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❋ループ編❋
9 同じ事と違う事
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「昨日は、付き合っていただいて、ありがとうございます。」
「あ…いえ…。楽しんでいただけて良かったです。」
「「「……………」」」
ジュリエンヌ=トワイアル王女が、今世でも“黒龍の巫女”と言う事は秘匿とされ、留学生としてやって来てから3ヶ月。
ジュリエンヌ様が来国して以降、学園でのランチはハロルド様、ジュリエンヌ様、フルール、ジョナス様と私の5人でとるようになった。たまに5人が揃わない事もあるし、ジュリエンヌ様が居ない時もあったが、ハロルド様とジュリエンヌ様が2人きりで─と言う事はまだなかったから……どこかでホッとしていたけど………。
「ハロルド…昨日、ジュリエンヌ殿下と何処かに…行ったのか?確か…エヴェリーナは、真っ直ぐにハウンゼント邸に帰ったと記憶しているが……」
「あ…いや…昨日は───」
「昨日、私が急に甘い物が食べたくなってしまって…城に帰る前に、一緒にカフェに行っていただいたの。その…エヴェリーナ様…ごめんなさいね?他意は無かったのだけど…」
何となく、ハロルド様を窘める様に言葉を掛けたのはジョナス様で、その言葉に反応したのはジュリエンヌ様だった。
眉をハの字にして反省を表しているような顔だ。どちらが良くない事をしたのか…ジュリエンヌ様が目をウルウルとさせて、私の顔を見上げている。
ーこんなに…あざとかったの?ー
傍から見れば、“トワイアル王女を泣かせているエヴェリーナ”と映るだろう。
「いえ……お気になさらずに……。王女殿下が楽しんでいただけたなら、良かったです。」
「エヴェリーナ様…ありがとう。エヴェリーナ様は、心が広いお方なのね?」
ふふっ─と笑うジュリエンヌ様。本当に、その姿は素直に可愛らしいと思う。ハロルド様が、ジュリエンヌ様に惹かれていったのも…分からなくもない。惹かれて、また好きになったのなら───。
前回も、3ヶ月を過ぎた頃からだった。
そして、今回も──
5人揃ってランチを取る事が減っていき、気が付けば、ハロルド様とジュリエンヌ様は、2人で王族専用スペースでランチを取る事が増えていった。
「エヴェリーナ、大丈夫か?」
「ジョナス様…ありがとうございます。」
「本当に、ハロルド様は、何を考えてるのかしら!?エヴェリーナを蔑ろにして!」
「フルール、落ち着いて?」
前回でもそうだったけど、今世でもこの2人は、私の為に心配してくれたり、怒ってくれたりしている。本当に私にとって有り難い存在だ。
ー私が居なくなった後、この2人はどうなったんだろう?ー
最後迄私を心配してくれた2人で、特にジョナス様は王太子の側近候補と言われていた。私の事で、悪い影響がなかったのなら良いけど……。
兎に角、少しずつ、また前回と同じ様に悪い方へと転がって行ってしまっている。ここから先は、私1人だけで行動しないようにしよう。でなければ、また、してもいない事をしたと言われてしまう。そうなったら───
ギュッと、自然と手に力が入る。
真っ黒な体に、真っ黒な瞳をした竜。
怒りを……全ての怒りを私に向けるように、その真っ黒な瞳で私を見下ろしていた。
婚約解消でも、最悪、破棄でも良い。
どうして、どうやって、あの場所に連れて行かれたのかは分からないけど、ただ、もう二度、あの竜の所だけには行きたくない。贄にされるなんて……絶対に嫌だ。
多分…ハロルド様とジュリエンヌ様の仲は、これからまた深いものになっていってしまうだろう。前回よりも、仲良くやって来ていたと思っていたけど。
恋心に蓋をしていたつもりでも、やっぱり好きになってしまっていた。だから、今も胸は痛みを訴えている。
「ハロルド様も王女殿下も王族同士。2人が結ばれるのであれば、国にとっても良い事なんだと思うの。だから……私との婚約は考え直した方が良いのかもしれないわね。」
「エヴェリーナ……よし!今日は帰りに甘い物でも食べに行こう!私、行きたい所があるのよ!勿論、ジョナスも一緒にね!」
「ふふっ…分かったわ。ジョナス様、お邪魔して良いかしら?」
「お邪魔なんかじゃないよ。寧ろ、俺の方がお邪魔かもしれないが、3人で行こう。」
どうせ、今日もハロルド様とジュリエンヌ様からお誘いを受ける事はないだろう。前回では、フルールとジョナス様の邪魔をするのは申し訳無い─と、フルールに誘われても断っていたけど、私も色々楽しみたいと言うのが本音だ。前回できなかった事を、今世ではしてみよう。それ位……許されるよね?
