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セリルのもじもじ
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秘密基地のリビングには、暖かで穏やかな時間が流れていた。ふかふかのクッションが散らばるリビングの中央で、リディアはピンクの毛がふわふわと揺れるメリーちゃんに寄りかかりながら絵本を開いていた。
「むかしむかし、あるところに――」
リディアは表情豊かに読み上げ、メリーちゃんは「メェ」と小さく鳴きながら耳を傾けている。メリーちゃんにとって、リディアの絵本の読み聞かせはお気に入りのひとときであり、いつも楽しみにしていた。
その横では、タフィーちゃんがぷるぷると体を弾ませながら、蜂蜜チョコの量産に勤しんでいた。小さなテーブルの上には、きらきらと光る蜂蜜が混ぜられたチョコレートの型がずらりと並んでいる。タフィーちゃんは体の一部を使って器用にチョコを形作り、固める作業を繰り返していた。
「ぷるぷるん!」
完成したチョコをタフィーちゃんが得意げに見せると、リディアは「わぁ、上手だね! 今日もたくさん作れたね!」と拍手を送った。タフィーちゃんの蜂蜜チョコは秘密基地の住人たちにとっても大好物であり、最近ではくまさんに届ける分も含めて量産が進んでいる。
「次のお話はね、冒険者の絵本だよ!」
リディアが絵本を新しいページにめくると、メリーちゃんはうとうとと瞼を閉じかけていた。リディアの読み聞かせは心地よい声の調子と、柔らかな空気感が相まって、最高の子守唄でもあったのだ。
タフィーちゃんも、蜂蜜チョコを作る手を一瞬止めると、リディアの方を見てぷるっと体を揺らした。お話に興味が湧いたのだろうか。
「ねえタフィーちゃん、作業の合間にひとつ味見してもいい?」
リディアがそっと尋ねると、タフィーちゃんは「ぷるん!」と嬉しそうに跳ね、チョコのひとつをリディアに差し出した。
リディアは小さなチョコを手に取り、一口かじる。カリッとした外側のチョコの中から、とろりと濃厚な蜂蜜があふれ出し、甘い香りが口いっぱいに広がった。
「うん、やっぱり美味しい! タフィーちゃんの作る蜂蜜チョコ、最高だね!」
満足そうに微笑むリディアの横で、メリーちゃんは「メェ……」と小さく鳴きながらすっかりリラックスした様子だった。秘密基地で過ごす、こんな穏やかな日常もまた、リディアたちにとってかけがえのない宝物だった。
リディアはふと蜂蜜チョコの包みを手に取り、「そうだ、アラニスにも届けてあげよう!」と思いついた。アラニスは甘いものが大好きで、きっと喜んでくれるだろう。
街に着くと、アラニスの露店が人々で賑わっていた。リディアが近づくと、露店の前に見覚えのある金髪の青年の姿があった。セリルだった。
「あれ、セリル? こんなところで何してるの?」と声をかけようとしたが、リディアは思わず足を止めた。セリルの顔はいつになく緊張していて、表情がこわばり、どこか仏頂面のようにも見えた。
アラニスと何かを話しているらしいが、距離があって会話の内容までは聞き取れない。ぎこちない仕草でアラニスに頭を下げ、会話を終えたセリルは、ほっとしたような、それでいて微妙に気まずそうな顔をして露店を離れていった。
「ふふっ、セリルったら……何だか面白いことになってるみたい。」
リディアはにやにやしながらセリルの後を追った。すぐに彼の背中を見つけて声をかける。
「ねえセリル、どうしたの? あんな仏頂面してアラニスと話してたけど?」
驚いて振り返ったセリルは、ばつが悪そうに眉を寄せた。
「リディア……そんな風に言わないでください。ただちょっと、挨拶をしただけです。」
「挨拶って、あんなに緊張するものなの?」リディアは肩をすくめて笑いをこらえる。
セリルは目を伏せて溜息をついた。「……その、こういう場面には慣れていないだけです。アラニスさんはとても親切でしたけど……」
「あー、なるほどね。」
リディアは腕を組んでうんうんと頷くと、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ねえセリル、ニコニコポーションいる? それで表情を柔らかくしたら、次はもうちょっとマシになるんじゃない?」
「……リディア、それはやめてください。」セリルは真っ赤な顔でリディアを睨むが、その反応が余計にリディアを笑わせる。
「冗談だってば! でも、本当にいるなら持ってるよ? いつでも言ってね。」
「……必要ありません!」
セリルはそっけなく答えたものの、その頬は薄っすら赤く染まっていた。
その後、リディアはアラニスの露店へ向かい、蜂蜜チョコを渡した。アラニスは笑顔で受け取り、「これは新作? 楽しみだわ!」と喜んでくれた。
