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5 理想の聖女
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「名は“ミヅキ”18歳。見た目が幼いので、驚きましたが、成人年齢で良かったです。それと、能力についてですが、聖女としての“癒やし”と“浄化”のレベルが、今の段階で高目なので、訓練次第では歴代一のレベルになるかもしれません。ただ……他の魔力は持ち合わせていないようです」
「魔力を持ち合わせていない?それは本当か?過去の聖女達は、2つ3つの魔力を持ち合わせていただろう?」
千花についての報告を上げているのは、この国の魔道士団長と大神官。そして、報告を受けているのは国王だ。
「はい。過去の聖女様達は、いくつかの種類の魔力を持ち合わせていましたが、ミヅキに関しては持ち合わせは無く、その分、聖女としての能力が特化しているのかもしれません。」
「そうか…………聖女としての能力が高い事は素晴らしい事だし、この国の為にも有り難い事ではあるが……」
「「……………」」
国王は、その先の言葉は呑み込んだ。しかし、魔道士団長も、大神官も、その先の言葉を予想するには簡単だった。
浄化の旅が終わった後の聖女の扱い──だ。
過去の聖女達は、必ず魔力を持ち合わせていた。それも、この国の魔道士達よりも優れた力を持っていた。そして、殆どの聖女が浄化の旅が終わった後、この国に留まり、王族や高位貴族の子息と結婚をして、より強い魔力持ちの子をこの国に誕生させて来ていた。特に、王族と結婚して生まれた子は、かなり強い魔力を持って生まれる為、それが更に、王家、国の安寧へと繋がっていたのである。
それが、今回召喚された聖女には、魔力が無い。
聖女としての能力は、子に引き継がれる事はない。コレはあくまでも、神が、その器に耐え得る者に与える能力であるからだ。
国王は暫く目を閉じた後、座っている椅子の肘置きを、人差し指でトントントンと叩いた後
「兎に角、予定通り、浄化の旅のメンバーとの訓練を始めてくれ。ただ、年齢的にも考慮して……ルドヴィクではなく、ミリウスをメンバーにするように伝えてくれ」
「承知しました」
そう言うと、国王は部屋から下がり、魔道士団長と大神官もその部屋から退室した。
ー何と言う身勝手な思考だろうかー
そう思っているのは、大神官─イシュメル。
オールデン神が“面白い”と言っていた大神官だ。
彼は無能ではなく、オールデン神の言葉が上手く聞き取れないだけの、少し残念だが、信仰心はとてもあつい…あつ過ぎるぐらいの神官である。
魔力を持ち合わせてはいなくとも、異世界からやって来てこの世界を助けてくれるのだ。国の繁栄を望む気持ちも分からなくはないが、聖女とは、感謝するべき存在であって、見下すような存在ではない。
そんな思考をする者が、同行メンバーに居るならば─
「注意を払う必要が…ありそうだ」
大神官はそう呟くと、足早に千花の居る部屋へと向かった。
******
「ミヅキ、そろそろ休憩にしましょう」
「分かりました」
早いもので、私がこの世界にやって来てから5ヶ月。最初の1ヶ月は、この世界に慣れる為にこの世界の勉強をしたり、聖女としてのお披露目があったりした。そして、少しずつ慣れて来た頃から、聖女としての能力を使いこなせるように、更に能力を引き出す為の訓練が始まった。
最初の頃は、いまいち力の使い方が分からなくて大変だったけど、あの大神官─イシュメルさんのちょっとした助言で力の感覚が分かるようになり、そこからは順調にレベルアップしている─と思う。
その大神官イシュメルさん。私の予想とは違い、とっても良い人だった。
私が困っていると、ソッと側に来て気遣ってくれたり、助けてくれたりする。私にとっては、この世界でのお父さんみたいな存在かもしれない。
ー問題があるとすれば、浄化の旅のメンバーだろうか……ー
今、私に声をかけてくれたのは女騎士で聖女の護衛をしてくれているジェナさん。赤毛の長い髪にキリッとした茶色の瞳のお姉さんタイプの25歳。実年齢で言うと私は26歳だから、私の方が年上なんだけど……
私がお願いをした1つ──
“私の見た目を、理想の聖女にする事”
理想かつ、過去の聖女の平均的な容姿。
『くくっ…其方は、本当に面白い事を願うのだな…』
オールデンさんが笑いながらパチンと指を鳴らせば─
私は、肩下辺りまでの長さのサラサラな黒髪に、真っ黒な瞳をした18歳になっていた。勿論、土台は変わっていない。顔のパーツは私のままで、髪色や髪型、瞳の色が変わり、若返っただけ。18歳の肌はピチピチだ。
理想が18歳。私の実年齢26歳のまま転移してたら……どうなっていたんだろうか?
