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夜が更けるのを待ち、俺たちは村の外れに身を潜めた。流れ者たちがどのタイミングで来るのかはわからないが、村を襲うなら暗くなってからのはずだ。
「……ほんとに来ると思うか?」安田が小声で囁く。
「わざわざこんな僻地まで来るんだから、何かしらの目的があるんだろ」斉藤が冷静に返す。「略奪か、それとも単に村の様子を探りに来るだけかはわからないけどな」
「もし来なかったら、それはそれでいいけどな」藤木が苦笑する。「でも、今までの傾向からして、ここの物資が豊富だって情報はどこかで漏れてるはずだ」
「山を抜けた向こう側の町に流れ者がいるって話だったねぇ。そう遠くはないし、そろそろ来てもおかしくないんじゃないかい?」田辺さんが、暗闇に目を凝らしながら言う。
佐川は無言で頷き、ライフルを膝に置いたままじっと森の奥を見つめていた。
***
待つこと二時間。
遠くで小さな光が動いた。
「来た……」高橋が低く呟く。
俺たちは物音を立てないように、身を潜めながらその光の正体を探った。
「二人……いや、三人いるな」藤木が目を細める。「持ってるのは……懐中電灯と、何かの袋か?」
「袋の中身は何だろうな」
「たぶん、ブザーか何かだろう」斉藤が言う。「普通なら夜の山道を歩くのにこんな明るくしない。音と光でゾンビをおびき寄せるつもりだ」
「最悪だな……」安田が歯噛みする。「村を襲うつもりなのは確定じゃねぇか」
「今ならまだ、向こうはこっちに気づいてない」俺は小声で言った。「作戦通りに仕掛けるぞ」
田辺さんがポケットから防犯ブザーを取り出し、そっと俺たちに渡す。「これをどう仕掛けるかだねぇ」
「なるべく音を立てずに、奴らの持ち物にくくりつける」斉藤が言う。「それが無理なら、投げつけて発動させるのもアリだ」
「ブザーはひもを引けば鳴る。ライトは奴らの服にくっつければいい」
「さぁ、静かに動くよ」
俺たちは息を殺しながら流れ者の背後に忍び寄った。
***
「……なぁ、本当にここに物資あんのか?」
流れ者の一人がぼそりと呟いた。
「さあな。でも、近くの村のやつが言ってたんだろ? あの村には食料も水もあるって」
「でもよ、わざわざゾンビ連れてくほどの価値があるか?」
「あるさ」リーダー格らしき男が低く笑った。「村人どもがゾンビに気を取られてる隙に、俺たちは好きなだけ物を取れる。うまくやれば、何度でも利用できるんだぜ?」
「……クソだな」安田が小声で呟く。
「だからこそ、確実に仕掛けるぞ」斉藤が囁く。
俺たちは慎重に近づき、ブザーのひもを奴らの荷物のストラップに結びつけた。もう少し引っ張れば、即座に大音量の警報が鳴り響く。
藤木と高橋は、LEDライトを二人の背中にそっとくくりつける。まだ気づかれていない。
「あと一歩……」
田辺さんが俺たちを見守る中、俺は最後の仕上げにかかった。
勢いよくブザーのひもを引く。
──ピィィィィィィィィィィィ!!!!
