?

そう思うと、更に一層、第一王子への気持ちが冷たいモノに変わっていく。

ーどうして…やろうかしら?もう、ぶっちゃけても良いかしら?この人、ハッキリ言わないと駄目だよね!?ー

チラリと、王妃様に視線を向けると

『思いっ切りやっちゃいなさい!!』

と言わんばかりの笑顔を私に向けていた。

ーならば──私は遠慮なくいかせていただきますー

「──殿下。」
「!何だ?フェリ!」

ようやく、私が声を掛けた事が嬉しかったのか、パアッと明るい笑顔で私を見つめる第一王子。ある意味これも……私にとってはホラーですけどね!喜ぶ要素が何処にあったのか……は、今は置いておいて────

「殿下、今更──ですか?」

「え?」

「一度は離れた気持ちも、もう一度に頑張れば、私の気持ちがまた殿下に戻って来ると?私の為に頑張ってくれて嬉しいと思うと?誰もが皆、自分の為に心を入れ替えてくれて嬉しいと、喜ぶと思っているのですか?そんなモノ、私は結構です。」

確かに、自分の為に心を入れ替えて真摯に向き合ってくれたなら、私の心だって動かされたかもしれないけど。

「殿下のそれは、自己満足でしかありませんから。」




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