リディアはそんなアラニスの姿を見て、先ほどのセリルの様子を思い出し、思わずクスクスと笑ってしまった。
「むかしむかし、あるところに――」
リディアは表情豊かに読み上げ、メリーちゃんは「メェ」と小さく鳴きながら耳を傾けている。メリーちゃんにとって、リディアの絵本の読み聞かせはお気に入りのひとときであり、いつも楽しみにしていた。
その横では、タフィーちゃんがぷるぷると体を弾ませながら、蜂蜜チョコの量産に勤しんでいた。小さなテーブルの上には、きらきらと光る蜂蜜が混ぜられたチョコレートの型がずらりと並んでいる。タフィーちゃんは体の一部を使って器用にチョコを形作り、固める作業を繰り返していた。
「ぷるぷるん!」
完成したチョコをタフィーちゃんが得意げに見せると、リディアは「わぁ、上手だね! 今日もたくさん作れたね!」と拍手を送った。タフィーちゃんの蜂蜜チョコは秘密基地の住人たちにとっても大好物であり、最近ではくまさんに届ける分も含めて量産が進んでいる。
「次のお話はね、冒険者の絵本だよ!」
リディアが絵本を新しいページにめくると、メリーちゃんはうとうとと瞼を閉じかけていた。リディアの読み聞かせは心地よい声の調子と、柔らかな空気感が相まって、最高の子守唄でもあったのだ。
タフィーちゃんも、蜂蜜チョコを作る手を一瞬止めると、リディアの方を見てぷるっと体を揺らした。お話に興味が湧いたのだろうか。
「ねえタフィーちゃん、作業の合間にひとつ味見してもいい?」
リディアがそっと尋ねると、タフィーちゃんは「ぷるん!」と嬉しそうに跳ね、チョコのひとつをリディアに差し出した。
リディアは小さなチョコを手に取り、一口かじる。カリッとした外側のチョコの中から、とろりと濃厚な蜂蜜があふれ出し、甘い香りが口いっぱいに広がった。
「うん、やっぱり美味しい! タフィーちゃんの作る蜂蜜チョコ、最高だね!」
満足そうに微笑むリディアの横で、メリーちゃんは「メェ……」と小さく鳴きながらすっかりリラックスした様子だった。秘密基地で過ごす、こんな穏やかな日常もまた、リディアたちにとってかけがえのない宝物だった。
リディアはふと蜂蜜チョコの包みを手に取り、「そうだ、アラニスにも届けてあげよう!」と思いついた。アラニスは甘いものが大好きで、きっと喜んでくれるだろう。
街に着くと、アラニスの露店が人々で賑わっていた。リディアが近づくと、露店の前に見覚えのある金髪の青年の姿があった。セリルだった。
「あれ、セリル? こんなところで何してるの?」と声をかけようとしたが、リディアは思わず足を止めた。セリルの顔はいつになく緊張していて、表情がこわばり、どこか仏頂面のようにも見えた。
アラニスと何かを話しているらしいが、距離があって会話の内容までは聞き取れない。ぎこちない仕草でアラニスに頭を下げ、会話を終えたセリルは、ほっとしたような、それでいて微妙に気まずそうな顔をして露店を離れていった。
「ふふっ、セリルったら……何だか面白いことになってるみたい。」
リディアはにやにやしながらセリルの後を追った。すぐに彼の背中を見つけて声をかける。
「ねえセリル、どうしたの? あんな仏頂面してアラニスと話してたけど?」
驚いて振り返ったセリルは、ばつが悪そうに眉を寄せた。
「リディア……そんな風に言わないでください。ただちょっと、挨拶をしただけです。」
「挨拶って、あんなに緊張するものなの?」リディアは肩をすくめて笑いをこらえる。
セリルは目を伏せて溜息をついた。「……その、こういう場面には慣れていないだけです。アラニスさんはとても親切でしたけど……」
「あー、なるほどね。」
リディアは腕を組んでうんうんと頷くと、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「ねえセリル、ニコニコポーションいる? それで表情を柔らかくしたら、次はもうちょっとマシになるんじゃない?」
「……リディア、それはやめてください。」セリルは真っ赤な顔でリディアを睨むが、その反応が余計にリディアを笑わせる。
「冗談だってば! でも、本当にいるなら持ってるよ? いつでも言ってね。」
「……必要ありません!」
セリルはそっけなく答えたものの、その頬は薄っすら赤く染まっていた。
その後、リディアはアラニスの露店へ向かい、蜂蜜チョコを渡した。アラニスは笑顔で受け取り、「これは新作? 楽しみだわ!」と喜んでくれた。
リディアはそんなアラニスの姿を見て、先ほどのセリルの様子を思い出し、思わずクスクスと笑ってしまった。
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