ルミエール・ヴェールの輝き―キャンディ職人と彫刻家の物語―

ねむたん

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エトワールの広場にて

第14話:光る蝶と幻想の旅芸人たち

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第14話:光る蝶と幻想の旅芸人たち

エトワール広場にいつもと違う賑わいが訪れていた。旅芸人の一座「ル・シルフィード」が街にやってきたという噂が、街中を駆け巡り、昼間から広場には人々が詰めかけていた。

「幻想旅芸人だなんて、聞いただけでワクワクするよね!」
メリーは嬉しそうに声を弾ませながらセシルと並んで歩いていた。彼女の表情はいつも以上に輝いている。

「旅の一座なんて久しぶりだな。どんなものを見せてくれるのか楽しみだ」
セシルは興味を抑えたような口調だったが、目にはわずかな好奇心が宿っている。

エトワール広場に足を踏み入れると、そこはすでに別世界だった。露店が立ち並び、不思議な光を放つランタンや色鮮やかな布地に包まれたテントが目を引く。アイテムを売る店主たちもどこか非日常的で、まるで物語の登場人物のようだ。

メリーは露店に飾られたガラス細工や、音色を奏でる奇妙な小箱に見入っていた。一方、セシルは道具のディテールやその構造に目を凝らしている。

「これなんかどう?」とメリーが指さしたのは、小さな星が灯るランタンだった。星屑のような光が揺れる様子に、彼女の目が引き込まれている。

「精巧だな。光の加減が絶妙だ。持ち主を迷わせない力があるというのも面白い」セシルはランタンを眺めながら、その仕組みに思いを巡らせた。

広場の中央では舞台が組まれており、一座のリーダー、カリーナが観客に向けて微笑みながら手招きをしていた。黒髪に紫の瞳を持つ彼女の姿は、人々の目を釘付けにしている。

「さあ、皆さま。この夜の魔法をお楽しみください」

彼女の声とともに、舞台上の幕が開かれた。パフォーマーのテオが現れ、軽快なステップで観客を沸かせながら、手に持った火の輪を操り始める。その炎は瞬く間に鳥や花の形を描き、光のショーが広場を彩った。

「すごいね……本当に魔法みたい!」
メリーは目を輝かせ、手を叩いて喜んでいる。

一方、セシルは冷静な目でその演出を見つめていた。「演出の技術もあるが、あの道具が肝だな。どうやら、普通の炎ではなさそうだ」

やがて舞台の端から現れたのは、動物使いの少女リーヌだった。彼女が手にしている籠の中には、小さな蝶が何匹も羽を休めていた。それはただの蝶ではなく、薄暗い広場の中で淡く光を放っている。

「これが『ルミナリー・パピヨン』か……」とセシルがつぶやくと、メリーもその光景に息を呑んだ。

「皆さま、この蝶たちは夜空に星を描くように舞います。どうぞ、魔法のひとときをお楽しみください」

リーヌが籠の蓋をゆっくりと開けると、光る蝶たちはふわりと舞い上がり、広場全体を包み込むように飛び回り始めた。観客たちは歓声を上げ、子どもたちは手を伸ばして蝶に触れようとする。

「綺麗……セシル、あの光、飴細工で表現できたらすごくない?」
メリーが感嘆の声を漏らすと、セシルも頷いた。「確かに。光が揺らめき、影を作り出す効果も面白い。彫刻のモチーフに取り入れる価値がありそうだ」

しかし、その時だった。一部の蝶たちが籠の中に戻ろうとせず、広場のランタンの明かりや人々の拍手に驚いて、さらに遠くへ飛び始めたのだ。リーヌは慌てて手を伸ばしたが、蝶たちは次々と増殖し、夜空へと散らばっていく。

「あっ! 待って、逃げちゃダメ!」
リーヌの叫び声が広場に響く。しかし蝶たちは止まることなく、さらに広がりを見せていった。

観客たちは事態を理解しないまま、ただ幻想的な光景に魅入っていたが、カリーナが舞台の上で冷静に状況を見守っている。セシルはその様子に気づき、静かに呟いた。

「この蝶、意図せずに広がっているようだな。自然なものじゃない……」

「でも、こんなに綺麗なんだよ。これって、どうなるのかな?」
メリーは不安げに見上げながらも、蝶たちの美しさに目を奪われていた。

その夜、光る蝶たちは街全体に広がり、エトワール広場を幻想的な光の海に変えていった。一座のメンバーも困惑しながら対策を考えている様子だったが、人々は誰もがその美しさに心を奪われていた。
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