36 / 59
36 失態
しおりを挟む
ドスッ─
『───っ!?』
鈍い音とともに左足に痛みが走った。
ー何が起こったの!?ー
その痛みは更に強くなり、立っている事ができずに、その場に倒れてしまった。
「やった!当たったわ!私、ようやく白色の生き物を手に入れたわ!これでアラスター様は──」
ユラが喜んでいる。痛みのある左足を見ると、そこに短剣が突き刺さっていた。
ーまさか…ユラなんかにやられるとは…最大級の失態……汚点だー
しかも、この短剣…“対魔獣用”の短剣じゃないだろうか?それならとても厄介だ。今この場所は魔法の無効化が効いているから作用しているかどうか分からいけど、対魔獣用の短剣には、刺さると暫く抜けないようになる魔法が掛けられていて、更に体を痺れさせる毒が塗布されている。
ー体が重いー
「──きゃあっ!アラスター様!?何を──止めて!」
ーヴェルティル…様?ー
何とか頭を上げてユラの方を見ると─
ヴェルティル様がユラの首元に短剣を突き付けていた。
ーどうして?ー
「アラスター!?」
「ユラ!!」
そこにやって来たのは、メグと第二王子だった。
「アラスター!落ち着け!その短剣を下ろせ!」
「下ろす?何故?コレが……彼女を傷付けたのに?」
「彼女?」
第二王子が辺りをキョロキョロ見回して、白豹と目が合った─瞬間、顔色が真っ青になった。
「なっ!!クレイオン嬢!?足が!あー……ユラか!?」
「え?クレイオン嬢?え?シロ……雪豹?が…リュシエンヌ!?」
メグのキョドり具合が半端無い。それはしょうがない。メグに、白豹の姿を見せたことなど一度もないから。こんな時でも…笑えてしまう……まだ、大丈夫だ。体の痛みよりも辛いのは……番の香りだ。
『………』
本能とは、本当に怖ろしいものだ。その香りは、まるで麻薬のように私の思考を麻痺させて本能が支配して行く。そのせいか、痛みに鈍感になっていく。痛みに鈍感になると言う事は…自分自身の怪我を治癒しようとする力が弱くなってしまうと言う事だ。
「とっ、兎に角!その短剣を下ろして、ユラはその護衛に預けるんだ。ユラよりも、クレイオン嬢の方が優先すべき事だろう!?」
「っ!」
「きゃあ──っ」
ヴェルティル様は短剣を下ろした後、ユラを突き飛ばすようにして護衛に預けた。
「リュシエンヌ!」
『…メグ………』
「小説みたいに、私も治癒魔法とかが使えたら良かったのに…どうしよう…抜いたら駄目だから…」
治癒魔法─
500年以上前は、聖女の力の一つに“治癒”があった。ただ、その治癒の力を求め、聖女を奪い合う争いが起こり、その聖女すら命を落としてしまい、名も無き女神の逆鱗に触れてしまい、それ以降、治癒の力は聖女から無くなってしまったのだ。今の聖女は、浄化だけに特化しているのだ。
ーヤバイなぁ…左足の感覚が……ー
対魔獣用の毒だから、獣人でしかない私には結構キツいのかもしれない。立派な騎士になるつもりが…ユラなんかにヤラれて……
『くやし……………』
「リュシエンヌ!!」
獣化していても、涙は出るようだ。
悔しいやら腹立たしいやら…体が痛いやら……。
「「えっ!?」」
そこで、メグと第二王子の驚いた声と共に、光で溢れていた森が、また鬱蒼とした森へと変化した。無効化の魔道具が止まったのだろう。あの香りも無くなった。
「クレイオン嬢!大丈夫か!?」
『ヴェ…ティルさま……』
どうして、白豹姿の私を知っているんだろう?
