脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

文字の大きさ
169 / 209

店主の力作

しおりを挟む
リディアたちは森を抜け、山奥へと進んでいった。次の目標は「珍しいホウレンソウ」。店主の話では、このホウレンソウは湿気の多い山間の崖付近に生えているらしい。葉は深い緑色で、独特の光沢があるという。

「ホウレンソウが崖に生えるなんて、きっとすごく丈夫な植物なんだろうね!」
リディアは目を輝かせながら、道なき道を進んでいった。タフィーちゃんはぷるぷると跳ねながら、先行して草木の間を探り、メリーちゃんは足元の湿った地面をくんくんと嗅ぎながら歩いている。

しばらく歩くと、谷底へと続く小さな崖が目の前に現れた。その縁にはいくつもの植物が生い茂り、その中にリディアが探しているホウレンソウらしきものが見えた。深緑の葉が陽の光を受けてキラリと輝いている。

「見つけた! あれがホウレンソウだね!」
リディアは崖の縁に近づき、慎重に下を覗き込んだ。ホウレンソウは岩場の隙間に根を張り、しっかりと崖にしがみついている。

「でも、どうやってあそこまで行けばいいのかな?」
リディアは腕を組んで考え込んだ。すると、タフィーちゃんがぷるんと体を揺らし、リディアを振り返った。どうやらタフィーちゃんが何かを思いついたらしい。

「もしかして、タフィーちゃんが手伝ってくれるの?」
リディアがそう尋ねると、タフィーちゃんは崖をぴょんぴょんと跳ねながら、体の一部を固めて小さなチョコレートの橋を作り始めた。

「すごい! タフィーちゃん、ありがとう!」
リディアは慎重にチョコの足場に足を乗せ、一歩ずつホウレンソウの生えている場所に向かって進んだ。メリーちゃんはリディアが落ちないように、近くで見守っている。

ついにホウレンソウの近くにたどり着いたリディアは、崖に手を伸ばし、慎重に葉を摘み取った。その瞬間、葉がキラリと光り、周囲にほんのりとした甘い香りが漂った。

「これが珍しいホウレンソウ……すごく綺麗!」
リディアは摘んだ葉をそっとポーチにしまい、満足そうに微笑んだ。

「これで二つ目の材料もゲット! 次は最後のチーズだね!」
リディアたちはタフィーちゃんの作った橋を戻りながら、次の目的地であるチーズ工房を目指すことにした。

再び絨毯に乗り込んだリディアたちは、風に乗って人里離れたチーズ工房を目指した。青空の中を進む絨毯からは、広大な草原が広がり、ぽつんと立つ古びたチーズ工房が見えてきた。

「見えてきたね! あそこでどんなチーズが作られてるのか、楽しみだなぁ!」
リディアはワクワクした様子で前方を見つめながら、絨毯を降りて工房へと向かう。

扉を開けると、優しい香りとともに、工房の中で忙しそうに働く職人の姿が目に入った。リディアが訪問を告げると、職人は穏やかな笑みを浮かべながら応対してくれた。

「珍しいチーズを探しているんです。お料理の材料にしたいんですが……」
リディアの説明に職人は頷き、小さな扉の奥へ案内してくれた。

「この奥で熟成させているチーズが、君が探しているものかもしれない。見ていきなさい。」
職人が扉を開けると、そこには大きな棚に並べられた丸いチーズが所狭しと置かれていた。中でも、奥の方で金色に輝くようなチーズが一際目を引く。

「これが君におすすめの一品だ。山で育てた羊たちのミルクを使って作った、特別なチーズさ。」
リディアは目を輝かせながらチーズに近づき、そっと手に取った。

「すごい……これが最後の材料だね! ありがとうございます!」
材料が揃ったリディアたちは、礼を言って工房を後にした。そして、絨毯に乗って街へ戻り、料理屋の店主に届ける準備を始めるのだった。

リディアたちは無事に街に戻り、料理屋の店主に材料を手渡した。店主は目を輝かせながら、それぞれの素材を丁寧に確認する。

「おお、これは素晴らしい! どれも最高の状態で届けてくれたね。本当にありがとう。これで新メニューを完成させることができるよ。」
店主は早速キッチンへと駆け込み、リディアたちはテーブル席で新メニューが完成するのを待つことにした。

「やっと揃ったね。どんな料理になるんだろう?」
リディアは椅子に腰掛けながら、嬉しそうに期待を膨らませる。メリーちゃんは「メェ!」と答え、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と跳ねて同意している。

しばらくして、店主が自信たっぷりに新メニューを運んできた。それは、黄金色に輝くチーズがとろりと溶けたグラタンだった。表面にはホウレンソウの緑と、薄くスライスされたオバケキノコが美しく散りばめられている。

「これが新メニュー、『山の幸グラタン』だよ。素材の味を活かすため、シンプルに仕上げてみた。さぁ、召し上がれ!」
店主の声に促され、リディアは早速フォークを手に取った。グラタンの中には、濃厚なホワイトソースとたっぷりの具材が詰まっている。

「いただきます!」
リディアはフォークでひと口分を掬い、口に運ぶ。その瞬間、濃厚なチーズのコクとホウレンソウの爽やかな香り、そしてオバケキノコの旨みが一度に広がった。

「おいしい……! すごくおいしいよ!」
リディアは感動しながら、次々とグラタンを口に運ぶ。メリーちゃんも小さな器に取り分けてもらい、「メェ!」と嬉しそうに食べている。タフィーちゃんは香りを嗅ぎながら、グラタンの表面をぷるぷると体で味わっているようだ。

「本当に、がんばったかいがあったよ!」
リディアは満足そうに笑いながら、店主にお礼を言った。

「君たちのおかげで素晴らしい料理ができたよ。この『山の幸グラタン』は、店の新しい看板メニューになると思う。本当にありがとう!」

食事を終えたリディアたちは、満腹になったお腹をさすりながら店を後にした。街の空は夕焼けに染まり、心地よい風が吹いている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

処理中です...