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第2章ー魔道士ー
エリート魔道士
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「「おつかれさまー」」
2年に1度の魔道士入門試験が終わり、私とリゼットは打ち上げにオシャレなお店──ではなく、役所内にある社員食堂へとやって来た。
最後の受験生の魔法が暴走した事で、その後の処理や報告書の作成などで予定より時間が掛かってしまい、時間が遅くなってしまったのだ。おまけに、やっぱり、明日の午前中にリゼットがルシエント様と、今後の事についての話しをする事になっているそうで、取り敢えず─と、社員食堂で打ち上げをする事になった。「今日は頑張ったから、オマケだよ」と、料理長であるブルーノさんからはデザートのケーキをオマケしてもらった。
「最後に魔法が暴走したみたいだけど、ナディアは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。と言うか…最後の人だけじゃなくて、細々と何かとフォローしたよ…。」
30人の受験生が居たけど…多分、かなり難しいんじゃないかな?と思ってしまう感じだった。
リゼットも、私のその話を聞いて微妙な顔をしたから、午前中の試験を見て、リゼットも思うところがあった─と言う事なんだろう。
合否の判断をするのは、試験官であるルシエント様とダレルさんで、結果は3日後に通知される。2年前の試験では、20人受けて合格したのが2人だった。狭き門ではあるが、受験するのに年齢制限は無い為、何度も受ける人も居る。受かってからも“見習い”から始まり、“魔道士”になるまでも、個人差が出てくる。何年かければ魔道士になれる─のではなく、実力を付けて、更に魔道士試験に合格しなければ“魔道士”にはなれないのだ。“魔道士見習い”のまま、辞めていく者も居たりする、完璧な実力主義の世界である。
「ここだけの話、貴族令息の筈なのに、貴族のルールやマナーが残念な子が居たわ…」
伯爵令嬢であるリゼットが言うからには、その子は本当に残念な子だったんだろう。
「でも、その時思ったんだけど、ナディアって所作が綺麗だよね。確か…あの孤児院の院長が元侯爵夫人…だったっけ?その院長から指導されたりしたの?」
「あー…うん。院長には…色々指導してもらったよ。」
「やっぱりね!」
と、クスクス笑うリゼット。
確かに、院長は元侯爵夫人で旦那さんが亡くなった後、後継ぎがいなかった為、従弟の子に引き継がせた後、あの孤児院の院長になったそうだ。その院長から、「魔道士になりたいのなら、貴族の事をそれなりに知っておく事と、貴族のルールとマナーを身に付けておいた方が良いわ。」と、まだ幼かった私の“魔道士になりたい”と言う夢を、笑う事もせず応援してくれて、更には院長自ら貴族のルールやマナーを指導してくれた。
前世の記憶があった私は、それをスルスルとマスターしていって、院長には驚かれたけど。
「ねー、ナディア。ナディアも王都に行かない?ナディアだったら、魔力も問題なく…王城付きの魔道士になれると思うんだけど……」
「リゼット……」
“王城付きの魔道士”
魔道士にとっては憧れの職─エリートだ。平の魔道士とは何もかもが違う。
お給料は勿論の事、周りからの視線もガラリと変わる。気位だけが高い貴族からも、“王城付き”と言うだけで好意的に見られたりもするのだ。私だって、憧れないわけではない。ただ─王城が…王都が怖いのだ。
男性恐怖症ではないし、魘される事もないけど、やっぱり今でもあの時の冷たい目を覚えている。
「あぁ、ここに居たのか」
そこで声を掛けて来たのは、私達の上司であるダレルさんだった。
「「ダレルさん、お疲れ様です」」
ダレルさんも、遅めの夕食をとりに来たのか─と、思ったけど、そのダレルさんの後ろにもう1人の姿があった。
王城付き魔道士─オスニエル=ルシエント様だ。
「お疲れ様」と、ダレルさんの後ろからひょこっと現れて、リゼットと私に軽く手を上げて微笑んだ。
「あ、ひょっとして、リゼットを探してましたか?」
話をするのは明日─と聞いていたけど、軽く打ち合わせ?でもするのかな?
「リゼットだけじゃなくて、ナディアも探してたんだよ。」
「私も…ですか?」
ダレルさんの言葉に、私だけではなく、リゼットも首を傾げる。
「今日は2人には補佐役としてお世話になったから、お礼に食事でもと思って……でも、少し遅かったみたいだね。」
そう言って苦笑するのはルシエント様。
「お礼なんて…必要ありません。ちゃんと、ダレルさんからお手当を頂くので。お気持ちだけ、有り難く頂きます。」
ー王城、その上、王太子の側近の人との交流なんて、御免蒙りたいー
「うーん…それじゃあ…せめて、お茶だけでもどうかな?」
なんて、王城付き魔道士に言われてしまえば……
「ありがとうございます。」
「───────はい。」
と、言うしかないよね?