「この短剣は…対魔獣用か、ヤバいな……獣人には強過ぎる!くっそ……やっぱり始末してしまおうか………」
『………』
ー駄目だ…動けないー
「クレイオン嬢!しっかりしろ!こうなったら……アラール殿下、俺はクレイオン嬢を連れて戻ります。そこの馬鹿女を頼みます。分かって…ますよね?」
「わ…分かっている。バ─ユラの事は任せてくれ!」
「メグはどうする?」
「私は…アラール様と残ります。ユラの事は後で説明しますが、考えがあるので任せて下さい。兎に角、リュシエンヌ様の事、宜しくお願いします!」
「分かった。クレイオン嬢は必ず助けるから。クレイオン嬢、また少しだけ我慢してくれ」
『………』
何を?─と問う事もできず、私は獣化した姿のままで、またヴェルティル様に抱き上げられた。
「気持ち悪くなるかもしれないから、目を閉じて…」
『………』
左足を庇うように抱き上げられ、耳元で心地良い低音ボイスで囁かれると、体の痛みが少しだけ和らいだのは……気のせいかもしれない。
「********」
それから、ヴェルティル様が何かを呟くと、一瞬だけ体が浮いたような感覚に襲われた。
*????*
「逃げ切れると思う?」
「無理でしょうね。そもそも、何故逃げているのか分かりませんけど、彼女も好意を寄せていたでしょうから…」
「何故逃げるか?──か……分からなくも…ないけどね…」
「殿下は、何かご存知なんですか?」
「知ってるか?と訊かれたら、“知らない”だけどね」
「?」
バンッ────
「レイモンド!!」
「──っ!?なっ……アラスター!?え!?どうし──白……リ……クレイオン嬢か!?」
「リュシエンヌ!?何て事!!」
「馬鹿女に、対魔獣用でやられたんだ!」
「対魔獣用!?何故そんな物で!?いやいや、兎に角、今すぐ奥の部屋のベッドの上に彼女を横にしてくれ!」
ユーグレイシアの王太子レイモンドがそう言うと、アラスター=ヴェルティルは急いで、執務室の奥にあるベッドへとリュシエンヌを運んだ。
『───っ!?』
鈍い音とともに左足に痛みが走った。
ー何が起こったの!?ー
その痛みは更に強くなり、立っている事ができずに、その場に倒れてしまった。
「やった!当たったわ!私、ようやく白色の生き物を手に入れたわ!これでアラスター様は──」
ユラが喜んでいる。痛みのある左足を見ると、そこに短剣が突き刺さっていた。
ーまさか…ユラなんかにやられるとは…最大級の失態……汚点だー
しかも、この短剣…“対魔獣用”の短剣じゃないだろうか?それならとても厄介だ。今この場所は魔法の無効化が効いているから作用しているかどうか分からいけど、対魔獣用の短剣には、刺さると暫く抜けないようになる魔法が掛けられていて、更に体を痺れさせる毒が塗布されている。
ー体が重いー
「──きゃあっ!アラスター様!?何を──止めて!」
ーヴェルティル…様?ー
何とか頭を上げてユラの方を見ると─
ヴェルティル様がユラの首元に短剣を突き付けていた。
ーどうして?ー
「アラスター!?」
「ユラ!!」
そこにやって来たのは、メグと第二王子だった。
「アラスター!落ち着け!その短剣を下ろせ!」
「下ろす?何故?コレが……彼女を傷付けたのに?」
「彼女?」
第二王子が辺りをキョロキョロ見回して、白豹と目が合った─瞬間、顔色が真っ青になった。
「なっ!!クレイオン嬢!?足が!あー……ユラか!?」
「え?クレイオン嬢?え?シロ……雪豹?が…リュシエンヌ!?」
メグのキョドり具合が半端無い。それはしょうがない。メグに、白豹の姿を見せたことなど一度もないから。こんな時でも…笑えてしまう……まだ、大丈夫だ。体の痛みよりも辛いのは……番の香りだ。
『………』
本能とは、本当に怖ろしいものだ。その香りは、まるで麻薬のように私の思考を麻痺させて本能が支配して行く。そのせいか、痛みに鈍感になっていく。痛みに鈍感になると言う事は…自分自身の怪我を治癒しようとする力が弱くなってしまうと言う事だ。
「とっ、兎に角!その短剣を下ろして、ユラはその護衛に預けるんだ。ユラよりも、クレイオン嬢の方が優先すべき事だろう!?」
「っ!」
「きゃあ──っ」
ヴェルティル様は短剣を下ろした後、ユラを突き飛ばすようにして護衛に預けた。
「リュシエンヌ!」
『…メグ………』
「小説みたいに、私も治癒魔法とかが使えたら良かったのに…どうしよう…抜いたら駄目だから…」
治癒魔法─
500年以上前は、聖女の力の一つに“治癒”があった。ただ、その治癒の力を求め、聖女を奪い合う争いが起こり、その聖女すら命を落としてしまい、名も無き女神の逆鱗に触れてしまい、それ以降、治癒の力は聖女から無くなってしまったのだ。今の聖女は、浄化だけに特化しているのだ。
ーヤバイなぁ…左足の感覚が……ー
