救国のBASIC

竹笛パンダ

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おっさん、お歳暮になる

初めてのお仕事

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 今日の予定は、親衛隊との顔合わせと訓練の見学だった。20名が一斉に訓練に参加する。
 まずは神殿の周囲をランニング。それから毎日森に入り、木立ちの中を跳躍しながら移動する訓練。戻ってくると今度は沢に向かい沢登りと沢下りを往復4㎞の行程をこなし、さらに石の重りを押して移動させる。訓練の最後には神殿のフロアにて、突きの型を掛け声を出しながら500回行う。
 午前中にこれらのトレーニングをこなし、午後は学習の時間や清掃活動、午後3時に解散し、その後は厨房の買い出しや神殿内の案内などの手伝い、今日からは僕の護衛も活動に加わる。
「これを毎日、休みなしで続けているのですか?」
「はい、修行ですから。この生活を3年から5年続けていると、ステータスに変化が現れ始め、モンクやビショップにクラスチェンジできるようになれるのです。」
 う~ん、とりあえず今日は試しに参加してみるか。
 まずはランニング。神殿の外周を10周、およそ8㎞といったところか。
 さすが若い集団だけあって、結構速いペースで走っている。次は神殿の裏から崖にのぼり、そこから林の中を、木の枝を伝ってジャンプして移動する。これは個々の力量差があるため、全員が林の中を1周するまでは時間がかかる。
 僕が初めてなので、地上を迂回してその様子を見ていた。最後まで林の中を行ける者は、半数ほどで、木から落ちると僕が歩いている迂回路を歩いて移動した。リネットとともに、先に到着した者は、全員が揃うまでその場で待っていた。時々後輩の訓練生に激励の声をかけていた。
 神殿の裏側の山は王都の水源となる沢があり、その巡回を兼ねて沢登りと沢下りを行った。全身を使って沢の岩に掴まり昇っていく。およそ2㎞登ったところに少し開けた場所があり、そこで後続を待つ。全員が揃うと岩を飛び移りながら下っていく。
 最後に修行場に戻り、大岩を動かす訓練を行った。これは力量ごとに石の大きさがあり、50mほどの距離を四角く切り出した石を押して移動させるという訓練だった。これも順番待ち。
 そう、効率が悪い。せっかく温まった身体も、長い待ち時間で冷えてしまう。

 こんなにハードな修行も効率が悪く、毎日やっていても年数がかかるというのもうなずける。せっかく運動能力が備わっても後輩を待つ時間が多くなって、それを個々に伸ばす機会がないのだ。面倒見のいい隊長は全員を一度に面倒見ようとしていたので、それはそれで気持ちはわかるが、改善の余地はあった。
 そして一番気になったのが、休みがないことである。身体を休息させながら栄養を取り、筋肉を作っていく暇がなかった。真面目に一生懸命訓練していくことが美徳だったのだ。
 今日の訓練が終わったところでリネットに声をかけた。
「僕が訓練メニューを工夫したいのだけど、よろしいですか?」
「ええ、いいと思うけど、私たちはあのやり方を200年続けているの。それでいいと思っていたから、一人残らずモンクやビショップに育てるために、誰も取り残さないようにしているのよ。」
 まあ、親切なことだが、やる気がそがれているだろう。それでもやる気を維持しているのは神殿で修業をしているという誇りなのかもしれない。
「まず、成長は個人の頑張りが反映されるということと、身体の休息がなければ体は育たないということですな。」

「どういうこと?」とリネットが不思議そうに言う。
「あのメニューはよく考えられているが、やり方が良くないですね。早く終わった人は休憩時間が多いでしょう?もっと訓練したいのに、待たされていました。みんなでやるメニューと個々の力量に任せるメニューに分けるのはどうだろうか。」
「ええ、そのくらいなら神官長も良いというわ。」
「それから、個々の力量に差があるので、同じことを同じようにやろうとすると、いつまでも初心者に合わせることになっていましたね。これでは力を発揮できない。」
「ええ、卒業させようと思っても伸び悩みむよね。でも、仲間意識って大切じゃない?」
「それはそれ、別の方法でいきましょう。伸び盛りを短期間で伸ばしたほうがいいですよね。」
「そうね、それはよいことだと思う。でもどうすればそんなことができるのかしら?それと仲間意識を両立させるなんて。」
「サーキットトレーニング、レベル別グループ指導、そして休日のローテーションですね。」
「なんて言っているの?」
「それでは、今から図を描いて説明いたしましょう。」
 そう言って僕は紙とペンを用意してもらった。
「まず、全員で取り組むことと、個々の力量に合わせて進めるメニューに分けます。はじめのランニングはそのままでいいでしょう。待っている時間が長い木の飛び移り、沢登り、石運びを個々のメニューにしていきます。」
「そうすると私が見守れないじゃない。」
「そこはみなさんを信じて。だって必ず始めと終わりは修行場を通りますよね?そこからみなさんの様子を見ればいいのですよ。」
「そうね、そうしてみるわ。それからどうするの?」とリネットは前のめりで聞いてくる。
「まずはみなさんを5つの班に分けます。修練を長く積んで、もうすぐ卒業の人たちから、初心者までいますので、これを能力別に4人組にします。」
 リネットは紙に名前を書き出し、4人一組を5つ作った。
「この4人はいつも同じ行動をしてもらいます。訓練内容も同じようにね。そうすると、全員が終わるのを待つのが4人になります。だから待ち時間が少なく済むし、同じぐらいの能力ですから、大体同じように進むでしょう。」
 リネットは紙に書いた図を見ながらうなずいている。
 僕は大きな丸を紙に書いて、そこに3つの訓練メニューを書いて、
「時間までこの3つの訓練をぐるぐる回ってもらいます。一番上のチームは3週ぐらいできるでしょうか。初心者チームには1周回ればいいですね。」
「でも、こんなにたくさんのチームが一度に動くのを把握するのは大変かな。」
「全部じゃないですよ、そこは。」
「え?どういうこと?」とリネットが再び身を乗り出して聞いてくる。
「今まではこのメニューを毎日やっていましたね。これからはそこに休みを入れます。毎日の修業をかかさないことが美徳だと思いますが、身体にとっては休息があったほういいのです。」と僕が話すが、納得いかない顔をしている。
 もちろんこれは日本のスポーツ科学の話なので、理解してもらえないのも無理はない。
「休息は筋肉の超回復を促進する重要な要素なのですよ。負荷をかけた後に回復期間を設けないと、筋力の向上は望めません。ですから2日訓練をして1日は軽い運動、もう1日訓練して、次の日は休み。こうすることで訓練場は12人。これなら把握できるでしょうか。」

