救国のBASIC

竹笛パンダ

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心を一つに

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 サルタンたち一行の活躍は、伝書鳩によって直ちにパラギン王国の国境の町にいる市民運動家に届けられた。「ラダット解放軍」結成の知らせと、カイト様の作戦、さらに軍旗に描かれるシンボルマークについても言及されていた。
 さらにキャッチコピーが「立ち上がれ、市民たちよ、待ち望んだ未来のために」に決まったことが書かれていた。
「このキャッチコピー?というものはなんだ?」ということになったが、
「この言葉、旗に書いたらどうだ?」
「おお、いいね。俺たちの合言葉だな。」
 こうして図らずも、キャッチコピーの意図は伝わったのだ。
 国境の市民活動家からこの記事をシュビーにまとめ、隣の街へ届ける。そこでも記事の複製が行われ、帝国全土に広がっていく。これで「ラダット解放軍」全国民が知る存在となった。
 帝国各地で市民運動が再び盛り上がりを見せた。皆は一斉に「立ち上がれ、市民たちよ、待ち望んだ未来のために」と口にしていた。
 サルタン一行はシナール国王城で、バル国王との謁見に臨んでいた。
「其方がパラギン帝国のサルタンであるか。」
「は、『ラダット解放軍』の代表、サルタンであります。」
「ついにパラギン帝国の市民は行動を起こすことになったのだな。」
「はい、昨夜カイト様との会談にて、帝都における人質救出作戦を立て、それを実行するばかりです。」
「して、勝算はあるのか?」
「ええ、カイト様とは綿密に打ち合わせを行っております。」
「ところで、娘が市民のために共に戦うと息巻いておるのだが、大丈夫なのか?もちろん娘は並みの騎士では相手にならないことくらいは承知しておるが、それでも父親としては心配なのだ。」
「はい、リネット様には解放軍において、敵将との一騎打ちを予定しております。」
「なんだと、予定だと?そんなことが出来るのか?」
「ええ、カイト様の策ならば、それも可能でしょう。」
 バル国王は驚いた。何が起こるかわからない戦場で、意図的に戦況を左右するという発想は、常人には考えも及ばないことだった。
 サルタンのみならず、リネットまでもがカイト殿の策の成功を信じていた。
「リネットをここへ」とバル国王がリネットを呼んだ。
 リネットはすぐに現れた。今日になって父王がパラギンに行くことを反対しないか心配だったからだ。
「ラダット解放軍への助力を許可する。カイト殿とともにかの国の市民を救って見せよ。」
「は、拝命いたします。」と勇ましく応える。サルタンも跪き、
「バル国王様、感謝いたします。」
 こうして、バル国王の承認を得て、僕たちはラダット解放軍とともにパラギン帝国へ向かうことになった。

 その日の夜、僕はリリーを呼んで、少し話をした。
「ねぇリリー、今回僕たちはパラギン帝国に行くけど、その間にリリーにはお願いしたいことがあるのだけれど、いいかな?」
「ええ、カイト様の望みであれば、何でもいうことを聞きますよ。」
「実はドラゴンの長老のところにお使いに行って、この手紙を渡してほしい。ドラゴンの里までは一人で飛んでいくことになるけど、大丈夫かい?」
「お姉さまとの訓練で、だいぶ飛べるようになったから、大丈夫でしょう。この通り、少しずつ成長していますから、遠くまで飛んでいくことが出来るようになりましたよ。」
「リリー、この手紙には僕たちの未来がかかっているんだ。長老に渡せば、ドラゴンたちの力がラダット解放軍を後押ししてくれるはずだ。」
 リリーは胸に手を当てて深くうなずいた。「分かりました、カイト様。必ず届けます。」とリリーが力強く答えた。
「それはよかった。それならお母さんに会いに行くこともできるよね。」
「うん、前にお母様に会ったときに、『ドラゴンにはドラゴンにしかできない育て方がある』って言っていましたから、お母様にどんなことを教えてもらえるのかを楽しみにしています。」
「リネットと僕とは別々に行動することになるのだけれども。」
 リリーは少し考えた。生まれてからずっとそばに居てくれたリネットと別々に行動するのは初めてだからだ。しかし、リリーが一人で外出することをリネットが許可しているので、こうして僕のところにも遊びに来るようになっていた。
「はい、きっと大丈夫です。」
「シルフィ、いる?」
「はい、カイト呼んだ?」
「実は明日リリーにドラゴンの里へお遣いを頼んだんだ。このことを先に長老へ伝えておいてもらっていいかな。」
「ええ、お安い御用よ。もしかしてリリーちゃん、一人で行くの?大丈夫?お姉さまがついていってあげようか?」
「ええ、大丈夫ですよ。リリーも大きくなりましたから。」
「それなら途中までお母様にお迎えに来てもらうのはどう?それなら安心でしょ?ただ行き違いになるといけないから、なにか待ち合わせの目印が必要ね。」
 その話を聞いて僕が、
「それなら国境の森の上空に、「写真」を写しておくよ。ドラゴンは移動するときにはかなり高いところを飛ぶのだよね。それなら上空500mくらいかな。」
「ねぇリリーちゃん、何かあったら私を呼ぶのよ。すぐにそばに行ってあげるからね。」とシルフィが心配そうに言った。
「ありがとうございますシルフィ様、では心細くなったらお話ししましょう。」
「お姉さまに任せなさい。」
「それなら、僕からもお願いするよ。シルフィ、頼んだよ。」
「はいよ、まかせておいて。」