そうして、その日の放課後、私達3人は歩いて目的のカフェへと向かった。
「あ…いえ…。楽しんでいただけて良かったです。」
「「「……………」」」
ジュリエンヌ=トワイアル王女が、今世でも“黒龍の巫女”と言う事は秘匿とされ、留学生としてやって来てから3ヶ月。
ジュリエンヌ様が来国して以降、学園でのランチはハロルド様、ジュリエンヌ様、フルール、ジョナス様と私の5人でとるようになった。たまに5人が揃わない事もあるし、ジュリエンヌ様が居ない時もあったが、ハロルド様とジュリエンヌ様が2人きりで─と言う事はまだなかったから……どこかでホッとしていたけど………。
「ハロルド…昨日、ジュリエンヌ殿下と何処かに…行ったのか?確か…エヴェリーナは、真っ直ぐにハウンゼント邸に帰ったと記憶しているが……」
「あ…いや…昨日は───」
「昨日、私が急に甘い物が食べたくなってしまって…城に帰る前に、一緒にカフェに行っていただいたの。その…エヴェリーナ様…ごめんなさいね?他意は無かったのだけど…」
何となく、ハロルド様を窘める様に言葉を掛けたのはジョナス様で、その言葉に反応したのはジュリエンヌ様だった。
眉をハの字にして反省を表しているような顔だ。どちらが良くない事をしたのか…ジュリエンヌ様が目をウルウルとさせて、私の顔を見上げている。
ーこんなに…あざとかったの?ー
傍から見れば、“トワイアル王女を泣かせているエヴェリーナ”と映るだろう。
「いえ……お気になさらずに……。王女殿下が楽しんでいただけたなら、良かったです。」
「エヴェリーナ様…ありがとう。エヴェリーナ様は、心が広いお方なのね?」
ふふっ─と笑うジュリエンヌ様。本当に、その姿は素直に可愛らしいと思う。ハロルド様が、ジュリエンヌ様に惹かれていったのも…分からなくもない。惹かれて、また好きになったのなら───。
前回も、3ヶ月を過ぎた頃からだった。
そして、今回も──
5人揃ってランチを取る事が減っていき、気が付けば、ハロルド様とジュリエンヌ様は、2人で王族専用スペースでランチを取る事が増えていった。
「エヴェリーナ、大丈夫か?」
「ジョナス様…ありがとうございます。」
「本当に、ハロルド様は、何を考えてるのかしら!?エヴェリーナを蔑ろにして!」
「フルール、落ち着いて?」
前回でもそうだったけど、今世でもこの2人は、私の為に心配してくれたり、怒ってくれたりしている。本当に私にとって有り難い存在だ。
ー私が居なくなった後、この2人はどうなったんだろう?ー
最後迄私を心配してくれた2人で、特にジョナス様は王太子の側近候補と言われていた。私の事で、悪い影響がなかったのなら良いけど……。
兎に角、少しずつ、また前回と同じ様に悪い方へと転がって行ってしまっている。ここから先は、私1人だけで行動しないようにしよう。でなければ、また、してもいない事をしたと言われてしまう。そうなったら───
ギュッと、自然と手に力が入る。
真っ黒な体に、真っ黒な瞳をした竜。
怒りを……全ての怒りを私に向けるように、その真っ黒な瞳で私を見下ろしていた。
婚約解消でも、最悪、破棄でも良い。
どうして、どうやって、あの場所に連れて行かれたのかは分からないけど、ただ、もう二度、あの竜の所だけには行きたくない。贄にされるなんて……絶対に嫌だ。
多分…ハロルド様とジュリエンヌ様の仲は、これからまた深いものになっていってしまうだろう。前回よりも、仲良くやって来ていたと思っていたけど。
恋心に蓋をしていたつもりでも、やっぱり好きになってしまっていた。だから、今も胸は痛みを訴えている。
「ハロルド様も王女殿下も王族同士。2人が結ばれるのであれば、国にとっても良い事なんだと思うの。だから……私との婚約は考え直した方が良いのかもしれないわね。」
「エヴェリーナ……よし!今日は帰りに甘い物でも食べに行こう!私、行きたい所があるのよ!勿論、ジョナスも一緒にね!」
「ふふっ…分かったわ。ジョナス様、お邪魔して良いかしら?」
「お邪魔なんかじゃないよ。寧ろ、俺の方がお邪魔かもしれないが、3人で行こう。」
どうせ、今日もハロルド様とジュリエンヌ様からお誘いを受ける事はないだろう。前回では、フルールとジョナス様の邪魔をするのは申し訳無い─と、フルールに誘われても断っていたけど、私も色々楽しみたいと言うのが本音だ。前回できなかった事を、今世ではしてみよう。それ位……許されるよね?
そうして、その日の放課後、私達3人は歩いて目的のカフェへと向かった。
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