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地上のカップうどんが怖すぎる件
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「カップ麺できた」 と思ったら、まだ残り48秒あった。時計のチクタクが耳に響く。
いつもなら、時計なしでもジャストで時間ぴったりなのに、今日の俺は疲れてるんだな。 左肩がずっしりと重い。もしやまだ憑かれているのでは?
契約相手ともめてうっかり生き霊を飛ばされ、払うのに手間取ったのも疲れた理由だ。 「営業って大変だよなぁ。悪魔の営業ってやつは、もっと辛いよなぁ」 俺、ベリアルはぐったりと床に転がった。
今晩は外食するのが面倒になって、カップ麺を買いにコンビニ「ヘブンマート」魔界2丁目店に寄ったんだった。
『激辛血の池地獄ラーメン』新発売のポスターにウキウキする俺、いや待てよ。 今日は地上で『カップうどん』とやらを手に入れたんだっけ。それを食べてみることにしよう。
「疲れた日には、いい水で作るに限る!」 俺は棚から「天然エンジェルウォーター」のペットボトルを手に取った。魔界じゃ高級品だが、たまには自分へのご褒美だ。
雑誌コーナーの魔界転職雑誌を横目にちらりと見ながらレジで会計を済ませ、疲れた足をひきずり自宅マンション『アクマデ』まで戻った。
※
「今度こそ、カップ麺できた」 蓋を開けると幸せの湯気が白く立ち込めた。
「カップうどんって初めてなんだよなぁ、後輩たち、あっさりして、うまいっていってたっけ」
具は茶色い揚げとワカメという緑の海藻に端だけピンク色のかまぼこ。そして白い麺。
スープは透明感のある紫色でそれほど脂ぎってはいない。
うどんって、なんて言うか、全体的に地味なんだな。
味もあっさりだ。
普段のギトギトの地獄ラーメンに比べると、あまりに清らかで。 「でも、なんつうか、染みるな」 疲れている体にはちょうどいい。
麺は平たく幅広で珍しい。そしてモチモチとして食べ応えがある。俺は一気に麺をすすった。
うわぁ、タイミング最悪で電話だ。仲のいい同僚のバラムから。
「わりぃ、金額が合わなくて」 ホント!悪魔の営業職って大変だ!
「俺、地上のカップうどんってヤツ食ってるとこなんだ。すぐ食べ終わるから、待っててくれよ」
「しかたねぇ、早く食ってくれよ」
やれやれ残りを急いで食べてしまおう。麺が伸びてしまう。
「ん?」 箸で麺を持ち上げる。妙に重い。長い。明らかに長い。器に戻したはずの麺が、もうテーブルの端までにゅるりと這い出ている。
「おい、待て待て」 麺は止まらない。床に垂れ下がり、這うように伸びていく。
ウニウニと意識を持ったように麺がうごめく。 俺は足元の麺を踏まないように慌ててスマホを掴んだ。
「もしもし、バラム?悪い、ちょっと助けてくれ」
「どうした?」
「カップ麺が伸びて大変なんだ!」
「は?麺が伸びた?そりゃ大変だけど、なんともならねぇよ。次から気をつけな」
「マジだ、マジで伸びてる!」
キッチンの方まで到達した。いや、冷蔵庫の裏に回り込んでる。
「うーん、延びた麺も意外とうまいぜ!優しい食感なんちって」
「いやそれは違う!ちょっと、お前どこまで行くんだ!」
気づけば天井だ。白いヒモのような麺たちが黒い天井を這っている。カーテンレールにきゅっと絡まった。照明器具にもグルグルと巻きついてる。
「助けてくれよ!部屋が、部屋が麺で埋まるんだ……!」
「疲れすぎてんだよお前」
「ホントだよ!信じてくれよ」
「で、スープの方はどうなんだ?地上のカップうどんって美味いらしいな。出汁としょうゆの茶色いスープなんだっけ?」
「スープは紫だ!わ~カップめんの入れ物から紫のスープがごぼごぼあふれてる。ヤバい!紫色の血の池地獄!いや違う!これ、なんかスゲー清らかだ!」
淡い紫色のソーダ水のような泡が泉のようにコポコポ湧き出て、まるで女神さまでも登場しそうな雰囲気だ。
でもとにかく無限にスープも麺もあふれてくる。
「あはは、そりゃ無限に食べられていいな!」
祝福された麺たちは喜びに細い体を揺らし、扉から廊下へと這い出していく。
そして迷わず、隣の部屋のドアの隙間へ。
「――って、うわああああああ!何だこれええええ!」
電話が途切れた。
いや、切れてない。壁の向こうから直接聞こえている。
「バラム、お前……隣だったよな」
もう遅い。
いつもなら、時計なしでもジャストで時間ぴったりなのに、今日の俺は疲れてるんだな。 左肩がずっしりと重い。もしやまだ憑かれているのでは?
