裏切られた聖女は、捨てられた悪役令嬢を拾いました。それが、何か?

みん

文字の大きさ
5 / 58

5 理想の聖女

しおりを挟む
「名は“ミヅキ”18。見た目が幼いので、驚きましたが、成人年齢で良かったです。それと、能力についてですが、聖女としての“癒やし”と“浄化”のレベルが、今の段階で高目なので、訓練次第では歴代一のレベルになるかもしれません。ただ……他の魔力は持ち合わせていないようです」
「魔力を持ち合わせていない?それは本当か?過去の聖女達は、2つ3つの魔力を持ち合わせていただろう?」


千花についての報告を上げているのは、この国の魔道士団長と大神官。そして、報告を受けているのは国王だ。

「はい。過去の聖女様達は、いくつかの種類の魔力を持ち合わせていましたが、ミヅキに関しては持ち合わせは無く、その分、聖女としての能力が特化しているのかもしれません。」

「そうか…………聖女としての能力が高い事は素晴らしい事だし、この国の為にも有り難い事ではあるが……」
「「……………」」

国王は、その先の言葉は呑み込んだ。しかし、魔道士団長も、大神官も、その先の言葉を予想するには簡単だった。

浄化の旅が終わった後の聖女の──だ。


過去の聖女達は、必ず魔力を持ち合わせていた。それも、この国の魔道士達よりも優れた力を持っていた。そして、殆どの聖女が浄化の旅が終わった後、この国に留まり、王族や高位貴族の子息と結婚をして、より強い魔力持ちの子をこの国に誕生させて来ていた。特に、王族と結婚して生まれた子は、かなり強い魔力を持って生まれる為、それが更に、王家、国の安寧へと繋がっていたのである。
それが、今回召喚された聖女には、魔力が無い。
聖女としての能力は、子に引き継がれる事はない。コレはあくまでも、神が、その器に耐え得る者に与える能力であるからだ。

国王は暫く目を閉じた後、座っている椅子の肘置きを、人差し指でトントントンと叩いた後

「兎に角、予定通り、浄化の旅のメンバーとの訓練を始めてくれ。ただ、年齢的にも考慮して……ルドヴィクではなく、ミリウスをメンバーにするように伝えてくれ」
「承知しました」

そう言うと、国王は部屋から下がり、魔道士団長と大神官もその部屋から退室した。





ー何と言う身勝手な思考だろうかー



そう思っているのは、大神官─イシュメル。
オールデン神が“面白い”と言っていた大神官だ。
彼は無能ではなく、オールデン神の言葉が上手く聞き取れないの、少し残念だが、信仰心はとてもあつい…あつ過ぎるぐらいの神官である。



魔力を持ち合わせてはいなくとも、異世界からやって来てこの世界を助けてくれるのだ。国の繁栄を望む気持ちも分からなくはないが、聖女とは、感謝するべき存在であって、見下すような存在ではない。

そんな思考をする者が、同行メンバーに居るならば─

「注意を払う必要が…ありそうだ」

大神官はそう呟くと、足早に千花の居る部屋へと向かった。







******

「ミヅキ、そろそろ休憩にしましょう」
「分かりました」

早いもので、私がこの世界にやって来てから5ヶ月。最初の1ヶ月は、この世界に慣れる為にこの世界の勉強をしたり、聖女としてのお披露目があったりした。そして、少しずつ慣れて来た頃から、聖女としての能力を使いこなせるように、更に能力を引き出す為の訓練が始まった。
最初の頃は、いまいち力の使い方が分からなくて大変だったけど、大神官─イシュメルさんのちょっとした助言で力の感覚が分かるようになり、そこからは順調にレベルアップしている─と思う。

その大神官イシュメルさん。私の予想とは違い、とっても良い人だった。
私が困っていると、ソッと側に来て気遣ってくれたり、助けてくれたりする。私にとっては、この世界でのお父さんみたいな存在かもしれない。

ー問題があるとすれば、浄化の旅のメンバーだろうか……ー

今、私に声をかけてくれたのは女騎士で聖女わたしの護衛をしてくれているジェナさん。赤毛の長い髪にキリッとした茶色の瞳のお姉さんタイプの25歳。で言うと私は26歳だから、私の方が年上なんだけど……


私がお願いをした1つ──

“私の見た目を、にする事”

理想かつ、過去の聖女の平均的な容姿。



『くくっ…其方は、本当に面白い事を願うのだな…』



オールデンさんが笑いながらパチンと指を鳴らせば─


私は、肩下辺りまでの長さのサラサラな黒髪に、真っ黒な瞳をした18歳になっていた。勿論、は変わっていない。顔のパーツは私のままで、髪色や髪型、瞳の色が変わり、若返っただけ。18歳の肌はピチピチだ。

理想が18歳。私の実年齢26歳のまま転移してたら……どうなっていたんだろうか?






しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

処理中です...