救国のBASIC

竹笛パンダ

文字の大きさ
22 / 27
おっさん、革命を支援する

母の教え

しおりを挟む
 一方そのころ、竜の里に向かったリリーは、国境の森の上空に描かれた「写真」を目指していた。背中にはリネット特製のリュックを背負い、傍らにはシルフィも一緒だった。
 一人で行けると言ったものの、まだ幼い聖獣に何かあれば大変だ。シルフィはその不安を感じ取り、迷わず同行を申し出た。
 その「写真」には、リネットがリリーに向かって「頑張って」というメッセージが添えられていて、リリーは小さな羽を必死に動かしながら、風を切る感覚を確かめた。
 だが、まだ長距離を飛ぶにはコツがいるらしい。リネットの『写真』は見えているのに、なかなかたどり着かない。
(リリー、リネットの「写真」が見えたよ。もう少しだからね。)
「うん、でもお姉さまの姿は見えているのだけれども、なかなかたどり着けないね。カイト様どれだけ大きな『写真』を描いたの?」
 カイトが描いた「写真」は、遠くから飛来するお迎えのドラゴンのために良く見える位置にあった。時間とともに魔力が拡散してしまうと、だんだん薄くなっていって最期には消滅してしまう仕組みだった。
(それじゃ、少し休憩しようか。)シルフィが森の泉を指し、リリーとともに向かった。
 二人は泉の傍らで羽を休めていると、突然、森の奥から低い唸り声が聞こえた。ワイルドボアの群れが水を求めて泉へと近づいてくる。リリーは一瞬、身構えたが、先頭の大きなオスは敵意を見せることなく、ゆっくりと群れを導いていた。小さな仔たちが無邪気に水を飲む姿を見て、リリーは安心し、そっと息を吐いた。群れの大きなオスが集団を守り、メスやその仔たちが安全に水場を利用できるようにしていた。
「群れの中で生活するって、こういうことなんだろうね。」
(そうだね、もともとリリーも群れで暮らすワイバーンの一族なのだから、こんな風に群れで行動していたかもしれないね。)
 そこへリネットの「写真」付近を旋回していたドラゴンが一体、リリーたちに近づいてきた。
「……お母様!」
 遠くから優雅に旋回しながら近づく母のシルエットを見つけると、リリーの胸が高鳴った。金色の瞳が自分を捉えた瞬間、涙があふれそうになった。
「リリー、よく一人で頑張ってここまで来られたわね。」
「お母様、風の精霊の『シルフィ』様も一緒です。」
(カイトったらもう、リリーを一人にするのが心配で、一緒についてきたってわけ。)
「風の精霊シルフィ様、この仔を守ってくださり、ありがとうございます。私にはお声を聞くことはできませんが、これもカイト様のお計らいなのでしょう。」
 カイトやリリーと会話ができるのは、アテナ神の眷属とその従魔だからであろう。生まれたばかりのドラゴンが意思疎通できるのもそのためだった。
(普通は、そうなのよね。)とシルフィがつぶやいた。
「ええお母様、カイト様は私が心配で、シルフィ様にお願いをしたのです。」
「まぁ、そうだったのですね。カイト様にはなんとお礼を申し上げたらよいか。本当にかわいがってもらっているのですね。」
(そこは私よ!私もリリーのこと、可愛いって思っているんだからね。)
「はい、もちろんシルフィ様もかわいがってくださいますよ。」
 これがカイト様も悩んでいた3人の会話なのだな。幼いながらに気を遣うリリーだった。
「さあ、ドラゴンの里に向かいましょう。でもその前にリリー、風の魔法は使えるかしら?」
 リリーは自身のステータスを確認した。
「いいえ、私は聖属性ですので、風の魔法は使えません。」
「そうね、儀式がまだですからね。私たちのように空を飛ぶワイバーンは風の精霊様と契約を結ぶことで、空を自在に駆けることが出来るようになるのですよ。」
(あ、それならこの森に棲む精霊たちと、お友達になればいいのよね)
「ですが、そのようなことをお願いしてもよろしいのですか?」
(聖獣様相手なら、喜んで契約に応じるわよ。)
 リリーは喜んでシルフィの申し出を母に伝えた。
「ではその前に、リリーに精霊様にどのような約束をするか、伝えておきますね。」と言って、リリーの正面に座る。

