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#新婚初夜
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(行きたくないなぁ……)
夜。まだ荷解きされていない段ボールが積まれた自室で、カリオンはベッドに横たわりながら思い悩んでいた。
引っ越しは早いに越したことはなかったのだが、問題はタイミングだ。カリオンは明日から2週間の長期任務だった。
西部方面合同演習。カリオンが所属する特殊遊撃部隊を含む、4部隊による戦術魔法の連携と展開速度に関する合同演習だ。
半年以上前から予定されていた国家主導の演習であり、カリオンは「現場指揮補佐」として参加することが決まってため、代打がきかない。
この演習の結果は、来年度の戦術教本改訂に反映されるため、ミスがあると全体に影響が出る。
結婚したので休みたい――とは言えない出張だ。
(アイリーンを置いていくの死ぬほど不安だ……)
まったく生活力のないアイリーンが、カリオンのいない二週間、家具も生活魔道具もそろっていない家で、一人でやっていけるのだろうか。
冷蔵庫さえ「たぶん使わないから私はいらない」と言い放つ人なのに。
(俺が戻るまで、大学の寮にいてもらったほうが良かったかな……学食もあるし。いやでも――)
しばらく考え込んだが、今更どうしようもないとしか結論が出ないので、カリオンは思考を切り替えた。
(なるべく毎日連絡して、食事だけはちゃんとするよう、しつこく言おう)
うざがられるかもしれないが、庇護者の責任なので受け入れてもらうしかない。夫というより親みたいだが。
ふと、廊下に気配を感じてカリオンは体を起こした。
(アイリーン? もう休んだんじゃ……?)
引っ越しで疲れたようで、缶詰とパンの簡単な夕食の後にはもう、うとうとしていたので自室で休むよう言ったのだ。アイリーンは素直に従って、その後は静かだから眠ったのだと思ってた。
(環境が変わって眠れないとか? 寂しい……っていうタイプじゃないだろうし)
声をかけるべきか悩んでいたら、バーンとドアが開けられた。
「さあ、やるわよ!」
勇ましく宣言したアイリーンは、黒いボンテージドレス姿で、その腰には見るからにえげつない――太くてごつい――装着型の魔道具をつけていた。
「…………」
カリオンは眉を軽く上げ、じっとアイリーンの姿を見つめた。
(えげつないの来たなぁ……)
衝撃とともに、妙な興味が湧いてくる。
どういう仕組みなのか、純粋に知りたかった。
「これ感覚あるの?」
魔道具の中には魔力を通して自分の一部のように出来るものがある。アイリーンのペニバンもそうなのだろうか。
「か、勝手に触らないで!」
無邪気に伸ばした手が装着魔道具に触れると、アイリーンは顔を真っ赤にして後ずさった。
「結構敏感なんだ?」
「うるさい! 黙って奴隷らしく受け入れなさい!」
怒鳴るアイリーンには迫力があるが、どこか残念な感じが漂う。
「では発言よろしいでしょうか、女王様」
カリオンが律儀に片手を挙げた。
アイリーンは若干警戒しつつも頷く。
「それ、どう見てもいきなり入りません。無理です」
静かな口調で理路整然と告げると、アイリーンはぎくりとして立ち止まった。
「俺は奴隷だけど、一応夫婦だからね? 俺にも拒否権をください」
その言葉に、アイリーンはあからさまにしゅんとして視線を落とした。
「……だ、だって……」
「わかるよ、気合入れて準備してくれたのは。でもちょっと順序ってものが……」
カリオンは苦笑しながら立ち上がり、アイリーンに一歩近づいた。
警戒するアイリーンの前に膝をつき、下から見上げる。