2年に1度の魔道士入門試験が終わり、私とリゼットは打ち上げにオシャレなお店──ではなく、役所内にある社員食堂へとやって来た。
最後の受験生の魔法が暴走した事で、その後の処理や報告書の作成などで予定より時間が掛かってしまい、時間が遅くなってしまったのだ。おまけに、やっぱり、明日の午前中にリゼットがルシエント様と、今後の事についての話しをする事になっているそうで、取り敢えず─と、社員食堂で打ち上げをする事になった。「今日は頑張ったから、オマケだよ」と、料理長であるブルーノさんからはデザートのケーキをオマケしてもらった。
「最後に魔法が暴走したみたいだけど、ナディアは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。と言うか…最後の人だけじゃなくて、細々と何かとフォローしたよ…。」
30人の受験生が居たけど…多分、かなり難しいんじゃないかな?と思ってしまう感じだった。
リゼットも、私のその話を聞いて微妙な顔をしたから、午前中の試験を見て、リゼットも思うところがあった─と言う事なんだろう。
合否の判断をするのは、試験官であるルシエント様とダレルさんで、結果は3日後に通知される。2年前の試験では、20人受けて合格したのが2人だった。狭き門ではあるが、受験するのに年齢制限は無い為、何度も受ける人も居る。受かってからも“見習い”から始まり、“魔道士”になるまでも、個人差が出てくる。何年かければ魔道士になれる─のではなく、実力を付けて、更に魔道士試験に合格しなければ“魔道士”にはなれないのだ。“魔道士見習い”のまま、辞めていく者も居たりする、完璧な実力主義の世界である。
「ここだけの話、貴族令息の筈なのに、貴族のルールやマナーが残念な子が居たわ…」
伯爵令嬢であるリゼットが言うからには、その子は本当に残念な子だったんだろう。
「でも、その時思ったんだけど、ナディアって所作が綺麗だよね。確か…あの孤児院の院長が元侯爵夫人…だったっけ?その院長から指導されたりしたの?」
「あー…うん。院長には…色々指導してもらったよ。」
「やっぱりね!」
と、クスクス笑うリゼット。
確かに、院長は元侯爵夫人で旦那さんが亡くなった後、後継ぎがいなかった為、従弟の子に引き継がせた後、あの孤児院の院長になったそうだ。その院長から、「魔道士になりたいのなら、貴族の事をそれなりに知っておく事と、貴族のルールとマナーを身に付けておいた方が良いわ。」と、まだ幼かった私の“魔道士になりたい”と言う夢を、笑う事もせず応援してくれて、更には院長自ら貴族のルールやマナーを指導してくれた。
前世の記憶があった私は、それをスルスルとマスターしていって、院長には驚かれたけど。
「ねー、ナディア。ナディアも王都に行かない?ナディアだったら、魔力も問題なく…王城付きの魔道士になれると思うんだけど……」
「リゼット……」
“王城付きの魔道士”
魔道士にとっては憧れの職─エリートだ。平の魔道士とは何もかもが違う。
お給料は勿論の事、周りからの視線もガラリと変わる。気位だけが高い貴族からも、“王城付き”と言うだけで好意的に見られたりもするのだ。私だって、憧れないわけではない。ただ─王城が…王都が怖いのだ。
男性恐怖症ではないし、魘される事もないけど、やっぱり今でもあの時の冷たい目を覚えている。
「あぁ、ここに居たのか」
そこで声を掛けて来たのは、私達の上司であるダレルさんだった。
「「ダレルさん、お疲れ様です」」
ダレルさんも、遅めの夕食をとりに来たのか─と、思ったけど、そのダレルさんの後ろにもう1人の姿があった。
王城付き魔道士─オスニエル=ルシエント様だ。
「お疲れ様」と、ダレルさんの後ろからひょこっと現れて、リゼットと私に軽く手を上げて微笑んだ。
「あ、ひょっとして、リゼットを探してましたか?」
話をするのは明日─と聞いていたけど、軽く打ち合わせ?でもするのかな?
「リゼットだけじゃなくて、ナディアも探してたんだよ。」
「私も…ですか?」
ダレルさんの言葉に、私だけではなく、リゼットも首を傾げる。
「今日は2人には補佐役としてお世話になったから、お礼に食事でもと思って……でも、少し遅かったみたいだね。」
そう言って苦笑するのはルシエント様。
「お礼なんて…必要ありません。ちゃんと、ダレルさんからお手当を頂くので。お気持ちだけ、有り難く頂きます。」
ー王城、その上、王太子の側近の人との交流なんて、御免蒙りたいー
「うーん…それじゃあ…せめて、お茶だけでもどうかな?」
なんて、王城付き魔道士に言われてしまえば……
「ありがとうございます。」
「───────はい。」
と、言うしかないよね?
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