あやかし喫茶店エコー:時巡る風流一座と街の秘密

チャイ

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後編 影追い、戦う者たち編

43話 策謀の対峙、対の覚醒

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花音の妖美な舞と演奏、そしてじいじの魂のロックな三味線が禍音の鳴動器から放たれる不協和音をずらしていく。

人間化したはずの狛犬から尻尾が生えている、耳もある。
半妖いや半神化した狛犬はするどい嗅覚、聴覚を発揮し、敵の黒服を次々と蹴散らした。

鳴動器はまだもう少し!
虎二は、持ち込んだタブレットを使い、狛犬に的確な指示を飛ばしている。
「右に!次の護衛は罠です、左へ回り込め!」
「こうでやんすか!そいやっっ!」
敵をまたひとり倒した。
月彦は自身の霊力でこの戦場をコントロールすることに力を注いでいた。

鳴動器から放たれる不協和音は、まるで古びたシネマのモノクロ映像のようだった。
記憶の断片がかすれた画面に浮かび上がり、ノイズとひび割れが過去の幸せな瞬間を歪めていく。
スクリーンに映るはずのミーとの幸せな記憶が、次第にねじれ幻影へと変わる。
「こちとら、ミーちゃんのおひげのお守りがあるでやんすよ!」

「ああ、大丈夫のようだ、狛犬はまた走り始めた!」
目の前にあの鳴動器が見える。
からくり時計とは違うが、コアの部分は同じもの。
まさか、あのみなを楽しませたからくり時計がこんな兵器になるとは……
狛犬は怒りを募らせた。

敵の数が圧倒的だ!さらに、訓練を積んだ精鋭部隊が、緻密な連携と計算された動きで攻撃を仕掛けてくる!

そして禍音の鳴動器から放たれる波動がさらに強まった。最終決戦の火ぶたが落とされた。

「私が行くしかなさそうですね、虎二お前はここからこのまま指示を出せ」
「月彦様……どうかご無事で」

月彦は、袴を翻し走った。
霊気が白く漂い、周囲の空気までも冷たく澄み渡らせる、狛犬の隣に立った瞬間、空気が一層張り詰めた――あたかも月夜の影そのものが形を持ったように。

「なんだ狛犬、尻尾が下を向いているぞ。
猛獣使いが来たのだから、もっと暴れてみろ」
狛犬は隣にたつ月彦の涼やかな横顔をちらりと見た。
彼の冷静な態度、そしてどこか浮世離れした佇まい。

その瞬間、狛犬の脳裏に、かつて劇場街のからくり時計の下で、からかうように笑った、あの「大人ぶった連れ」の姿が鮮明にフラッシュバックした。

「こんなことで驚くのは、田舎者だよね。」あの嫌味な声が、まるで今も聞こえるようだ。
(まったく、この生意気さは昔からちっとも変わってやしねぇ…………!)

月彦が加わってもなかなか事態は好転しない。
月彦の白い頬に血の筋が垂れている。

鳴動器の一撃で、狛犬の足元にわずかな亀裂が走った。
狛犬は立ち上がり、亀裂から流れる妖力が体に染み渡る感覚を覚えた。怒りと守るべきものへの思いが、一瞬で体を駆け巡り、新たな紋様と光が彼を包み込んだ。
「古文書にあった、対の狛犬の力の解放だ……」
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