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2話:鏡の中の後ろ姿
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放課後、私とミオは旧校舎へ向かった。
ムッとこもった重い空気。
今日は文化部、地域ボランティアも活動がなく、誰もいないはず。
廊下がやけに長く感じる。
つきあたり、今は使われない保健室。
保健室便りの張り紙の日付は、8年前だ。
保健室の鍵をポケットから取り出した。
いけないことだけど、保管場所からこっそりと。
緊張で指先がふるえる。
その鍵は今の教室のものよりも細長く古めかしい鍵だった。
「これだよ、噂の鏡」
ミオが指さした先に、古びた鏡がはまっていた。
縁は緑の錆び、細かいヒビ。
鏡面は、まるで深さの知れない湖面のよう。
私はなぜか湖を思いだした。
ううん、これは鏡、鏡。
キレイ、吸い込まれそうなほど澄んでいる。
もし、飛び降りたあの子みたいに、誘われたら…。
私はそっと鏡の前に立った。
映っていたのは——私の後ろ姿。
長めの黒髪、いかにも普通。
あ~あ、アイドルみたいに可愛かったらな。
なんて、のんきな場合じゃなかった。
背筋に冷や汗が流れる。
指先がやけに冷たい。
鏡の中の私に、顔がない。
正面に立っているはずなのに、映っているのは、どう見ても私の後ろ姿——一体どういうこと?
手足を動かしてチェックしたいけど、恐怖で体が動かない。
何度も息を吸って吐くを繰り返してようやく動けるようになった。
隣りのミオも青ざめた顔だ。
「ミオ、深呼吸だよ!」
「ありがと!舞」
一息ついた後、二人で鏡を背に振り向いてみた。けれど鏡の中の二人は振り帰らない。
「うわ…ほんとだ、後ろ姿しか映らない」
ミオの声はかすれている。
「スマホで撮ってみようか」
思いのほか冷静な自分にホッとする。
新聞部の瑞樹君に頼まれた写真、頑張らないと。
息苦しい、腕が動かない。
ようやく私はポケットからスマホを取り出し、カメラを起動。
でも、画面は真っ暗なまま。フリーズして映らないよ。
もしかして、呪い?スマホが故障するって。
ヤダヤダ!これお姉ちゃんのおさがりで古いから。
調子が悪いだけだよ。
「再起動してみる」声が震えた。
そのとき、画面に一瞬だけ、何かが映った。
一瞬、チラッチラッと映っては消える。
黒髪のポニーテール?
異様に大きな花飾り。
赤い造花のバラがニヤリと笑った。
「ね、今の何?ごめんね舞…」
ミオが泣きそうな声を出す。
そして、鏡の中に現れた彼女。
私たちを映す鏡面に、見慣れないもうひとつの後ろ姿が、じっと立っていた。
「たぶん、花子さんだよ」
私たちは、言葉を失った。
その背中は顔を見せず、なのに私たちを見ているようだった。
ゆらゆらとポニーテールが揺れている。
造花も揺れる。
服は何かの衣装?
あの背中が、鏡の奥からじりじりと、こちらへ――確かに、近づいてきていた。
どうやって逃げたのか記憶がない。
ただ、夏の日差しだけは覚えている。
生きていると思った。
ムッとこもった重い空気。
今日は文化部、地域ボランティアも活動がなく、誰もいないはず。
廊下がやけに長く感じる。
つきあたり、今は使われない保健室。
保健室便りの張り紙の日付は、8年前だ。
保健室の鍵をポケットから取り出した。
いけないことだけど、保管場所からこっそりと。
緊張で指先がふるえる。
その鍵は今の教室のものよりも細長く古めかしい鍵だった。
「これだよ、噂の鏡」
ミオが指さした先に、古びた鏡がはまっていた。
縁は緑の錆び、細かいヒビ。
鏡面は、まるで深さの知れない湖面のよう。
私はなぜか湖を思いだした。
ううん、これは鏡、鏡。
キレイ、吸い込まれそうなほど澄んでいる。
もし、飛び降りたあの子みたいに、誘われたら…。
私はそっと鏡の前に立った。
映っていたのは——私の後ろ姿。
長めの黒髪、いかにも普通。
あ~あ、アイドルみたいに可愛かったらな。
なんて、のんきな場合じゃなかった。
背筋に冷や汗が流れる。
指先がやけに冷たい。
鏡の中の私に、顔がない。
正面に立っているはずなのに、映っているのは、どう見ても私の後ろ姿——一体どういうこと?
手足を動かしてチェックしたいけど、恐怖で体が動かない。
何度も息を吸って吐くを繰り返してようやく動けるようになった。
隣りのミオも青ざめた顔だ。
「ミオ、深呼吸だよ!」
「ありがと!舞」
一息ついた後、二人で鏡を背に振り向いてみた。けれど鏡の中の二人は振り帰らない。
「うわ…ほんとだ、後ろ姿しか映らない」
ミオの声はかすれている。
「スマホで撮ってみようか」
思いのほか冷静な自分にホッとする。
新聞部の瑞樹君に頼まれた写真、頑張らないと。
息苦しい、腕が動かない。
ようやく私はポケットからスマホを取り出し、カメラを起動。
でも、画面は真っ暗なまま。フリーズして映らないよ。
もしかして、呪い?スマホが故障するって。
ヤダヤダ!これお姉ちゃんのおさがりで古いから。
調子が悪いだけだよ。
「再起動してみる」声が震えた。
そのとき、画面に一瞬だけ、何かが映った。
一瞬、チラッチラッと映っては消える。
黒髪のポニーテール?
異様に大きな花飾り。
赤い造花のバラがニヤリと笑った。
「ね、今の何?ごめんね舞…」
ミオが泣きそうな声を出す。
そして、鏡の中に現れた彼女。
私たちを映す鏡面に、見慣れないもうひとつの後ろ姿が、じっと立っていた。
「たぶん、花子さんだよ」
私たちは、言葉を失った。
その背中は顔を見せず、なのに私たちを見ているようだった。
ゆらゆらとポニーテールが揺れている。
造花も揺れる。
服は何かの衣装?
あの背中が、鏡の奥からじりじりと、こちらへ――確かに、近づいてきていた。
どうやって逃げたのか記憶がない。
ただ、夏の日差しだけは覚えている。
生きていると思った。
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