脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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ひと働き

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リディアはお布団から顔を出し、ぼんやりと天井を見つめていた。
フロアは静まり返り、ダンジョンの中とは思えないほど平穏な朝だった。
メリーちゃんが小さく鳴いて体を伸ばすのを見て、リディアはようやく布団から這い出す。

「さ、朝ごはんにしよっか」そう言ってリディアはメリーちゃんに笑いかけながら、綿菓子毛から簡単な朝食セットを取り出してもらった。
パンと干し肉、少しの果物と温かいスープ。冒険中とは思えない充実ぶりだ。

食事を楽しんでいると、階段の方から急に慌ただしい足音が聞こえてきた。
「ん?誰か来たみたいだね」

リディアが振り向くと、数人の冒険者たちがフロアに姿を現した。全員が疲れ切った表情で、一部は怪我をしている。

冒険者たちはリディアとメリーちゃんの姿を見て一瞬固まった。
広げられたお布団や朝食の様子がまるでピクニックのように見えたのだろう。目を丸くして言葉を失っている。

「えっと…こんにちは?」リディアはスープを飲みながら手を振る。

「こんなところで…くつろいでるのか?」傷だらけの冒険者の一人が信じられないというように声をあげた。「ここ、ダンジョンだぞ!」

「そうだよー。でも、ここ静かで過ごしやすいの」リディアは気にした様子もなく答えると、冒険者たちに視線を向けた。「それより、みんな怪我してるね。どこが痛いの?」

冒険者たちは戸惑いつつも、リディアの穏やかな声に促され、重い足取りで彼女の前に座り込んだ。リディアは傷口を確認しながら魔力を込めて治癒魔法をかけていく。

「助かるよ、まさかこんなところで治療してもらえるなんて…」一人が感謝の言葉を漏らした。

「大丈夫、これでしばらくは痛くないはず。あとは無理せず帰ってね」リディアは微笑んで手を止めた。メリーちゃんも彼らに寄り添うように近づき、柔らかな毛をふわりと揺らした。

「本当にありがとう。君がいなかったら危なかったよ」リーダー格の男が深々と頭を下げた。

「気にしないで、それより安全に帰ってね」リディアは軽く手を振ると、冒険者たちは再び階段を上り、ダンジョンを引き返していった。

残されたリディアは、静かになったフロアを見回しながらメリーちゃんに話しかけた。「なんだか忙しい朝になっちゃったね。でも、これも冒険のうちかな」

メリーちゃんが「メェ」と一声返すのを聞いて、リディアは再び座り直し、冷めたスープを飲み干した。静けさを取り戻したフロアには、彼女の小さな満足げな笑顔だけが広がっていた。
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