脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

文字の大きさ
111 / 209

サウナ爆誕

しおりを挟む
溶岩フロアのお風呂で、リディアはアヒルさんを手に噴水の水流に乗せて遊んでいた。水が勢いよくアヒルさんを押し流すたびに「わぁ! 速い!」と笑顔で楽しむ。メリーちゃんはふわふわ毛でアヒルさんを受け止め、タフィーちゃんはチョコレート液をほんの少し垂らして、アヒルさんを美味しそうに見せかける遊びに加わっている。

そんな和やかな時間の中、ふと、遠くのマグマがボコボコっとはじける音が聞こえた。リディアはその音に耳を澄ませ、噴き上がる熱気の揺らぎを眺めながら「はっ」とひらめいた。

「サウナだ!」
リディアは勢いよく立ち上がり、アヒルさんを抱えたまま、楽しそうに笑った。
「この溶岩フロアなら、サウナを作るのにぴったりだよ! お風呂だけじゃなくて、蒸気浴もできたら完璧じゃない?」

「メェ?」
メリーちゃんは首を傾げながらも、リディアの興奮した声に応えるように小さく鳴いた。タフィーちゃんもぷるっと跳ね、リディアのアイデアに賛成しているようだ。

リディアは秘密基地に戻ると、ひよこ柄のエプロンをつけて机に向かった。アイディアをノートに書き込みながら、サウナの構想を練り始める。
「まず、サウナの部屋は溶岩の熱をうまく利用して作るとして……蒸気を発生させるには、水入りの壺を使えばいいよね! それから、温かい飲み物も準備しておきたいなぁ。ハーブティーとか?」

メリーちゃんは綿菓子毛からハーブの束を取り出し、リディアに差し出した。
「さっすがメリーちゃん! これなら香りもリラックス効果もバッチリだね!」
タフィーちゃんも、ほんのり甘い香りのするチョコレートブロックを作り出し、「おやつも忘れないでね」と言わんばかりの動きを見せる。

翌日、リディアは溶岩フロアに足を運び、テントを設置し始めた。メリーちゃんがふわふわ毛から取り出した布を広げ、柱となる支柱を立てる。タフィーちゃんは布地をぷるぷるの体で押さえつつ、甘い香りのチョコレートブロックを飾りとして配置した。

テントの入り口にはハート型のフレームを飾り、リボンを結んで仕上げた。テントの中には水を入れたおしゃれな壺を置き、蒸気がふんわり漂う仕掛けを追加。リディアは最後に、アヒルさんや可愛らしいクッションをテントの中に並べた。
「できた! ふわふわでラブリーなサウナ完成!」
彼女は満足そうに手を叩き、メリーちゃんとタフィーちゃんをテントの中に招き入れた。

サウナテントの中は、溶岩フロアの熱を利用した蒸気で満たされている。リディアは用意したハーブティーを片手にリラックスしながら、目を閉じた。
「ふわふわのテントに包まれて蒸気浴、最高の癒しだよね!」
メリーちゃんはテントの中でふわふわ毛を膨らませ、まるで蒸気を楽しんでいるようだった。タフィーちゃんはぷるぷるの体を温めながら、少しずつ甘い香りを漂わせている。

こうして溶岩フロアには、ラブリーテント型のサウナが誕生した。蒸気浴の後、リディアはメリーちゃんやタフィーちゃんとテントの中で横になりながら、次の楽しい計画を思い描いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。

和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。 黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。 私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと! 薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。 そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。 目指すは平和で平凡なハッピーライフ! 連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。 この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。 *他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。

私は、聖女っていう柄じゃない

波間柏
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。 いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。 20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。 読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

処理中です...