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5 出会い
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「何をしているんだ?」
「なっ…何だお前は!?」
「物凄い音がしたから来てみたら…これは大変だな」
一体誰が来たのか─確認したくても、まぶたが重たくて目が開けられない。
「お前には関係無いから、その女には触るぬぁーっ!!??」
「何しやがーあぁーっ!!」
ガツンッ─ガタガタッ───
「!!??」
ー一体、何が起こってるの!?ー
「今飛んで行った奴等は──って、この子大丈夫なのか!?」
「パッと見たところ、大丈夫そうだけど、急いで医者に診てもらったら方が良いだろうな。ただ……」
「黒色持ちか……一般の所より、俺達の所に連れて来た方が良さそうだね」
「そうだな…」
ー“俺達の所”とは……どこ?私は……どうなるの?ー
逃げないと─と思っているけど、体中が痛くて動けない。もう、このまま──と、意識が途切れかけた時
「綺麗な黒色の髪だな……」
そんな都合の良い言葉が聞こえたような気がした。
******
「ん………」
目を開けると、そこには普段見慣れないレースの天蓋があった。勿論、ウェント家の私の部屋に天蓋なんてものはない。ただただ寝るだけのベッドだ。
ーここは……何処?ー
「──なら、このまま俺達が───」
「その方が───あ、目が覚めた?」
ひょこっと私の目の前に顔を寄せて来たのは、白色の髪に紺碧色の瞳の、スラッとした男性だった。
ー綺麗な色の瞳だなぁー
「そう?ありがとう」
「──え?あ?あれ?」
どうやら、声に出てしまっていたみたい?
「大丈夫?見た目の怪我は手当をしたんだけど、どこか体で痛みがある所は無い?」
「え?あ?痛み?あっ!」
そうだ、買い物の帰りに馬車が倒れて……それで……って、この人達が、私の乗っていた馬車を襲撃して来た人達なら───と、今更ながら体がカタカタと震え出す。気を失う前に耳にしたのは、私を変態貴族に預けるとか何とか──
「どこか痛みが───って、そうか、まず先に言っておかなければいけなかったな。君を襲っていた連中は治安部隊に引き渡しておいたから。それで、気を失った君が黒色持ちだったから、取り敢えず俺達の邸に連れ帰って来て、医者に診てもらったんだ」
「あ…それじゃあ……」
『綺麗な黒色の髪だな……』と言ったのは、この人だった?それとも……幻聴だった?
「助けていただいて、ありがとうございました。少し、右肩に痛みはありますけど、他は何ともなさそうです」
馬車ごと倒れて、全身打ち付けて体中が痛かった筈なのに、痛みは右肩に少しあるだけで、寧ろ体が軽くなっている。いつも少し冷えた手足も、何となく温かい気がするのは……久し振りにフカフカの布団で寝たから?
「寝た………って、すみません、今、何時でしょうか!?」
帰りの約束をしていたのが夕方の4時。邸に帰った後は、夕食迄にお風呂場の掃除を言われていて、夕食迄に済まさなければいけなかった。それができていなければ、勿論夕食は食べられず、明日は罰としていつもより多くの仕事が科せられる。
「今は夜の7時だ。黒色持ちは珍しいから、直ぐに身元は分かったんだけど……君を診た医者に、ここで預かって様子をみた方が良いと言われたから、君の家には連絡だけやって、ここで寝てもらっていたんだ」
「あ………」
医者に診てもらった──体を見られたと言う事だ。
「わたし……」
「今は何も話さなくて良いよ。今はゆっくり休むと良い。ちなみに、俺達はこの国の者ではないんだ。そこに居る彼もそうだけど、俺達の国では黒色は珍しくはないし、偏見や差別は無いから安心してもらって良いよ」
そこに居る彼と言われて、その方を見ると、そこには黒色の髪と瞳の男の子が居た。髪と瞳の両方が黒色と言う人は初めて見た。その彼を見ても不快感なんてものはない。とても綺麗な黒色だ。
その彼は、私と目が合うとニッコリ微笑んで
「グウェインの言う通り、安心してゆっくり休むと良いよ。話はまた、落ち着いたらで」
「はい………」
本当は、このまま急いでウェント家へと帰った方が良いと言う事は分かっている。それでも、黒色持ちの私と目を合わせて微笑んでくれて、優しい声を掛けてくれた事が嬉しくて、お互い挨拶もまだで名前すら分からないのに安心してしまって、私はまた、そのまま眠ってしまった。
「よく…寝てるね」
「だな……」
「「…………」」
彼女を診察した医者が、扉を破壊する勢いでやって来た理由は、彼女の体に体罰の痕があったからだった。
『あんな幼い子に!この国はどうなっているの!?私が1から躾けて───』
『落ち着け!他国で問題を起こすな』
この国の黒色持ちへの扱いが良くなっていないと聞いてはいたが、ここ迄酷いものとは思ってもみなかった。
「上も、把握し切れてないんだろうね。一応報告はしておこう。それと、彼女が聞いていた同級生だろうから、それも込で相談してみるよ」
「それが良いな」