 翌朝、僕たちはパラギン王国へ馬車で移動することになった。もちろん巡礼者たちに同行し、アテナ神の教会へ向かう。目的は市民運動の犠牲者の追悼とした。
 僕はまた、あの派手な法衣に身を包み、司祭として王国に出向くことになった。リネットは神殿騎士として同行することになった。二人ともパラギン帝国には顔を知られていないので、難なく入り込めそうだ。
 リリーには僕からドラゴンの長老へお遣いをお願いしてあるので、朝から捏行動をしている。今頃はお母様に会えただろうか。今後は気軽に里帰りができるようにと昨日のうちにシルフィに伝達をお願いしておいたので、母親ドラゴンが国境付近に迎えに来ることになっていた。
 ドラゴンの長老には、一週間後の午前10時30分頃、帝都の王城南東にある人質収容施設と、その周囲の城壁を破壊するよう依頼しておいた。
 この手紙に数枚の「写真」を添えてある。これはリリーの日々の様子をシュビーで撮影したものだ。きっと長老も喜ぶことだろう。
「サルタン殿、これは私からの贈り物です。どうかお役に立ててください。」
 そうリネットが言い、包みを取り出した。
 中からは美しい刺しゅうが施された立派な軍旗が入っていた。
 空を思わせる水色の布地にリリーが飛ぶ姿を刺しゅうで表している。その旗には、「ラダット解放軍」の刺しゅう文字とともに、「立ち上がれ、市民たちよ、待ち望んだ未来のために」と黄色い文字で記されていた。
「これを我々のために一晩で、いくら感謝をしても足りません。」
「それならお城のお針子の女の子たちにね。私の無理を聞いてくれたのだから、いずれ落ち着いたときにでもお願いしますね。」
「はい、しかと心得ましてございます。」
 こうして和やかに馬車の旅は穏やかに続いていた。

 国境付近に広がる森に差し掛かると、森の奥から不気味な気配が漂ってきた。その瞬間、リネットが手を挙げ、隊列を止める。
「前方に何かいるわ。」リネットの鋭い眼差しが道の向こうを射抜いた。その言葉通り、影がいくつも現れ、森の静寂を破る。僕たちは誰から見てもわかるくらいに悪目立ちした、盗賊たちに囲まれていた。
「お頭、立派な格好をしたやつが乗っています。金目の物があるかもしれませんぜ。」とこちらを威嚇しながら話をしていたが、
「馬鹿野郎、このお方はリネット姫様だ。恩人に向かってなんてことを言いやがる。」そう言ってリネットが姿を見せると途端に跪いていた。
「何かあったのかい?」と僕が聞くと、
「以前この森を調査に訪れた際、ドラゴンの怒りに触れて亡くなった者がいまして、その者たちを弔って差し上げたのです。この時に調査に協力してくれたのが、この盗賊たちなのですよ。」
「ああ、ドラゴンの母様に問答無用で攻撃されたからね。」
「パラギン帝国の工作員も一緒でしたので、そのものの情報は彼らからもたらされたのでした。」
 僕はその情報を得たことで、街の人が助かったことを伝えた。
「そんなもったいないお言葉です、旦那様。」と、恐縮していた。
「サルタン殿、一つ頼まれてはくれまいか。」
「ええ、何なりと。」
「今は盗賊に身を落としてはいるが、士官の先があれば、いずれ役に立てるであろう。国が落ち着いてから、この者たちを雇ってはもらえぬだろうか。もちろん私の口利きであるので、悪いことはしないだろう。」
 盗賊たちは、有難くも無双の槍の使い手であるリネットに対して恐れをなしていた。
「め、め、滅相もありません。こんな私たちのために姫様が士官先を紹介してくださるとは。ありがたいことです。おい、お前らいいよな。」
「へい、お頭。」と一同は頭を地面にこすりつけていた。
「根っからの悪人はいないものですよ。少し機会に恵まれなかっただけですから。」と僕が言うと、サルタンも、
「新しい国づくりには人手が足りない。どうか協力してほしい。」
 盗賊たちは新たな士官先を見つけ、意気揚々と森の街道を警護することになった。

 王都を出発して3日後、僕たちは国境の検問所にやって来た。そこに貴族の上官の姿はなく、門番の兵士が僕に跪く。
「カイト様、お待ちしておりました。国境の町に住む活動家から話は伺っております。」
 そう挨拶すると、サルタンには
「よく戻られた、同志よ。アテナ神のご加護に恵まれたようだな。」
「ああ、全くだ。」
 こうして僕たちは無事にパラギン帝国に潜入した。
  
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