「女王様? まずは基本的なルールを決めようか」
「ルール?」
「夫婦でも嫌がることはしない。初めてのプレイは、相手の了解を取ってから」
「これ……嫌ってこと?」
えげつないペニバンに視線を向けて――膝をついていると眼の前に来るので余計に威圧感が大きい――、カリオンは穏やかに、けれどはっきり言った。
「ちょっと無理かな。俺、そっちの願望ないし」
アイリーンはしゅんとした。
肩を落として落ち込むアイリーンが可愛らしくて、カリオンは笑いをこらえきれない。
「何よ、奴隷のくせに生意気!」
「奴隷だけど君の夫だからね。ちゃんと話し合って決めるのが大事だよ」
カリオンは微笑んでアイリーンの手を握った。
「でも、ありがとう」
「えっ?」
「引っ越しで疲れてるのに、こうして来てくれるとは思わなかった」
優しく指を撫でると、アイリーンの頬が真っ赤になっていく。
「明日から任務でしばらくいないから、寂しいと思ってくれた?」
「そ、そんなわけ……!」
「そうだよね。わかってる」
アイリーンはうろたえ、カリオンの手をぎゅっと握り返した。
「きょ、今日が新婚初夜だから、来ないといけないと思っただけ!」
「義務感なのか……寂しいなぁ」
大げさに傷ついた振りをすると、アイリーンは動揺して視線をさまよわせた。
「俺は女王様に調教してもらうの楽しみにしてたのに、女王様は義務感なんだね」
「そ、そういうわけじゃないけど……っ」
「じゃあ、俺の調教、楽しみにしてくれてた?」
「楽しみというか……失敗したらどうしようと思って――」
消え入りそうな小さな声だった。自信のない俺の女王様は可愛い――そんな風に思ってしまう。
「初心者同士、失敗していこうよ。急な結婚だったんだから、ゆっくりやっていこう」
両手を握って言い聞かせると、アイリーンはほっとしたように頷き、装着型の魔道具を外した。
「……ドレス可愛いね。俺のために着てくれて嬉しい」
「……こういうの好きなの?」
「奥さんが、自分のために勝負服着て夜中に来てくれて、嬉しくない夫はいないよ?」
頬にキスすると、恥ずかしかったのか、アイリーンは横を向いた。
夜。まだ荷解きされていない段ボールが積まれた自室で、カリオンはベッドに横たわりながら思い悩んでいた。
引っ越しは早いに越したことはなかったのだが、問題はタイミングだ。カリオンは明日から2週間の長期任務だった。
西部方面合同演習。カリオンが所属する特殊遊撃部隊を含む、4部隊による戦術魔法の連携と展開速度に関する合同演習だ。
半年以上前から予定されていた国家主導の演習であり、カリオンは「現場指揮補佐」として参加することが決まってため、代打がきかない。
この演習の結果は、来年度の戦術教本改訂に反映されるため、ミスがあると全体に影響が出る。
結婚したので休みたい――とは言えない出張だ。
(アイリーンを置いていくの死ぬほど不安だ……)
まったく生活力のないアイリーンが、カリオンのいない二週間、家具も生活魔道具もそろっていない家で、一人でやっていけるのだろうか。
冷蔵庫さえ「たぶん使わないから私はいらない」と言い放つ人なのに。
(俺が戻るまで、大学の寮にいてもらったほうが良かったかな……学食もあるし。いやでも――)
しばらく考え込んだが、今更どうしようもないとしか結論が出ないので、カリオンは思考を切り替えた。
(なるべく毎日連絡して、食事だけはちゃんとするよう、しつこく言おう)
うざがられるかもしれないが、庇護者の責任なので受け入れてもらうしかない。夫というより親みたいだが。
ふと、廊下に気配を感じてカリオンは体を起こした。
(アイリーン? もう休んだんじゃ……?)
