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死神もツッコミ!老人会の怖い話
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私は死神。スーツ姿で出勤であります。目立たないことがモットーですので、間違ってもフード付きのローブに鎌を持ってうろつくことはございません。
私だって職務質問されたくないですからね。
今日も仕事なのですが、わたくし、3時間前行動がモットーですので、まだ時間に余裕がございます。
公園でぼんやりとしていると、日当たりの良い場所で、数人のご高齢の方々が楽しそうに集まっているのを見つけました。
彼らの会話に耳を澄ますと、「怖かったよぉ、生きた心地がしなかった」「死ぬかと思った」「怖すぎる、世も末だ」などという声が聞こえてきました。
おやおや、怖い話ですか?私も死神、怖い話はぞくぞくしますね。最近冥界でも、怖い話の配信なんかが流行ってるんですよ。人生のベテランの方々お話、なかなかのレベルの怖い話が期待できそうです。
気配を消して、ベンチの後ろに行ってみましょう。私は死神ですので、彼らのステータスたとえば、年齢などをみることができます。
パープルの髪色、くすんだ紫のジャージに身を包んだ、紫婆さんこと梅婆さんが、みんなに話をふりました。
「あたしゃねぇ、昨日うっかり転びそうになってさ。死ぬかと思った。ああ、怖かった」
(死神ツッコミ:転びそう。「そう」なら、まだ生きてるじゃないか)
隣りの上品なおばぁ様が心配そうな顔でうなづいています。
「梅ちゃんったら、転ばなくてよかった。ホント怖いわよね。骨折して寝たきりになる人多いのよ。で、どこで転びそうになったの?」
「サッカー場で」
「あら地元チームの応援?……なんだっけ、あれよあれ!!!」
上品ばぁ様がサッカーチーム名に頭を抱えるなか、紫婆さん言いました。
「ちがうよ、あたしがサッカーしてるんだよ。で、ゴール決めて、ゴールパフォーマンスで、ちと、はしゃぎすぎたのさ」
(死神ツッコミ:80歳でゴールパフォーマンス? そっちの方が怖いわ!)
「私は、電話が怖いのよ」
うんうんと、みなが同意しています。
「ホント、オレオレ詐欺に、警官名乗る詐欺にってねぇ」
「うちはもう留守番電話にして、出ないようにしてるよ」
「まったく、怖い世の中だよな」
(たしかにこのところ私の仕事もやりにくくなりました。
死神ですと言うと、証明書出せとか、本物か信じられないとか。やたら疑われるんですよね)
きっぷのよさそうな職人風のおじいさんが、次の怖いものを話だしました。
「俺が怖いのはスマホ」
「ああ、なんか変なところ押しそうで怖いよね」
「ガラゲーにせっかく慣れたと思ったらねぇ」
職人おじいさんは、うーんとうつむいた顔をパッと上げ、
「いや、真っ暗画面に映る、俺の顔が怖いんだ……」
(死神ツッコミ:たしかにあれは、突然出てきますよね、しかも無防備の真実の顔が。
でもまぁ、私のこの辛気臭い顔よりはましでしょう)
死神はため息をついた。私の思う、「怖い」とは、そう!魂の断末魔!涙すら出ないほどの肉体の苦痛!
抗うすべもない絶望……そんなイメージだったのですが。
なんというか、のんきでございますね。
茂さんと呼ばれた男が、ハッと時計を見て立ち上がった。
「やべぇ!こんな時間だ!今日はな、帰ったら奥さんに頼まれたゴミ出しを忘れててさ、それを怒られるのが怖いんだよ!もう、奥さんの顔を見るのが、地獄の閻魔様より怖い!」
(死神ツッコミ:閻魔様は私の同僚だぞ。奥さんの方が怖いって……マジでございますか)
お年寄りたち全員が、茂さんの話に大声で、明るく、たくましい笑い声を上げた。
「頑張れよ!」「それこそ本当の恐怖だ!」
うーむ、まったく、人間は小さなことで恐ろしがり、そしてすぐに笑う。死神の私には、『奥さんに怒られるのが怖い』というのは、理解できない恐怖ですねぇ。
こんなところでのんびりしていられない。3時間前行動をとったはずが、仕事に遅刻しそうであります。こんな方たちを相手にしている場合ではありません。
ようやく仕事を終え、冥界へ戻った私。その数分後、冥王様の執務室から、魂の断末魔を彷彿とさせる、悲鳴にも似た声が響き渡ったのであります。
「ひー、お許しを―!!」
「定刻に間に合わんとは、たるんどるぞ!二度と繰り返すな、この愚か者が!」
魂の断末魔――冥王の怒号に震える心。
肉体の苦痛――鞭に撃たれ、床に這いつくばる膝。
未来への絶望――給料減給の宣告。
全部そろってる!
