終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん

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釣った魚は泥抜きした後、塩を振って焚き火で焼いた。皮がパリッとし、香ばしい匂いが立ち込める。これまでの食事はスーパーで確保したレトルトや缶詰が中心だったが、こうして自分たちで獲ったものを食べると、一層の達成感があった。

「やっぱり焼き魚はうまいな」

藤木が骨を慎重に避けながらかぶりつく。安田も満足げに頷きながら、「次はもっと大物を釣りたいな」と意気込んでいた。

山菜の収穫も順調で、ワラビやゼンマイはあく抜きを済ませた。明日以降も採取を続ければ、ある程度は自給できる見込みがある。ただ、罠の方はまだ成果が出ていなかった。

「まあ、すぐにかかるわけじゃないしな」

斉藤がロープを手繰り寄せながら言う。罠の仕掛け自体は問題なく機能しているようだったが、獣が警戒しているのか、エサには手をつけられていなかった。

「しばらく様子を見て、ダメそうなら場所を変えてみよう」

「そうだな。すぐに諦める必要はないし」

それぞれの役割が決まり、食料の確保にも目処が立ち始めたことで、旅館の生活にも少しずつ余裕が出てきた。ただ、非常用の物資はできるだけ温存しておくことに決めた。

「缶詰や乾物、乾パンはしばらく手をつけずにおこう」

「いざという時に持ち出せるように、リュックに詰めておいた方がいいな」

食糧があるうちはいいが、もし旅館を離れなければならなくなった時のために、すぐに持ち出せる準備をしておくのは大事だ。

「今のところはこの作戦を継続しながら、しばらく様子を見るって感じか」

「そうなるな。無理にリスクを冒すより、確実にできることを続けた方がいい」

朝、庭に出ると、先日植えた野菜の種がついに芽を出していた。

「おお、来た来た!」

安田がしゃがみ込み、小さな芽を嬉しそうに見つめる。斉藤も「順調そうだな」と頷いた。

「これならうまく育ちそうだな」

高橋が土の状態を確認しながら言う。「水のやり方も問題ないし、成長は順調だ」

「とはいえ、まだまだ小さいし、ここからが勝負だな」

藤木が軽く頷きながら言った。

食糧の安定供給に向けて、少しずつ前進している。とはいえ、まだ安心できる状況ではない。

「そろそろ、旅館の防御も強化した方がいいかもしれないな」

「バリケードの設置か?」

「そうだ。今はまだ山の中は静かだが、いつ状況が変わるかわからない」

都市部の混乱は日増しにひどくなっている。今はまだ安全な場所でも、時間が経てば逃げ延びた生存者やゾンビが流れ込んでくる可能性は十分ある。

「とりあえず、庭の周囲と玄関、それと出入りが多い窓際を重点的に強化しよう」

「資材はどうする?」

「旅館の倉庫に木材や使えそうなものがあったはずだ」

「そういや、宴会場にあった座敷用の分厚い座卓とか、壁に立てかければバリケードにできるんじゃないか?」

「いいな、それを利用しよう」

俺たちはさっそく作業に取り掛かった。

旅館の玄関には元々しっかりした引き戸があるが、それだけでは不安なので、補強用に木材を打ち付ける。万が一押し破られそうになったときに備えて、物を積み上げて足場を作りにくくする工夫もした。

「こっちはどうだ?」

高橋が庭の外周を確認しながら、バリケードの設置場所を決める。庭の一部には石垣があり、そこは防御面で心配は少ないが、低い柵の部分は簡単に突破される可能性がある。

「竹や板を組んで、最低限のバリケードを作るか」

「それでいこう。音を立てずに出入りできるよう、開閉可能な部分も作ろう」

「了解」

俺たちは倉庫にあった古い木材や竹、釘やロープを持ち出し、旅館全体の防御を強化していった。

「こうしてると、まるで戦国時代の籠城戦みたいだな」

安田が苦笑しながら木材を組み立てていく。

「まあ、似たようなもんだろ」

藤木が肩をすくめる。「違いは、敵がゾンビってことだけだ」

夕方にはバリケードの設置がほぼ完了し、旅館の防御力は格段に向上した。

「ひとまず、これで即座に突破される心配はなくなったな」

「まあ、完全な安全とは言えないが……少なくとも時間は稼げる」

「引き続き警戒しながら、様子を見ていこう」

俺たちは汗だくで頷きあった。
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