引っ越しで疲れたようで、缶詰とパンの簡単な夕食の後にはもう、うとうとしていたので自室で休むよう言ったのだ。アイリーンは素直に従って、その後は静かだから眠ったのだと思ってた。
(環境が変わって眠れないとか? 寂しい……っていうタイプじゃないだろうし)
声をかけるべきか悩んでいたら、バーンとドアが開けられた。
「さあ、やるわよ!」
勇ましく宣言したアイリーンは、黒いボンテージドレス姿で、その腰には見るからにえげつない――太くてごつい――装着型の魔道具をつけていた。
「…………」
カリオンは眉を軽く上げ、じっとアイリーンの姿を見つめた。
(えげつないの来たなぁ……)
衝撃とともに、妙な興味が湧いてくる。
どういう仕組みなのか、純粋に知りたかった。
「これ感覚あるの?」
魔道具の中には魔力を通して自分の一部のように出来るものがある。アイリーンのペニバンもそうなのだろうか。
「か、勝手に触らないで!」
無邪気に伸ばした手が装着魔道具に触れると、アイリーンは顔を真っ赤にして後ずさった。
「結構敏感なんだ?」
「うるさい! 黙って奴隷らしく受け入れなさい!」
怒鳴るアイリーンには迫力があるが、どこか残念な感じが漂う。
「では発言よろしいでしょうか、女王様」
カリオンが律儀に片手を挙げた。
アイリーンは若干警戒しつつも頷く。
「それ、どう見てもいきなり入りません。無理です」
静かな口調で理路整然と告げると、アイリーンはぎくりとして立ち止まった。
「俺は奴隷だけど、一応夫婦だからね? 俺にも拒否権をください」
その言葉に、アイリーンはあからさまにしゅんとして視線を落とした。
「……だ、だって……」
「わかるよ、気合入れて準備してくれたのは。でもちょっと順序ってものが……」
カリオンは苦笑しながら立ち上がり、アイリーンに一歩近づいた。
警戒するアイリーンの前に膝をつき、下から見上げる。
「女王様? まずは基本的なルールを決めようか」
「ルール?」
「夫婦でも嫌がることはしない。初めてのプレイは、相手の了解を取ってから」
「これ……嫌ってこと?」
えげつないペニバンに視線を向けて――膝をついていると眼の前に来るので余計に威圧感が大きい――、カリオンは穏やかに、けれどはっきり言った。
「ちょっと無理かな。俺、そっちの願望ないし」
アイリーンはしゅんとした。
肩を落として落ち込むアイリーンが可愛らしくて、カリオンは笑いをこらえきれない。
「何よ、奴隷のくせに生意気!」
「奴隷だけど君の夫だからね。ちゃんと話し合って決めるのが大事だよ」
カリオンは微笑んでアイリーンの手を握った。
「でも、ありがとう」
「えっ?」
「引っ越しで疲れてるのに、こうして来てくれるとは思わなかった」
優しく指を撫でると、アイリーンの頬が真っ赤になっていく。
「明日から任務でしばらくいないから、寂しいと思ってくれた?」
「そ、そんなわけ……!」
「そうだよね。わかってる」
アイリーンはうろたえ、カリオンの手をぎゅっと握り返した。
「きょ、今日が新婚初夜だから、来ないといけないと思っただけ!」
「義務感なのか……寂しいなぁ」
大げさに傷ついた振りをすると、アイリーンは動揺して視線をさまよわせた。
「俺は女王様に調教してもらうの楽しみにしてたのに、女王様は義務感なんだね」
「そ、そういうわけじゃないけど……っ」
「じゃあ、俺の調教、楽しみにしてくれてた?」
「楽しみというか……失敗したらどうしようと思って――」
消え入りそうな小さな声だった。自信のない俺の女王様は可愛い――そんな風に思ってしまう。
「初心者同士、失敗していこうよ。急な結婚だったんだから、ゆっくりやっていこう」
両手を握って言い聞かせると、アイリーンはほっとしたように頷き、装着型の魔道具を外した。
「……ドレス可愛いね。俺のために着てくれて嬉しい」
「……こういうの好きなの?」
「奥さんが、自分のために勝負服着て夜中に来てくれて、嬉しくない夫はいないよ?」
頬にキスすると、恥ずかしかったのか、アイリーンは横を向いた。
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