契約相手ともめてうっかり生き霊を飛ばされ、払うのに手間取ったのも疲れた理由だ。 「営業って大変だよなぁ。悪魔の営業ってやつは、もっと辛いよなぁ」 俺、ベリアルはぐったりと床に転がった。
今晩は外食するのが面倒になって、カップ麺を買いにコンビニ「ヘブンマート」魔界2丁目店に寄ったんだった。
『激辛血の池地獄ラーメン』新発売のポスターにウキウキする俺、いや待てよ。 今日は地上で『カップうどん』とやらを手に入れたんだっけ。それを食べてみることにしよう。
「疲れた日には、いい水で作るに限る!」 俺は棚から「天然エンジェルウォーター」のペットボトルを手に取った。魔界じゃ高級品だが、たまには自分へのご褒美だ。
雑誌コーナーの魔界転職雑誌を横目にちらりと見ながらレジで会計を済ませ、疲れた足をひきずり自宅マンション『アクマデ』まで戻った。
※
「今度こそ、カップ麺できた」 蓋を開けると幸せの湯気が白く立ち込めた。
「カップうどんって初めてなんだよなぁ、後輩たち、あっさりして、うまいっていってたっけ」
具は茶色い揚げとワカメという緑の海藻に端だけピンク色のかまぼこ。そして白い麺。
スープは透明感のある紫色でそれほど脂ぎってはいない。
うどんって、なんて言うか、全体的に地味なんだな。
味もあっさりだ。
普段のギトギトの地獄ラーメンに比べると、あまりに清らかで。 「でも、なんつうか、染みるな」 疲れている体にはちょうどいい。
麺は平たく幅広で珍しい。そしてモチモチとして食べ応えがある。俺は一気に麺をすすった。
うわぁ、タイミング最悪で電話だ。仲のいい同僚のバラムから。
「わりぃ、金額が合わなくて」 ホント!悪魔の営業職って大変だ!
「俺、地上のカップうどんってヤツ食ってるとこなんだ。すぐ食べ終わるから、待っててくれよ」
「しかたねぇ、早く食ってくれよ」
やれやれ残りを急いで食べてしまおう。麺が伸びてしまう。
「ん?」 箸で麺を持ち上げる。妙に重い。長い。明らかに長い。器に戻したはずの麺が、もうテーブルの端までにゅるりと這い出ている。
「おい、待て待て」 麺は止まらない。床に垂れ下がり、這うように伸びていく。
ウニウニと意識を持ったように麺がうごめく。 俺は足元の麺を踏まないように慌ててスマホを掴んだ。
「もしもし、バラム?悪い、ちょっと助けてくれ」
「どうした?」
「カップ麺が伸びて大変なんだ!」
「は?麺が伸びた?そりゃ大変だけど、なんともならねぇよ。次から気をつけな」
「マジだ、マジで伸びてる!」
キッチンの方まで到達した。いや、冷蔵庫の裏に回り込んでる。
「うーん、延びた麺も意外とうまいぜ!優しい食感なんちって」
「いやそれは違う!ちょっと、お前どこまで行くんだ!」
気づけば天井だ。白いヒモのような麺たちが黒い天井を這っている。カーテンレールにきゅっと絡まった。照明器具にもグルグルと巻きついてる。
「助けてくれよ!部屋が、部屋が麺で埋まるんだ……!」
「疲れすぎてんだよお前」
「ホントだよ!信じてくれよ」
「で、スープの方はどうなんだ?地上のカップうどんって美味いらしいな。出汁としょうゆの茶色いスープなんだっけ?」
「スープは紫だ!わ~カップめんの入れ物から紫のスープがごぼごぼあふれてる。ヤバい!紫色の血の池地獄!いや違う!これ、なんかスゲー清らかだ!」
淡い紫色のソーダ水のような泡が泉のようにコポコポ湧き出て、まるで女神さまでも登場しそうな雰囲気だ。
でもとにかく無限にスープも麺もあふれてくる。
「あはは、そりゃ無限に食べられていいな!」
祝福された麺たちは喜びに細い体を揺らし、扉から廊下へと這い出していく。
そして迷わず、隣の部屋のドアの隙間へ。
「――って、うわああああああ!何だこれええええ!」
電話が途切れた。
いや、切れてない。壁の向こうから直接聞こえている。
「バラム、お前……隣だったよな」
もう遅い。
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