後ろの花子さんと鏡の噂

チャイ

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1話:学校の怪談

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夏休みまで2週間。6年2組の昼休み。
けたたましいセミの声が教室に響く中、いまいちダルい私。

だって、夏休みも、片思いだとつまんないよね。

頬杖ついて、ちらり、向こうの席の彼を見る。
男子数人でわちゃわちゃ。
その中でも少し大人っぽいのが彼だ。

「旧校舎のうわさ知ってる?」
親友でオカルトマニアのミオが、いつものノリで話しかけてきた。
また怖い話、慣れてきたはずなのに、心臓がバクバクする。

ミオは一段と声をひそめ、ささやく。
「その鏡には、顔が映らない。
旧校舎の保健室に残された、ひび割れた鏡。
そこに映るのは、いつも“後ろ姿”だけ」

泣きそうな、私の顔を見て満足そうなミオ。

いつの間にか他の子たちも怪談話に加わる。

「旧校舎、呪いの花子さんだよね?」
「後ろ姿しか見えないんでしょ?」
みんなが噂を口にする。

「笑う後ろ姿、それが、ゾッとするような笑い方だったって」
なぜかクラス中が一瞬、シーンと静まり返った。

「カメラしようとしたら、スマホ壊れたって。隣のクラスの子が言ってた」
私はぜったいやだ、幽霊の写真なんて撮りたくないよ。

「実はめっちゃ美少女!」
クラスのお調子者君も口をはさんできた。

「へー、みんなくわしいじゃん」
ミオが感心したように言った。

「……でさ、この学校には他にも変な噂があるんだよ」
ミオがもっと声をひそめた。
「昔、屋上から飛び降りた子がいるって話。誰かに誘われてる、って言い残してさ」

「え、本当に?」
誰かの声が震えた。
「卒業生の間の噂だから、まぁ、よくは分からないんだけどね」

この学校怖すぎ、七不思議じゃ足りないんだよね実は。

「花子さんの噂、調査するんだろ?ミオ」
そう言ってきたのは瑞樹君。ミオとは幼馴染、だから、こんな風に呼び捨てなんだ。

「まあね、こんど行くよ。舞といっしょに。ね、舞?」
「う、うん」
ミオは何かにつけて、こうやって私の名前を出してくれるんだよ。
そのたび私はじんわりと優しい気持ちになる。

「新聞部は、飛び降りの噂追いかけてみるから。
そっちの話、楽しみにしてるぜ。
できたら、写真頼む!」
人懐っこい笑顔で、拝むように手を合わせて、瑞樹君は男の子たちの輪に戻っていった。

「うーん、舞ってば、もっと、積極的にいきなよ。
あんな奴なのに、6年になったとたん人気でたよね」
「ドキドキしてるだけじゃだめだよね。
あ、あんな奴って、瑞樹君って、新聞部で面白い記事書いてるから人気あるんだよ!」
「わかったわかった。じゃ、明日の放課後、裏庭の花壇に集合ね」
「うん、ちょっと怖いけど行ってみよう!」
なんてったって、瑞樹君に頼まれたんだしね。



その夜ベッドの上で、私は目をとじて考えてみる。

鏡の呪いってなに?

底知れない何かが、私を招いているような気がした。
それは深く深く。
そして私はいつの間にか夢の底へ沈んだ。
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