「いいですかリリー、精霊様はこの世界の自然を守る存在なの。だから、生きるために食べるとき、身を守るとき以外では生き物を殺してはならないこと、そして精霊様とともに自然を守る存在になることを誓います。これがドラゴンに課せられた使命でもあり、この誓いを守ることで誇り高くいられるのですよ。」
「はい、お母様、私は風の精霊様に誓います。」
(それじゃリリー、精霊たちに呼びかけてみるね。おーいリリーと契約したい子集まって。) 
 「シルフィの呼びかけに応じるように、無数の光の粒が森の闇から舞い降りた。それらはリリーの周囲をふわりと漂い、さながら星が降るかのようだった。
(なんだか聖獣様とお友達になれるからって、たくさん集まっちゃったのよ。)
 リリーの周囲の光の粒は、まもなく少し距離を置いた。
(リリーの魔力が高いので、そのままでは契約できないみたいね。この中で一番魔力が高い子は?)
 そう言うと、光の粒が一つだけ、前に出た。
(リリー、この子に名前を付けてあげて。そうすれば私みたいに進化できるから。今ではあなたの方が高い存在なのよ。だから契約できないっていうのよ。)
「名前ですか。その方は男性?女性?ですか?」リリーは少し混乱していた。
(私たちには本来性別はないの。名づけによってそれらしくなっているだけよ。だから気に入った名前でいいのよ。)
「それじゃ、『リック』でお願いします。」
 リリーの目の前の光の粒が一層光輝き、やがてシルフィと同じような上位の精霊の姿になった。
「ははっ、これはいいや。ちゃんと話ができる。」と言ってリックは喜んでいた。
(こら、まずはご挨拶でしょ。)とシルフィがたしなめると。
「リリー様、リックでございます。この度は名を与えていただき、感謝します。」
「え、リリー様だなんて恐れ多い。精霊様ですよね。」
「ええ、聖獣リリー様の眷属になりました。今は一配下にすぎません。それから意思疎通と他種族言語をいただきました。おかげでこうして直接お話ができるのです。」
「シルフィ様、これでよかったのですか?」
(ええ、私がカイト様の面倒を見るように、これからは『リック』がちゃんと面倒見てくれるから、安心なさい。)
(それじゃリック、リリーに風属性魔法が使えるようにしてあげて。)
「はい、シルフィ様。」そう言ってリリーの鼻先に手を当てて、念じると、リリーの身体の周りに風が舞った。
「これでよし。リリー様、ステータスを確認して」

 リリー Lv.8 ドラゴン族の聖獣 カイトの従魔
 ステータス HP 8360/10000 MP  16389/36000
 スキル
 アテナ神の加護 対物理結界、対魔法結界、状態異常無効の常時発動
 聖属性魔法 ヒール ハイヒール キュア ピュリフィケーション
 風属性魔法 ウインドシュート ウィンドアクセル ウィンドカッター
 ドラゴンブレス 火 氷 聖 風
 意思疎通 他種族言語 魔人化(封印)

「お母様、風の魔法が使えるようになりました。リック様のおかげです。」
「まぁなんとありがたいことでしょう。リック様、これからも娘をよろしくお願いいたします。」
「ああ、聖獣のお嬢様はおいらがしっかり面倒を見るからまかせておけ。」
 リックは誇らしげにそう言った。
「それではリリー、ドラゴンの飛び方をあなたに伝えます。ついてきなさい。」
 そう言うとリリーたちを上空へ連れてきた。
「私たちドラゴンには頭の中に松果体という魔法を扱う機能を持つ場所があります。ブレスを扱う時には自然にできるのですが、魔法は頭に意識を集中して力を集める様子を思い浮かべてみなさい。」
 リリーは以前、夢中で使ったハイヒールの魔法を思い浮かべた。リリーの身体に淡い光が纏った。
「その光を翼に集中させて、『ウィンドアクセル』を唱えるの。そうすると魔力と使って速く飛ぶことが出来るのよ。やってみて。」
「ウィンドアクセル!」
 その瞬間、リリーの翼が光をまとい、まるで風に溶け込むかのように加速した。景色が一気に流れ、リリーの身体が空へと弾かれるように進む。『すごい!』リリーは歓喜の声を上げ、さらなる高みを目指して羽ばたいた。
「いいわよリリー、さすがね。もう一ついいかしら。上空から滑空しながら『ウィンドアクセル』を唱え、翼を小さく畳むと、もっと速く飛べるわ。一緒にやってみようね。」
 リリーは母親とともに上空を滑空し、言われた通りに魔法をかけた。
(すごいよリリー、わたしたちと同じように飛べるなんて。)
 精霊たちも一緒に移動しながら驚いていた。
 リリーたちはドラゴンの里の上空までほんの数分でたどり着いた。
「これならカイト様の元へ、すぐにでも飛んでいけるでしょ。」
「お母様ありがとう。」と、新たなスキルに喜んでいた。

 2体のドラゴンは連れ立ってドラゴンの里に舞い降りた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...