「魔力を持ち合わせていない?それは本当か?過去の聖女達は、2つ3つの魔力を持ち合わせていただろう?」
千花についての報告を上げているのは、この国の魔道士団長と大神官。そして、報告を受けているのは国王だ。
「はい。過去の聖女様達は、いくつかの種類の魔力を持ち合わせていましたが、ミヅキに関しては持ち合わせは無く、その分、聖女としての能力が特化しているのかもしれません。」
「そうか…………聖女としての能力が高い事は素晴らしい事だし、この国の為にも有り難い事ではあるが……」
「「……………」」
国王は、その先の言葉は呑み込んだ。しかし、魔道士団長も、大神官も、その先の言葉を予想するには簡単だった。
浄化の旅が終わった後の聖女の扱い──だ。
過去の聖女達は、必ず魔力を持ち合わせていた。それも、この国の魔道士達よりも優れた力を持っていた。そして、殆どの聖女が浄化の旅が終わった後、この国に留まり、王族や高位貴族の子息と結婚をして、より強い魔力持ちの子をこの国に誕生させて来ていた。特に、王族と結婚して生まれた子は、かなり強い魔力を持って生まれる為、それが更に、王家、国の安寧へと繋がっていたのである。
それが、今回召喚された聖女には、魔力が無い。
聖女としての能力は、子に引き継がれる事はない。コレはあくまでも、神が、その器に耐え得る者に与える能力であるからだ。
国王は暫く目を閉じた後、座っている椅子の肘置きを、人差し指でトントントンと叩いた後
「兎に角、予定通り、浄化の旅のメンバーとの訓練を始めてくれ。ただ、年齢的にも考慮して……ルドヴィクではなく、ミリウスをメンバーにするように伝えてくれ」
「承知しました」
そう言うと、国王は部屋から下がり、魔道士団長と大神官もその部屋から退室した。
ー何と言う身勝手な思考だろうかー
そう思っているのは、大神官─イシュメル。
オールデン神が“面白い”と言っていた大神官だ。
彼は無能ではなく、オールデン神の言葉が上手く聞き取れないだけの、少し残念だが、信仰心はとてもあつい…あつ過ぎるぐらいの神官である。
魔力を持ち合わせてはいなくとも、異世界からやって来てこの世界を助けてくれるのだ。国の繁栄を望む気持ちも分からなくはないが、聖女とは、感謝するべき存在であって、見下すような存在ではない。
そんな思考をする者が、同行メンバーに居るならば─
「注意を払う必要が…ありそうだ」
大神官はそう呟くと、足早に千花の居る部屋へと向かった。
******
「ミヅキ、そろそろ休憩にしましょう」
「分かりました」
早いもので、私がこの世界にやって来てから5ヶ月。最初の1ヶ月は、この世界に慣れる為にこの世界の勉強をしたり、聖女としてのお披露目があったりした。そして、少しずつ慣れて来た頃から、聖女としての能力を使いこなせるように、更に能力を引き出す為の訓練が始まった。
最初の頃は、いまいち力の使い方が分からなくて大変だったけど、あの大神官─イシュメルさんのちょっとした助言で力の感覚が分かるようになり、そこからは順調にレベルアップしている─と思う。
その大神官イシュメルさん。私の予想とは違い、とっても良い人だった。
私が困っていると、ソッと側に来て気遣ってくれたり、助けてくれたりする。私にとっては、この世界でのお父さんみたいな存在かもしれない。
ー問題があるとすれば、浄化の旅のメンバーだろうか……ー
今、私に声をかけてくれたのは女騎士で聖女の護衛をしてくれているジェナさん。赤毛の長い髪にキリッとした茶色の瞳のお姉さんタイプの25歳。実年齢で言うと私は26歳だから、私の方が年上なんだけど……
私がお願いをした1つ──
“私の見た目を、理想の聖女にする事”
理想かつ、過去の聖女の平均的な容姿。
『くくっ…其方は、本当に面白い事を願うのだな…』
オールデンさんが笑いながらパチンと指を鳴らせば─
私は、肩下辺りまでの長さのサラサラな黒髪に、真っ黒な瞳をした18歳になっていた。勿論、土台は変わっていない。顔のパーツは私のままで、髪色や髪型、瞳の色が変わり、若返っただけ。18歳の肌はピチピチだ。
理想が18歳。私の実年齢26歳のまま転移してたら……どうなっていたんだろうか?
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