私が寝ている間に、私を取り巻く環境が少しずつ変わっていく事になっているとは──寝ていた私には、未だ知る由もなかった。
「なっ…何だお前は!?」
「物凄い音がしたから来てみたら…これは大変だな」
一体誰が来たのか─確認したくても、まぶたが重たくて目が開けられない。
「お前には関係無いから、その女には触るぬぁーっ!!??」
「何しやがーあぁーっ!!」
ガツンッ─ガタガタッ───
「!!??」
ー一体、何が起こってるの!?ー
「今飛んで行った奴等は──って、この子大丈夫なのか!?」
「パッと見たところ、大丈夫そうだけど、急いで医者に診てもらったら方が良いだろうな。ただ……」
「黒色持ちか……一般の所より、俺達の所に連れて来た方が良さそうだね」
「そうだな…」
ー“俺達の所”とは……どこ?私は……どうなるの?ー
逃げないと─と思っているけど、体中が痛くて動けない。もう、このまま──と、意識が途切れかけた時
「綺麗な黒色の髪だな……」
そんな都合の良い言葉が聞こえたような気がした。
******
「ん………」
目を開けると、そこには普段見慣れないレースの天蓋があった。勿論、ウェント家の私の部屋に天蓋なんてものはない。ただただ寝るだけのベッドだ。
ーここは……何処?ー
「──なら、このまま俺達が───」
「その方が───あ、目が覚めた?」
ひょこっと私の目の前に顔を寄せて来たのは、白色の髪に紺碧色の瞳の、スラッとした男性だった。
ー綺麗な色の瞳だなぁー
「そう?ありがとう」
「──え?あ?あれ?」
どうやら、声に出てしまっていたみたい?
「大丈夫?見た目の怪我は手当をしたんだけど、どこか体で痛みがある所は無い?」
「え?あ?痛み?あっ!」
そうだ、買い物の帰りに馬車が倒れて……それで……って、この人達が、私の乗っていた馬車を襲撃して来た人達なら───と、今更ながら体がカタカタと震え出す。気を失う前に耳にしたのは、私を変態貴族に預けるとか何とか──
「どこか痛みが───って、そうか、まず先に言っておかなければいけなかったな。君を襲っていた連中は治安部隊に引き渡しておいたから。それで、気を失った君が黒色持ちだったから、取り敢えず俺達の邸に連れ帰って来て、医者に診てもらったんだ」
「あ…それじゃあ……」
『綺麗な黒色の髪だな……』と言ったのは、この人だった?それとも……幻聴だった?
「助けていただいて、ありがとうございました。少し、右肩に痛みはありますけど、他は何ともなさそうです」
馬車ごと倒れて、全身打ち付けて体中が痛かった筈なのに、痛みは右肩に少しあるだけで、寧ろ体が軽くなっている。いつも少し冷えた手足も、何となく温かい気がするのは……久し振りにフカフカの布団で寝たから?
「寝た………って、すみません、今、何時でしょうか!?」
帰りの約束をしていたのが夕方の4時。邸に帰った後は、夕食迄にお風呂場の掃除を言われていて、夕食迄に済まさなければいけなかった。それができていなければ、勿論夕食は食べられず、明日は罰としていつもより多くの仕事が科せられる。
「今は夜の7時だ。黒色持ちは珍しいから、直ぐに身元は分かったんだけど……君を診た医者に、ここで預かって様子をみた方が良いと言われたから、君の家には連絡だけやって、ここで寝てもらっていたんだ」
「あ………」
医者に診てもらった──体を見られたと言う事だ。
「わたし……」
「今は何も話さなくて良いよ。今はゆっくり休むと良い。ちなみに、俺達はこの国の者ではないんだ。そこに居る彼もそうだけど、俺達の国では黒色は珍しくはないし、偏見や差別は無いから安心してもらって良いよ」
そこに居る彼と言われて、その方を見ると、そこには黒色の髪と瞳の男の子が居た。髪と瞳の両方が黒色と言う人は初めて見た。その彼を見ても不快感なんてものはない。とても綺麗な黒色だ。
その彼は、私と目が合うとニッコリ微笑んで
「グウェインの言う通り、安心してゆっくり休むと良いよ。話はまた、落ち着いたらで」
「はい………」
本当は、このまま急いでウェント家へと帰った方が良いと言う事は分かっている。それでも、黒色持ちの私と目を合わせて微笑んでくれて、優しい声を掛けてくれた事が嬉しくて、お互い挨拶もまだで名前すら分からないのに安心してしまって、私はまた、そのまま眠ってしまった。
「よく…寝てるね」
「だな……」
「「…………」」
彼女を診察した医者が、扉を破壊する勢いでやって来た理由は、彼女の体に体罰の痕があったからだった。
『あんな幼い子に!この国はどうなっているの!?私が1から躾けて───』
『落ち着け!他国で問題を起こすな』
この国の黒色持ちへの扱いが良くなっていないと聞いてはいたが、ここ迄酷いものとは思ってもみなかった。
「上も、把握し切れてないんだろうね。一応報告はしておこう。それと、彼女が聞いていた同級生だろうから、それも込で相談してみるよ」
「それが良いな」
私が寝ている間に、私を取り巻く環境が少しずつ変わっていく事になっているとは──寝ていた私には、未だ知る由もなかった。
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