救国のBASIC

竹笛パンダ

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おっさん、ドラゴンに会う

母様との再会

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 王国の物見の塔から敵襲を告げる鐘が鳴り響く。ドラゴンが現れた。僕たちは慌てて外に出た。大型のドラゴンが5体飛来して王都の周辺を飛んでいる。
「母様です。母様が私を探している。」と、リリーが慌てている。
 僕は、リリーを抱きしめ、落ち着くように背中を撫でる。そうしてリネットにリリーを預けると、空に向かって昨日のガゼル亭の様子を投影した。
 RUN 「投影」、「ガゼル亭」
 ドラゴンたちは、上空に急に現れた写真に気づき、編隊を組んでゆっくりと王都を旋回しだした。2週ほど回ると今度は低空を飛び、何かを探しているようだった。
「リネット、ここで一番広いところはある?あのドラゴンたちが降り立てるようなところは。」
「ここにはないわよ。あんなに大きなドラゴンは初めてだから。それも5体。」
「なら一度街の外に出よう。上空からリリーに気づいてもらえれば、きっとそこで待っていてくれるから。」
 僕たちは街道に続く門へと走り出した。その様子を見て町の人が荷馬車を引き、
「リリー様をお連れします。乗ってください。」
 僕たちは荷馬車に乗り、リリーを空から見えるように抱き上げた。リリーも上空のドラゴンに向かって呼びかけている。
 王城からこの様子を見ていたホーク騎士団長は、兵士たちに武器を収めるように伝達し、騎士団に城壁から出て、ドラゴンに着陸位置を示すように指示をした。
 上空から見た騎士団は、かなり大きめの包囲陣形を作り、手には武器を持たずにドラゴンたちに手を振っていた。
 5体のドラゴンは、都市の門の外に整列すると、まるで攻撃の意志がないことを示すように、一斉に首を垂れ、服従の姿勢をしていた。
 荷馬車に乗った僕たちは、城壁を出てドラゴンの元に向っていた。一足先に王城からは騎士団長護衛の下、バル国王が向かった。ガゼルさんとサキさんもドラゴンの前に集まった。
「やはり其方であったかバルよ、久しいの。」

「これは長老殿、わざわざのお越しとは恐れ入ります。魔王討伐以来ですな。お元気そうで何よりです。」
「今日はな、其方に願い事があってのことだ。我が娘の大切な卵がパラギン帝国の手のものに奪われ、この国に運ばれたという。我らをたきつけ、おぬしの国に攻め入ろうとしているとの話だ。」
「ええ、伺っております。まことに憤怒の極みでございます。」
「その娘の卵を保護し、無事に孵らせてくれたというではないか。まずは礼を言う。そしてどうか孫に会わせてほしいのだ。」
「ええもちろんです。今こちらに向かっております。アテナ神の眷属様が卵を保護し、ふ化させたと聞いております。」
「なんと、眷属様が降臨なされたのであるか。あいわかった。あの天空に描かれた大魔法も、眷属様の御業か。実に見事だ。」
 僕たちがドラゴンの前に到着すると、リリーが母親ドラゴンの前へ駆け寄った。リリーが母親ドラゴンに向かって駆け寄ると、母ドラゴンはその大きな翼を広げ、リリーをそっと包み込んだ。『会えてよかった』という念話が静かに流れ、リリーの目には涙が浮かんでいた。

「お母様。どんなに会いたかったことか。こうして無事に生を受けることが出来ました。」
(ええ、ずいぶんと心配して方々飛び回りましたが、あの空の絵を見て、お前が無事だということがわかり、安心していたのです。今日はあなたのお父様、お爺様と一緒に来たのよ。)
 リリーと母親ドラゴンは念話で会話をしているので、僕たちにはわからなかった。でもリリーが喜び、安心していることはよくわかった。リネットにも言葉話わからなくとも通じるものがあったようだ。一緒に涙を流していた。
「して、こちらが眷属様でおられるか。」
「いかにも、こちらがアテナ神の眷属、カイト殿であります。我が娘の夫となりました。」
 隣でバル国王が僕をドラゴンの長老に紹介した。ドラゴンの長老がゆっくりと顔を近づけ、巨大な鼻先が目の前に迫った。
「孫を救っていただいたこと、誠に感謝いたしますぞ。それからあなた様の従魔となり、聖獣へと神格化したようですな。我が一族から聖獣が輩出されたことも喜ばしい限りであります。」
 長老のその言葉に、周囲のドラゴンも深く頭を下げた。
「僕は皆さんの了解を得ずに、リリーと名付けてしまって良かったのかな。」
「いえいえ、そのおかげでリリーは眷属様の従魔になったのですから、それはよいことです。ただ、このまま孫を連れ帰ってよいものかと思案しておりまして……。」
「そうですね、そこはリリーとお母様に決めていただきましょう。」
 そう言ってリリーたちを愛おしそうに見守っている長老の姿と、仲睦まじい親子の姿を「写真」に収めた。
 リリーは母親ドラゴンの大きな瞳を見上げながら、静かに話した。
「私はこの地で、多くの人の優しさに触れました。そして主様とお姉さまと過ごす時間を、私は何よりも大切に思っているの。でも、私は母様のそばに居たい。私はどこに行けばいいのか、よくわからないの。」
(あなたは聖獣になったのだから、主様と共にいるべきなのでしょうけど、ドラゴンにはドラゴンにしかできない育て方があります。ドラゴンの里も今は帝国との戦の最中で、必ずしも安全ではないの。戦が終わり、安心して里で暮らせるようになった時に、カイト様、リネット様とともに里に遊びに来なさい。)
「ええ、きっと行きますとも。だから母様、あまり無理はしないでね。」

 母親ドラゴンは、優雅な仕草で輝く鱗をそっと外し、リリーの首にかけた。その鱗は淡い光を放ち、まるで絆の証のようだった。
「これは私たち一族の証。リリー、あなたは私の誇りであり、この世界の希望なのよ。」その言葉にリリーは静かにうなずいた。
「ところでカイト殿、後でわしにも空に描いた絵を下さらぬか。かわいい孫娘の晴れ姿だからのう。」
 まったく、どの世界でも孫はかわいがられるのだな。そう思って紙に出力した「写真」を手渡した。
 ドラゴンと人々が共に笑顔で語り合う光景が広がっていた。その中で、リリーは母親ドラゴンに寄り添いながら、空を見上げていた。
「これからもみんなと一緒に、この空を守っていくのね。」
 そう静かに誓った。

 そこにはドラゴンと人との融和という美しい時間が流れていた。
  
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