脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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食材探しの冒険

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アラニスの露店を後にしたリディアは、ふとメリーちゃんの綿菓子毛を撫でながら考えた。
「そろそろごはんの補充が必要かな？」
メリーちゃんが「メェ！」と鳴いて、まるで賛成するようにふわふわと体を揺らした。

行きつけの街の料理屋さんの前に到着すると、漂う美味しそうな香りにリディアのお腹がぐぅっと鳴った。
「うん、やっぱりここの料理が一番だよね！」
店の扉を開けると、厨房からは賑やかな音と、食欲をそそる匂いが漂ってくる。リディアの顔がぱっと明るくなった。

「いらっしゃい、リディアちゃん！」
カウンターの向こうから笑顔で迎えたのは、店主の恰幅のいい中年の男性だった。この料理屋の料理は、リディアのお気に入りの味で、サンドイッチやオムライス、シチューなど、どれを頼んでも大満足なのだ。

「こんにちは！今日は補充のお願いに来ました。オムライスはもちろん、サンドイッチとシチュー、それから果物の盛り合わせもください！」
リディアが注文を伝えると、店主は「任せておきな！」と頼もしく応え、さっそく厨房へ指示を飛ばし始めた。

リディアは店内でしばしのんびりと待つ。できたての料理が次々と運ばれてきて、メリーちゃんが綿菓子毛の中にそれを吸い込んでいく様子に、周りの客たちは驚いたように目を丸くしていた。
「うわぁ、すごい羊だな……」
「なんでも収納できるのか？」
そんな声がちらほら聞こえてくるが、リディアは慣れた様子で微笑みながら、「メリーちゃんは優秀なんだよ！」と胸を張って答えた。

料理を吸い込むメリーちゃんの動きを見守っていた店主が、ふと思い出したようにリディアのほうへ歩み寄ってきた。
「そうだ、リディアちゃん。ちょっとお願いがあるんだが、聞いてくれるか？」
「お願い？」
リディアは首をかしげながら、店主の顔を見上げた。その表情は真剣で、何か困りごとを抱えているようだった。

「実はな、この間うちの仕入れ先でトラブルがあってな。新しいレシピの材料が手に入らなくて困ってるんだ。リディアちゃんの冒険の腕を借りられないかと思って……」
店主はそう言いながら、厨房の奥から小さなメモ用紙を取り出した。そこには材料のリストが書かれている。

リディアは店主から聞いた話に興奮して、両手を胸の前で握りしめた。

「かくれんぼオバケキノコって、どんなキノコなんですか？」

店主は笑いながら説明した。「普通のオバケキノコに混じって生えてるんだけど、動きが速いし、葉っぱや枝の下に隠れるのが上手なんだ。だからかくれんぼオバケキノコって呼ばれてるんだよ。」

リディアの目が輝いた。「動くキノコってだけで面白いのに、隠れるのも得意だなんて、絶対楽しいじゃないですか！よーし、これは絶対捕まえないと！」

メリーちゃんが「メェ！」と鳴き、やる気を見せるようにふわふわの毛を揺らした。タフィーちゃんも「ぷるぷるん！」と小さく跳ねて準備万端だ。

店主は少し不安そうに続けた。「でも、捕まえるのは簡単じゃないぞ。あいつら、本当にしぶといからな。それに普通のオバケキノコと見分けるのも難しいんだ。よーく観察してみてくれ。」

「大丈夫！私たちのチームワークを舐めないでくださいね！」
リディアは胸を張り、冒険道具を取り出した。秘密基地から持ってきた小さな網やポーションも準備し、さっそく森へ向かうことにした。

山の入り口に到着すると、リディアたちは足元をじっくり観察しながらキノコの群生地を探し始めた。森の奥へ進むにつれ、地面にちらほらと普通のオバケキノコが姿を見せ始めた。

「これが普通のオバケキノコだよね……でも、かくれんぼの方はどれかな？」
リディアはしゃがみ込み、慎重にキノコたちを見つめた。

その時、一つのキノコが突然ピョンと跳ね、茂みの中に飛び込んでいった。

「あっ！今のがかくれんぼオバケキノコかも！」
リディアは慌てて立ち上がり、追いかけ始めた。メリーちゃんとタフィーちゃんもそれに続く。

かくれんぼオバケキノコは茂みの間をすばやく移動し、時折小さな木の影に隠れてはリディアたちを翻弄する。その素早さに、リディアは思わず苦笑した。

「ほんとに隠れるの上手だなぁ……でも、負けないよ！」
リディアは色替わりポーションを取り出し、キノコの通り道に撒いた。すると、ポーションの色がキノコの周りに広がり、影の中でもわずかな光を放つようになった。

「これなら見失わないはず！」
リディアは再び走り出し、メリーちゃんとタフィーちゃんもそれぞれ得意の能力でサポートする。メリーちゃんはふわふわ毛を広げてキノコの逃げ道を塞ぎ、タフィーちゃんは甘い香りでキノコを誘き寄せようとする。

ついにかくれんぼオバケキノコは逃げ場を失い、小さな木の根元で動きを止めた。

「やったー！捕まえた！」
リディアは笑顔を浮かべながら、小さな網でキノコをそっと捕獲した。網の中でピョンピョン跳ねるキノコを見て、リディアは誇らしげに言った。

「これで一つ目の材料はクリアだね！次はホウレンソウを探しに行こう！」
冒険はまだまだ続く――リディアたちは次なる目標に向かって森を進んでいった。

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