私は床に這いつくばり、全身を震わせながら許しを乞いました。
これが……これこそが、本当の恐怖……。
※
表紙のイラスト
私だって職務質問されたくないですからね。
今日も仕事なのですが、わたくし、3時間前行動がモットーですので、まだ時間に余裕がございます。
公園でぼんやりとしていると、日当たりの良い場所で、数人のご高齢の方々が楽しそうに集まっているのを見つけました。
彼らの会話に耳を澄ますと、「怖かったよぉ、生きた心地がしなかった」「死ぬかと思った」「怖すぎる、世も末だ」などという声が聞こえてきました。
おやおや、怖い話ですか?私も死神、怖い話はぞくぞくしますね。最近冥界でも、怖い話の配信なんかが流行ってるんですよ。人生のベテランの方々お話、なかなかのレベルの怖い話が期待できそうです。
気配を消して、ベンチの後ろに行ってみましょう。私は死神ですので、彼らのステータスたとえば、年齢などをみることができます。
パープルの髪色、くすんだ紫のジャージに身を包んだ、紫婆さんこと梅婆さんが、みんなに話をふりました。
「あたしゃねぇ、昨日うっかり転びそうになってさ。死ぬかと思った。ああ、怖かった」
(死神ツッコミ:転びそう。「そう」なら、まだ生きてるじゃないか)
隣りの上品なおばぁ様が心配そうな顔でうなづいています。
「梅ちゃんったら、転ばなくてよかった。ホント怖いわよね。骨折して寝たきりになる人多いのよ。で、どこで転びそうになったの?」
「サッカー場で」
「あら地元チームの応援?……なんだっけ、あれよあれ!!!」
上品ばぁ様がサッカーチーム名に頭を抱えるなか、紫婆さん言いました。
「ちがうよ、あたしがサッカーしてるんだよ。で、ゴール決めて、ゴールパフォーマンスで、ちと、はしゃぎすぎたのさ」
(死神ツッコミ:80歳でゴールパフォーマンス? そっちの方が怖いわ!)
「私は、電話が怖いのよ」
うんうんと、みなが同意しています。
「ホント、オレオレ詐欺に、警官名乗る詐欺にってねぇ」
「うちはもう留守番電話にして、出ないようにしてるよ」
「まったく、怖い世の中だよな」
(たしかにこのところ私の仕事もやりにくくなりました。
死神ですと言うと、証明書出せとか、本物か信じられないとか。やたら疑われるんですよね)
きっぷのよさそうな職人風のおじいさんが、次の怖いものを話だしました。
「俺が怖いのはスマホ」
「ああ、なんか変なところ押しそうで怖いよね」
「ガラゲーにせっかく慣れたと思ったらねぇ」
職人おじいさんは、うーんとうつむいた顔をパッと上げ、
「いや、真っ暗画面に映る、俺の顔が怖いんだ……」
(死神ツッコミ:たしかにあれは、突然出てきますよね、しかも無防備の真実の顔が。
でもまぁ、私のこの辛気臭い顔よりはましでしょう)
死神はため息をついた。私の思う、「怖い」とは、そう!魂の断末魔!涙すら出ないほどの肉体の苦痛!
抗うすべもない絶望……そんなイメージだったのですが。
なんというか、のんきでございますね。
茂さんと呼ばれた男が、ハッと時計を見て立ち上がった。
「やべぇ!こんな時間だ!今日はな、帰ったら奥さんに頼まれたゴミ出しを忘れててさ、それを怒られるのが怖いんだよ!もう、奥さんの顔を見るのが、地獄の閻魔様より怖い!」
(死神ツッコミ:閻魔様は私の同僚だぞ。奥さんの方が怖いって……マジでございますか)
お年寄りたち全員が、茂さんの話に大声で、明るく、たくましい笑い声を上げた。
「頑張れよ!」「それこそ本当の恐怖だ!」
うーむ、まったく、人間は小さなことで恐ろしがり、そしてすぐに笑う。死神の私には、『奥さんに怒られるのが怖い』というのは、理解できない恐怖ですねぇ。
こんなところでのんびりしていられない。3時間前行動をとったはずが、仕事に遅刻しそうであります。こんな方たちを相手にしている場合ではありません。
ようやく仕事を終え、冥界へ戻った私。その数分後、冥王様の執務室から、魂の断末魔を彷彿とさせる、悲鳴にも似た声が響き渡ったのであります。
「ひー、お許しを―!!」
「定刻に間に合わんとは、たるんどるぞ!二度と繰り返すな、この愚か者が!」
魂の断末魔――冥王の怒号に震える心。
肉体の苦痛――鞭に撃たれ、床に這いつくばる膝。
未来への絶望――給料減給の宣告。
全部そろってる!
私は床に這いつくばり、全身を震わせながら許しを乞いました。
これが……これこそが、本当の恐怖……。
※
表紙のイラスト
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