【R18】新米女王と性奴隷騎士〜お見合いしたら相手が女王志望でした。頑張って夫婦になります〜

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#魔物襲来

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 教授のよう──と思った男性は本当にアイリーンの指導教授だった。フェリクス卿とは学生時代の同期であるらしく、やはりその縁で見合い話が回ってきたようだ。

 当のアイリーンとの会話は弾まなかった。
 重鎮と仲人の教授が場を和ませようと話題を振るが、アイリーンの反応は淡々として、会話はすぐに終わってしまった。
 カリオンは作り笑顔を浮かべながら、穏やかに相槌を打ち続ける。
 彼女がこちらをまともに見てくれない理由も、なぜこんなにも警戒しているのかもわからず、手探りで対応していた。

(……まあ、破談だな)

 と、あきらめかけたその時。

「お連れ様がお見えです」

 控室の扉が、音もなく開かれる。

(今日は本人だけじゃ……?)

 カリオンが疑問に思う間もなく、姿を現したのは、流行的な趣味のいいドレスを着た中年の女性だった。
 丁寧に化粧を施し、笑みを浮かべて堂々と歩いてくるその姿は、明らかに貴族の婦人。
 誰かは聞かなくてもわかった。一目で母親とわかるほど、彼女はアイリーンに似ていた。

 しかし当のアイリーンにとっても突然の身内の登場は予想外のものだったようだ。顔は青ざめ、唇が震えている。

「なんで……誰にも教えてないのに」

 まるでストーカーが現れたかのような反応だった。
 アイリーンの母親は娘の様子になど興味はないようで、自分こそが主役のように振る舞った。

「お邪魔してごめんなさいね。この子ったら何も言わずにお見合いなんてするものですから。私は許可していないんです。娘は引き取りますわ」

 聞かされていなかった話に、カリオンはフェリクス卿を見た。彼も動揺しているところを見ると、同じく聞かされていなかったようだ。
 アイリーン側の仲人であるニコロ・ペンドット教授が、やんわりと母親を制した。

「彼女は成人しています。母親といえども、頭ごなしに否定するのは――」

「こんな出来損ないでも当家の娘です。変な家に嫁がれたらうちの家格が下がりますわ」

 カリオンは絶句した。

(実の娘を出来損ないだと……?)

 謙遜ではなく、明らかに侮蔑のにじんだ声だった。釣書を見るだけでもアイリーンがどんなに優秀で、努力家なのかは一目瞭然だった。なのに彼女は娘の功績や人格を一切認めていない。

「お言葉ですな。ここにるのは将来有望な、セラフィータ家の令嬢にも恥ずかしく相手として私が選んだ男です。それを『変な家』? 『うちの家格が下がる』? ずいぶんと愚弄されたものですな!」

 フェリクス卿が声を荒げた。いつもにこにこした顔をしているのに、腐っても騎士団の重鎮。その迫力に毒母は完全に気圧されていた。

「セラフィータ家は王家にも嫁いだ由緒ある家です! それを……っ」

「八代も前のご先祖様にすがって偉そうに」

 アイリーンが吐き捨てた。その瞬間、毒母はカッとなって娘に手を上げた。

「あなたがそんな恥知らずだから、我が家が侮辱されるのよ!!」

 反射的にカリオンは毒母を取り押さえた。諦めることなく彼女は娘を侮辱した。

「出来損ないのくせに男をたらしこむことだけは優秀なんだから! 放すようにこの男に言いなさい! またお兄様に折檻されたいの!?」

 聞くに耐えないので、カリオンはアイリーンに尋ねた。

「どうする? 君が望むなら警察に引き渡すよ」

 なおも毒母はわめき続けた。

「またウソばかりついてまわりを騙してるんでしょう! 本当に嫌な子! 生むんじゃなかったわ! 少しは親の言うことを聞いたらどうなの! 家の名に泥を塗るような真似ばかりして、恥ずかしいと思わないの!?」

「恥ずかしいのはあなただ。少し黙りなさい。でないと本当に通報しますよ」

 教授がぴしゃりと言って毒母を黙らせた。

 気分が悪そうに口元を押さえて、アイリーンは飛び出していった。

「フェリクス卿――」

 とっさに上司を見ると、「構わないから行け」と目で頷かれた。カリオンは乱暴に毒母を放すと、アイリーンの後を追った。
 走りながら、カリオンの脳裏に、あの仏頂面の少女の、傷ついた目がよぎる。

(どれだけのことを我慢してきたんだ)

 自分はまだアイリーン・セラフィータという女性のことをほとんど知らない。
 けれど、たった今、自分がするべきことは決まっていた。

 ──あの子を一人にしちゃいけない。
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