「残りの者たちは、何をしているの?」
「ランニングをしてから掃除をして、午前中はそれで終了する。これが4人。1日休みが4人ですね。身体に休息を与えることで、筋肉が再生する。トレーニングの後がお昼ごはんなのは、いいタイミングなのですよ。」
 リネットはますますわからない顔をしていた。
「まあ、いいから。修行僧の動きの流れ図を書いてみますね。」
 僕はフローチャートを使って訓練の日程と訓練の順番、交代の休みについて説明した。
 9:00 ランニング
 9:30 サーキットトレーニング
     参加は3チーム 1チームは神殿の清掃をお昼まで行う
     3チームはスタートの位置をずらす。
     ・林の跳躍
     ・沢登り
     ・石運び
    この周回を2時間
 11:30 集団訓練 体術の型の学習
 12:00 昼食
 13:00 学習(チームごと、1チームは休み)
 14:00 奉仕活動 
      ・神殿案内 ・厨房買い出し ・カイト様の護衛 ・街の警備
 16:00 終了

 リネットは、カイトが描いたフローチャートをじっと見つめながら、自分が信じてきた訓練方法との違いに戸惑いながらも、その可能性に期待を感じていた。
 これを順番にローテーションさせるには、何かに表示させて案内をするものが必要だ。僕はあたりを見回すと掲示板に適当な大きさの石板を見つけた。
「石板に訓練生がチームのレベルを言えば、今日のメニューを教えてくれるようにしましょう。」
 と言って、石板にペンでプログラムを書き込む。

 プログラミング起動

 10 DIM DAY=TODAY()
 20 DIM “案内板”=FIELD(19,19)
          ・・・
 60 D=MOD(DAY/5):M=TEAM%+D
 70 IF M>5 THEN M=M-5
 80 FOR I=1 TO M
          ・・・
 170 LOCATE(2,16):PRINT“14:00 ”;D$(I)
 180 LOCATE(2,18):PRINT“16:00 終了”
 190 NEXT I
          ・・・
 1020 DATA 神殿掃除, , , ,神殿案内
 1030 DATA 3番,石運び,木渡り,滝登り,街の警備
 1040 DATA 休み, , , , ,  
 RUN

 石板に書かれたプログラムの文字が光り、「ピン」という音と共にプログラムが発動する。
「これでこの石板がチームごとの活動を教えてくれるようになりますよ」
「おお、それで4人はいつも一緒なのですね。訓練も休みも当番も。」
「ええ、だからチームとしての結束が生まれます。助け合いの精神もそこからですね。チームごとに名前を付けさせるのもいいですね。所属意識が生まれますからね。さらにチームLv.に序列を付ければ?」
「皆が上のLv.を目指して競争が生まれるのね。それは彼等にもやる気が出るでしょう。」
「正解です。これを続けていけば、いずれ早めに卒業できるものが出るのではないのですか。そのたびにメンバーの入れ替えをします。そうすることで、個々の意欲を保つことが出来るのですよ。」
「なるほど。ところで、1チームには何もさせないのですね。」
「そう、休みも4人で行動してもらいましょう。若い子たちには、遊びも必要です。これでもっと結束力が高まりますからね。」
「休日と遊びかぁ、私には与えられなかったな……。」
「姫様もいろいろと大変なのですね。」
「私の場合は『運命の花嫁』の試練だと思えば、乗り越えられたのかなぁ。」
 リネットはそう言うと、しみじみ訓練に明け暮れた日々を思い返していた。
「さて、午後の授業の時間を借りて、僕がみなさんに説明いたします。効率的に卒業生を出せれば新人を受け入れられますね。この国にはそういう人材がまだまだ必要なのですから。」
「そうね、人を育てていくことが、国の柱になるのね。」
 そう言うとリネットは神官長の元に向かう。
 カイト様と行う初仕事。そう思うと自然と笑みがこぼれていた。
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