「奇遇ですね。私の婚約者と同じ名前だ」

ねむたん

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⭐︎参加型企画⭐︎

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このたびの連載、最後までお付き合いいただきありがとうございました。皆さんのコメントを拝見しながら、ふと「書き溜めなしで連載してみるのも面白いのでは?」と思い至りました。リアルタイムで進むからこそ生まれる予測不能な展開や、読者の皆さんとのライブ感のあるやり取り――それらを楽しみながら、新しい挑戦として取り組んでみようと思います。

もちろん、途中で思わぬ壁にぶつかることもあるかもしれません。それも含めて、この試みを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。

ルールとしては、みなさんのコメントを参考に次の話を作成していくスタイル。修正は基本的に前回の一話分までとし、軽微なものなら少しさかのぼることも可能。しばらくコメントが集まらない場合は、そのまま物語を進めていきます。

どんな物語が生まれるのか、自分でも楽しみです。ぜひ、これからも一緒に盛り上げてください!

とりあえず冒頭を用意しました。今のところコメディに全振りした展開になりそうな予感ですが、シリアスな設定に変えてみるのも面白いかもしれません。

「もっとこうしたほうがいいかも」「別の方向性も見てみたい」など、ご意見があればぜひ聞かせてください!

まずは冒頭案をご覧ください。

※※※



「これにて婚約は破棄させていただく!」


広間に響き渡る声とともに、貴族の青年が鼻を鳴らして腕を組んだ。彼の名はレオン・ハリフォード侯爵家の嫡男。金髪碧眼の整った容姿を持ちながら、歪んだ笑みを浮かべている。

「理由は言うまでもないだろう。お前のその醜い姿、見ているだけでうんざりする。貴族の婚約者として相応しくない」

広間の空気が凍りついた。招かれた貴族たちが一様に息をのむ。だが、宣告を受けた本人――クラリッサ・ウォルターズは、呆れたようにため息をついた。

「それで?」

「……は?」

レオンが眉をひそめる。周囲もざわめいた。普通なら泣き崩れるか、せめて取り乱すところだろう。しかし、クラリッサは微動だにしない。どころか、少しむくれたような顔で彼を見上げた。

「理由はそれだけなの?私、ちょっとぽっちゃりしてるくらいなのに、失礼じゃない?」

場が静まり返る。次の瞬間、口元を押さえながら吹き出したのは、クラリッサの友人であるミレーユだった。

「ちょっと……? いやいや、クラリィ、椅子壊したの昨日だけでも二回でしょ?」

「……あれは椅子の作りが悪かったのよ!」

「普通の人はそんなに壊さないんだけどねえ……」

ミレーユは苦笑しながら肩をすくめる。その様子に、クラリッサは頬を膨らませた。

「とにかく、私はちょっとぽっちゃりしてるだけよ。これくらいで婚約破棄なんて、むしろ願ったりじゃない?」

レオンは何か言いかけたが、クラリッサのあまりの余裕ぶりに言葉を失っていた。そして、そのままバツが悪そうにそそくさと立ち去る。涙目になっているように見えるのは、気のせいだろうか。

「……思ったよりあっさりね」

「まあ、レオン様には見る目がなかったってことよ。さ、甘いものでも食べに行きましょ!」

「……だから痩せないのよ」

ミレーユの呆れ顔をよそに、クラリッサは軽やかに歩き出した。

翌日。学園の中央広場には陽光が降り注ぎ、華やかな装いの貴族の子女たちが談笑していた。その中心にいるのはレオンだった。腕には派手な赤いドレスを纏った美女がまとわりついている。

「おや、クラリッサじゃないか」

彼はクラリッサを見つけると、薄く笑いながら声をかけた。その声には明らかに嘲るような響きが混じっている。

「いやあ、自由になった気分だよ。見るだけでうんざりするものが目の前にないっていうのは、実に爽快だな」

美女がくすくすと笑い、レオンの腕にさらに寄り添う。周囲の生徒たちも興味深げに二人のやりとりを見守っている。

だが、クラリッサはというと、レオンの言葉など耳に入っていなかった。

「へえ……今日の新メニューは『チーズたっぷりベーコンパイ』か……」

彼女の視線は、学園の食堂前に掲げられた黒板に釘付けになっていた。目を輝かせながら口元を押さえ、じっとその文字を眺めている。

「クラリッサ?」

レオンが苛立たしげに声をかけるが、彼女はまるで聞いていない。

「ミレーユ! 早く行かないと売り切れちゃうかも!」

「……いや、今、レオン様に絡まれてるんだけど?」

「そんなことより、パイよ! ベーコンとチーズよ!」

「……本当に幸せそうね、あんた」

ミレーユはため息をつきながら、クラリッサを追いかけた。レオンは顔を真っ赤にしながら、食堂へ走っていく彼女たちの背中を呆然と見送るしかなかった。



それから数日後。

レオンはリディアとともに観劇に出かけていた。華やかな劇場、周囲には社交界の名士たちが集まり、リディアはそんな場にふさわしく優雅に微笑んでいた。

しかし、舞台が始まると、レオンは無意識に隣を見た。そして口を開きかける。

「なあ、クラリ……」

言いかけて、慌てて口をつぐんだ。そこにいるのはクラリッサではなく、リディアだ。

「レオン様?」

リディアが怪訝そうに彼を見上げる。レオンは咳払いして誤魔化し、「いや、なんでもない」と視線を前に戻した。

(……そういえば、俺、いつもクラリッサと観劇に来てたっけな)

舞台の感想をぽつりと漏らせば、「へえ、そうなの?」と適当に流しながらも、クラリッサはちゃんと聞いていた。彼女のその反応が心地よかったのだと、今さらながら気づく。

リディアは熱心に舞台を見ている。感動したように手を胸に当て、時折ため息を漏らしていた。そんな彼女を見ながら、レオンはなんとも言えない違和感を抱く。

(……なんでだろう。俺いま、別に楽しくない?)

だが、そんな気持ちを自覚するのは、まだ少し先のことだった。


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