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廊下を進むたびに、床がきしむ音が響く。
旅館は思った以上に広かった。迷路のように入り組んだ廊下、段差のある廊下、途中で行き止まりになっている階段。
「……これは確かにややこしいな」
藤木が眉をひそめながら、天井を見上げた。
「増改築を繰り返した結果、こうなったんだろうな」
斉藤が地図を確認しながら言う。
「当時の客には広くて趣がある旅館に見えただろうが……今となっては迷いやすいだけだ」
「最悪、逃げ道がなくなる可能性もあるな」
高橋が静かに呟く。
俺たちは慎重に探索を続けた。
開かずの扉や、崩れかけた天井、窓の割れた部屋。
「こっち、完全に封鎖されてるな」
安田が、埃まみれの襖を開けようとしたが、動かなかった。
「壁で仕切られてる。向こう側に何があるのか分からんな」
「増築の影響で、使えなくなったエリアがあるのか」
藤木が扉を叩くと、鈍い音が返ってきた。
「まあ、無理に入る必要はないか。問題はこっちだ」
斉藤が指差したのは、土間へ続く薄暗い通路だった。
先ほど見つけた井戸のある場所だ。
「この雰囲気、やばいな……」
安田が小声で言う。
土間の一角には、古びた井戸がぽつんと佇んでいた。
木製の蓋は半開きになっており、中の水面は見えない。
「……おい、これ」
藤木が指をさした。
井戸の縁には、古びたお札がいくつも貼られていた。
すでに剥がれかけているものもあるが、明らかに何かを封じる意図で貼られている。
「なんだよ、これ……」
安田が顔をしかめる。
「旅館の関係者が貼ったのか、それとも肝試しに来た連中が悪ふざけでやったのか」
「どっちにしろ、気味が悪いな」
俺は井戸の縁にそっと手を置き、慎重に覗き込んだ。
暗闇が広がる井戸の底は、まったく見えない。
「試しに、小石でも落としてみるか?」
「さっきやっただろ?」
「いや、もう一度確かめたい」
俺は地面に転がっていた小さな石を拾い、井戸の中へ投げ込んだ。
しばらくの沈黙。
そのあと、ぽちゃん という小さな音が返ってきた。
「……やっぱり水はあるな」
「使えるのか?」
「分からん。濾過すれば飲めるかもしれないが……」
「それよりさ」
安田が腕を組み、井戸をじっと見つめる。
「なんか、変じゃね?」
「何が?」
「音がするまでの時間が、異様に長い」
俺たちは互いに顔を見合わせた。
たしかに、石を落としてから水音がするまで、やけに時間がかかっていた。
「そんなに深いのか……?」
藤木が眉をひそめる。
「もしかして、普通の井戸じゃないのかもな」
「……どういうことだよ」
「分からん。ただ、何かがあるのは間違いない」
その時、風が吹き抜け、井戸の奥からひんやりとした空気が立ち昇った。
俺たちは誰も、そこから目を逸らせなかった。
「……とりあえず、今は放置しておこう」
斉藤が静かに言う。
「水を使うかどうかは後で判断する」
「そうだな。今は探索を続けよう」
俺たちは井戸を後にし、旅館の他の部分を調べることにした。
この場所が本当に安全かどうかは、まだ分からない。
旅館は思った以上に広かった。迷路のように入り組んだ廊下、段差のある廊下、途中で行き止まりになっている階段。
「……これは確かにややこしいな」
藤木が眉をひそめながら、天井を見上げた。
「増改築を繰り返した結果、こうなったんだろうな」
斉藤が地図を確認しながら言う。
「当時の客には広くて趣がある旅館に見えただろうが……今となっては迷いやすいだけだ」
「最悪、逃げ道がなくなる可能性もあるな」
高橋が静かに呟く。
俺たちは慎重に探索を続けた。
開かずの扉や、崩れかけた天井、窓の割れた部屋。
「こっち、完全に封鎖されてるな」
安田が、埃まみれの襖を開けようとしたが、動かなかった。
「壁で仕切られてる。向こう側に何があるのか分からんな」
「増築の影響で、使えなくなったエリアがあるのか」
藤木が扉を叩くと、鈍い音が返ってきた。
「まあ、無理に入る必要はないか。問題はこっちだ」
斉藤が指差したのは、土間へ続く薄暗い通路だった。
先ほど見つけた井戸のある場所だ。
「この雰囲気、やばいな……」
安田が小声で言う。
土間の一角には、古びた井戸がぽつんと佇んでいた。
木製の蓋は半開きになっており、中の水面は見えない。
「……おい、これ」
藤木が指をさした。
井戸の縁には、古びたお札がいくつも貼られていた。
すでに剥がれかけているものもあるが、明らかに何かを封じる意図で貼られている。
「なんだよ、これ……」
安田が顔をしかめる。
「旅館の関係者が貼ったのか、それとも肝試しに来た連中が悪ふざけでやったのか」
「どっちにしろ、気味が悪いな」
俺は井戸の縁にそっと手を置き、慎重に覗き込んだ。
暗闇が広がる井戸の底は、まったく見えない。
「試しに、小石でも落としてみるか?」
「さっきやっただろ?」
「いや、もう一度確かめたい」
俺は地面に転がっていた小さな石を拾い、井戸の中へ投げ込んだ。
しばらくの沈黙。
そのあと、ぽちゃん という小さな音が返ってきた。
「……やっぱり水はあるな」
「使えるのか?」
「分からん。濾過すれば飲めるかもしれないが……」
「それよりさ」
安田が腕を組み、井戸をじっと見つめる。
「なんか、変じゃね?」
「何が?」
「音がするまでの時間が、異様に長い」
俺たちは互いに顔を見合わせた。
たしかに、石を落としてから水音がするまで、やけに時間がかかっていた。
「そんなに深いのか……?」
藤木が眉をひそめる。
「もしかして、普通の井戸じゃないのかもな」
「……どういうことだよ」
「分からん。ただ、何かがあるのは間違いない」
その時、風が吹き抜け、井戸の奥からひんやりとした空気が立ち昇った。
俺たちは誰も、そこから目を逸らせなかった。
「……とりあえず、今は放置しておこう」
斉藤が静かに言う。
「水を使うかどうかは後で判断する」
「そうだな。今は探索を続けよう」
俺たちは井戸を後にし、旅館の他の部分を調べることにした。
この場所が本当に安全かどうかは、まだ分からない。
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