対魔獣用の毒だから、獣人でしかない私には結構キツいのかもしれない。立派な騎士になるつもりが…ユラなんかにヤラれて……
『くやし……………』
「リュシエンヌ!!」
獣化していても、涙は出るようだ。
悔しいやら腹立たしいやら…体が痛いやら……。
「「えっ!?」」
そこで、メグと第二王子の驚いた声と共に、光で溢れていた森が、また鬱蒼とした森へと変化した。無効化の魔道具が止まったのだろう。あの香りも無くなった。
「クレイオン嬢!大丈夫か!?」
『ヴェ…ティルさま……』
どうして、白豹姿の私を知っているんだろう?
「この短剣は…対魔獣用か、ヤバいな……獣人には強過ぎる!くっそ……やっぱり始末してしまおうか………」
『………』
ー駄目だ…動けないー
「クレイオン嬢!しっかりしろ!こうなったら……アラール殿下、俺はクレイオン嬢を連れて戻ります。そこの馬鹿女を頼みます。分かって…ますよね?」
「わ…分かっている。バ─ユラの事は任せてくれ!」
「メグはどうする?」
「私は…アラール様と残ります。ユラの事は後で説明しますが、考えがあるので任せて下さい。兎に角、リュシエンヌ様の事、宜しくお願いします!」
「分かった。クレイオン嬢は必ず助けるから。クレイオン嬢、また少しだけ我慢してくれ」
『………』
何を?─と問う事もできず、私は獣化した姿のままで、またヴェルティル様に抱き上げられた。
「気持ち悪くなるかもしれないから、目を閉じて…」
『………』
左足を庇うように抱き上げられ、耳元で心地良い低音ボイスで囁かれると、体の痛みが少しだけ和らいだのは……気のせいかもしれない。
「********」
それから、ヴェルティル様が何かを呟くと、一瞬だけ体が浮いたような感覚に襲われた。
*????*
「逃げ切れると思う?」
「無理でしょうね。そもそも、何故逃げているのか分かりませんけど、彼女も好意を寄せていたでしょうから…」
「何故逃げるか?──か……分からなくも…ないけどね…」
「殿下は、何かご存知なんですか?」
「知ってるか?と訊かれたら、“知らない”だけどね」
「?」
バンッ────
「レイモンド!!」
「──っ!?なっ……アラスター!?え!?どうし──白……リ……クレイオン嬢か!?」
「リュシエンヌ!?何て事!!」
「馬鹿女に、対魔獣用でやられたんだ!」
「対魔獣用!?何故そんな物で!?いやいや、兎に角、今すぐ奥の部屋のベッドの上に彼女を横にしてくれ!」
ユーグレイシアの王太子レイモンドがそう言うと、アラスター=ヴェルティルは急いで、執務室の奥にあるベッドへとリュシエンヌを運んだ。
1,540
あなたにおすすめの小説
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
【完結】そう、番だったら別れなさい
堀 和三盆
恋愛
ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。
しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。
そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、
『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。
「そう、番だったら別れなさい」
母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。
お母様どうして!?
何で運命の番と別れなくてはいけないの!?
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
【完結】番が見ているのでさようなら
堀 和三盆
恋愛
その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。
焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。
どこかから注がれる――番からのその視線。
俺は猫の獣人だ。
そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。
だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。
なのに。
ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。
しかし、感じるのは常に視線のみ。
コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。
……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる