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「そうすると、段々甘さが含まれる視線や言葉が煩わしくなって来て、素で居られるミヅキの側が心地良く感じるようになった。それでも、ミヅキが18歳だったから、恋愛感情とまではいってなかったと思う。だけど…ミヅキが居なくなって後悔して、チカとして再会した時には、嫌われてはないと思うが好かれてる事もないと分かっていたけど、もう逃がすものかと思った。今すぐにでもチカが欲しいけど、ゆっくりでも良いから俺の事を考えてくれないか?」
あの、いつも自信満々なブラントさんが、私に懇願するような視線を向けたまま、持ち上げている私の手の甲に軽く口を付ける。
「私、公爵夫人なんて無理です」
「チカが俺を選んでくれるなら、騎士爵位だけで公爵は返上するとルドヴィクには言ってある」
「私、アルスティアでスローライフがしたいんです」
「流石に騎士は辞められないけど、魔法陣があるから問題無い」
「私、イケメンが…苦手なんです」
「それは、俺がイケメンだと思ってくれていると言う事だな?それはチカに慣れてもらうしかないけど、それは…“イケメンが嫌”なだけで“俺が嫌”と言う訳じゃないって事?」
「………嫌いでは…ないですけど……」
と言うと、ブラントさんが嬉しそうに笑った顔の破壊力が凄過ぎる。
この顔に慣れる日が来るんだろうか?
ブラントさんを信じられるか?
それは多分、信じられような気がする。
それじゃあ、何が駄目なのか。
「この世界では普通の事なのかもしれないけど、付き合ってもないのにいきなり結婚とか婚約とは…私には無理です。それに、正直に言いますけど、私、ブラントさんの事殆ど知りませんからね。知ってるのは、表向きは紳士の腹黒で、数年前迄は遊んでたって事ぐらいですから。表裏が無い分、信用してますけど。でも、流石にそれだけでは…」
「分かった。それじゃあ、一先ず結婚は置いといて友達として付き合うってのはどう?それで、俺の事を知ってもらってから考えて欲しい」
「……分かり…ました。でも、付き合ったからと言っても、必ずしも結婚を受け入れるとは限りませんよ?」
「分かってる。でも……チカも覚悟しておいて欲しい。俺はチカを手に入れる為には遠慮しないから。」
「っ!!??」
そう言ってからまた、私の手の甲にキスをするブラントさんの色気が更に増したのは、きっと気のせいじゃない。ブラントさんは私とは違って、女性の扱いには慣れているし、自分の武器が何かなのも解っている。そんなブラントさんに、私はある意味挑戦状を叩きつけてしまったようなものだ。
ーあれ?私、やっちゃった?ー
******
「オレンジ色のカーネーションは、“愛してる”ですよ」
「リン………」
あの日から1ヶ月。
あれからも毎日花が届けられていて、私よりもリンとフラムが嬉しそうにその花を見ている。
こうして、私の作ったケーキを食べて、リンの淹れてくれた紅茶を飲みながらゆっくりお喋りをするのは1週間ぶりだ。あの記念パーティー以降、リンは色んなお茶会に誘われるようになり、全てとはいかないが、そのお茶会に行く事が増えた。勿論、その合間には王妃教育も受けているから、とても忙しそうにしている。
私はと言うと、週3、4日、メイジーさんのパン屋でバイトをしている。やっぱり働く事は楽しい。因みに、メロンパンの売れ行きも好調だ。
「王城では、“ついにあのブラント=カールストンに恋人ができた”って言う話題で持ち切りですよ?」
「何で!?」
王都でブラントさんと会ったりした事もないのに、何故王城でそんな話が出ているのか分からない。
「毎日花を買っているけど自室には飾っていない。休日になるとお菓子等を買っている姿をよく見るけど、王都内で誰かと会っている姿は見ない。地方へ視察なんかに行った時は必ずお土産を買ったりするけど、王城で誰かに渡している所を見た事がない。極めつけが、ブラント様が、毎日淡い青緑色のピアスを着けていると言う事で、“ブラント様は、王都ではない所に住んでいる恋人がいるのでは?”と言う話になってるんです」
「淡い青緑色の……ピアス?」
ピアスの色が淡い青緑色なら恋人が居ると言う事になるんだろうか?首を傾げて考える。
「ひょっとして、チカさんは知らずに着けてますか?」
「え?何を?」
「チカさんが毎日着けている、その葵色のピアスですけど……」
「ブラントさんからお土産として貰って、この薄紫色が綺麗で気に入ってるから着けてるんだけど……何かおかしい?」
と言うと、リンは少し悩んだような顔をした後覚悟を決めたような顔になった。ひょっとしたら似合ってなかったのかな?
「気のある異性へアクセサリーをプレゼントをする時、自分の色の石が付いた物を選ぶんです。自分の色を、相手に身に纏って欲しいから。それで、その相手がそれを身に着ければ、その相手も受入れたと言う事になります。だから…その…私、ブラント様から頂いた、ブラント様の色の付いたピアスをチカさんが毎日着けているから……てっきり2人はそう言う仲なんだと思っていました」
「………………」
ーそんな事、聞いてませんけど?ー
あの、いつも自信満々なブラントさんが、私に懇願するような視線を向けたまま、持ち上げている私の手の甲に軽く口を付ける。
「私、公爵夫人なんて無理です」
「チカが俺を選んでくれるなら、騎士爵位だけで公爵は返上するとルドヴィクには言ってある」
「私、アルスティアでスローライフがしたいんです」
「流石に騎士は辞められないけど、魔法陣があるから問題無い」
「私、イケメンが…苦手なんです」
「それは、俺がイケメンだと思ってくれていると言う事だな?それはチカに慣れてもらうしかないけど、それは…“イケメンが嫌”なだけで“俺が嫌”と言う訳じゃないって事?」
「………嫌いでは…ないですけど……」
と言うと、ブラントさんが嬉しそうに笑った顔の破壊力が凄過ぎる。
この顔に慣れる日が来るんだろうか?
ブラントさんを信じられるか?
それは多分、信じられような気がする。
それじゃあ、何が駄目なのか。
「この世界では普通の事なのかもしれないけど、付き合ってもないのにいきなり結婚とか婚約とは…私には無理です。それに、正直に言いますけど、私、ブラントさんの事殆ど知りませんからね。知ってるのは、表向きは紳士の腹黒で、数年前迄は遊んでたって事ぐらいですから。表裏が無い分、信用してますけど。でも、流石にそれだけでは…」
「分かった。それじゃあ、一先ず結婚は置いといて友達として付き合うってのはどう?それで、俺の事を知ってもらってから考えて欲しい」
「……分かり…ました。でも、付き合ったからと言っても、必ずしも結婚を受け入れるとは限りませんよ?」
「分かってる。でも……チカも覚悟しておいて欲しい。俺はチカを手に入れる為には遠慮しないから。」
「っ!!??」
そう言ってからまた、私の手の甲にキスをするブラントさんの色気が更に増したのは、きっと気のせいじゃない。ブラントさんは私とは違って、女性の扱いには慣れているし、自分の武器が何かなのも解っている。そんなブラントさんに、私はある意味挑戦状を叩きつけてしまったようなものだ。
ーあれ?私、やっちゃった?ー
******
「オレンジ色のカーネーションは、“愛してる”ですよ」
「リン………」
あの日から1ヶ月。
あれからも毎日花が届けられていて、私よりもリンとフラムが嬉しそうにその花を見ている。
こうして、私の作ったケーキを食べて、リンの淹れてくれた紅茶を飲みながらゆっくりお喋りをするのは1週間ぶりだ。あの記念パーティー以降、リンは色んなお茶会に誘われるようになり、全てとはいかないが、そのお茶会に行く事が増えた。勿論、その合間には王妃教育も受けているから、とても忙しそうにしている。
私はと言うと、週3、4日、メイジーさんのパン屋でバイトをしている。やっぱり働く事は楽しい。因みに、メロンパンの売れ行きも好調だ。
「王城では、“ついにあのブラント=カールストンに恋人ができた”って言う話題で持ち切りですよ?」
「何で!?」
王都でブラントさんと会ったりした事もないのに、何故王城でそんな話が出ているのか分からない。
「毎日花を買っているけど自室には飾っていない。休日になるとお菓子等を買っている姿をよく見るけど、王都内で誰かと会っている姿は見ない。地方へ視察なんかに行った時は必ずお土産を買ったりするけど、王城で誰かに渡している所を見た事がない。極めつけが、ブラント様が、毎日淡い青緑色のピアスを着けていると言う事で、“ブラント様は、王都ではない所に住んでいる恋人がいるのでは?”と言う話になってるんです」
「淡い青緑色の……ピアス?」
ピアスの色が淡い青緑色なら恋人が居ると言う事になるんだろうか?首を傾げて考える。
「ひょっとして、チカさんは知らずに着けてますか?」
「え?何を?」
「チカさんが毎日着けている、その葵色のピアスですけど……」
「ブラントさんからお土産として貰って、この薄紫色が綺麗で気に入ってるから着けてるんだけど……何かおかしい?」
と言うと、リンは少し悩んだような顔をした後覚悟を決めたような顔になった。ひょっとしたら似合ってなかったのかな?
「気のある異性へアクセサリーをプレゼントをする時、自分の色の石が付いた物を選ぶんです。自分の色を、相手に身に纏って欲しいから。それで、その相手がそれを身に着ければ、その相手も受入れたと言う事になります。だから…その…私、ブラント様から頂いた、ブラント様の色の付いたピアスをチカさんが毎日着けているから……てっきり2人はそう言う仲なんだと思っていました」
「………………」
ーそんな事、聞いてませんけど?ー
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