山中に響き渡る大音量。
「なんだ!?」
流れ者たちが慌てて周囲を見回す。
同時に、闇の向こうから低いうめき声が聞こえた。
「マズイぞ、来る!」
「おい、なんだこれ!? ブザーが……」
「いつのまにかライトがくっついてるぞ!?」
パニックになった流れ者たちが暴れるが、ブザーは止まらない。
「逃げるぞ!!」
男たちが一目散に駆け出すと、四方からゾンビたちがうごめきながら迫ってきた。
「作戦成功だ……」俺たちはすかさず身を引き、物陰からその様子を見守った。
流れ者たちは必死でブザーを外そうとするが、動けば動くほど光と音が目立ち、ゾンビがどんどん集まってくる。
「やべえ! 誘導してきたゾンビが……」
「うわっ、くんな!!」
一人が転倒し、ゾンビに組み伏せられる。
「おい、置いてくな!!」
だが、リーダー格の男は仲間を見捨てて走り去った。
「お、おい!?」
悲鳴とともに、流れ者の一人がゾンビに襲われ、呻き声が途切れる。
「……やったな」安田が静かに言う。
「ざまあねえな」藤木が肩をすくめる。
田辺さんは腕を組みながら、流れ者たちの末路をじっと見ていた。「……これに懲りたら、もうこんなことするんじゃないよ」
「生き残ったリーダー格のやつ、どこ行きました?」斉藤が警戒しながら聞く。
「向こうの森に逃げてったな……」
俺たちはしばし沈黙する。
「……とりあえず、村に戻って報告しよう」佐川がゆっくりと立ち上がった。「まだ終わったわけじゃねぇからな」
俺たちは静かにその場を離れ、夜の闇の中を村へと戻っていった。
「……ほんとに来ると思うか?」安田が小声で囁く。
「わざわざこんな僻地まで来るんだから、何かしらの目的があるんだろ」斉藤が冷静に返す。「略奪か、それとも単に村の様子を探りに来るだけかはわからないけどな」
「もし来なかったら、それはそれでいいけどな」藤木が苦笑する。「でも、今までの傾向からして、ここの物資が豊富だって情報はどこかで漏れてるはずだ」
「山を抜けた向こう側の町に流れ者がいるって話だったねぇ。そう遠くはないし、そろそろ来てもおかしくないんじゃないかい?」田辺さんが、暗闇に目を凝らしながら言う。
佐川は無言で頷き、ライフルを膝に置いたままじっと森の奥を見つめていた。
***
待つこと二時間。
遠くで小さな光が動いた。
「来た……」高橋が低く呟く。
俺たちは物音を立てないように、身を潜めながらその光の正体を探った。
「二人……いや、三人いるな」藤木が目を細める。「持ってるのは……懐中電灯と、何かの袋か?」
「袋の中身は何だろうな」
「たぶん、ブザーか何かだろう」斉藤が言う。「普通なら夜の山道を歩くのにこんな明るくしない。音と光でゾンビをおびき寄せるつもりだ」
「最悪だな……」安田が歯噛みする。「村を襲うつもりなのは確定じゃねぇか」
「今ならまだ、向こうはこっちに気づいてない」俺は小声で言った。「作戦通りに仕掛けるぞ」
田辺さんがポケットから防犯ブザーを取り出し、そっと俺たちに渡す。「これをどう仕掛けるかだねぇ」
「なるべく音を立てずに、奴らの持ち物にくくりつける」斉藤が言う。「それが無理なら、投げつけて発動させるのもアリだ」
「ブザーはひもを引けば鳴る。ライトは奴らの服にくっつければいい」
「さぁ、静かに動くよ」
俺たちは息を殺しながら流れ者の背後に忍び寄った。
***
「……なぁ、本当にここに物資あんのか?」
流れ者の一人がぼそりと呟いた。
「さあな。でも、近くの村のやつが言ってたんだろ? あの村には食料も水もあるって」
「でもよ、わざわざゾンビ連れてくほどの価値があるか?」
「あるさ」リーダー格らしき男が低く笑った。「村人どもがゾンビに気を取られてる隙に、俺たちは好きなだけ物を取れる。うまくやれば、何度でも利用できるんだぜ?」
「……クソだな」安田が小声で呟く。
「だからこそ、確実に仕掛けるぞ」斉藤が囁く。
俺たちは慎重に近づき、ブザーのひもを奴らの荷物のストラップに結びつけた。もう少し引っ張れば、即座に大音量の警報が鳴り響く。
藤木と高橋は、LEDライトを二人の背中にそっとくくりつける。まだ気づかれていない。
「あと一歩……」
田辺さんが俺たちを見守る中、俺は最後の仕上げにかかった。
勢いよくブザーのひもを引く。
──ピィィィィィィィィィィィ!!!!
山中に響き渡る大音量。
「なんだ!?」
流れ者たちが慌てて周囲を見回す。
同時に、闇の向こうから低いうめき声が聞こえた。
「マズイぞ、来る!」
「おい、なんだこれ!? ブザーが……」
「いつのまにかライトがくっついてるぞ!?」
パニックになった流れ者たちが暴れるが、ブザーは止まらない。
「逃げるぞ!!」
男たちが一目散に駆け出すと、四方からゾンビたちがうごめきながら迫ってきた。
「作戦成功だ……」俺たちはすかさず身を引き、物陰からその様子を見守った。
流れ者たちは必死でブザーを外そうとするが、動けば動くほど光と音が目立ち、ゾンビがどんどん集まってくる。
「やべえ! 誘導してきたゾンビが……」
「うわっ、くんな!!」
一人が転倒し、ゾンビに組み伏せられる。
「おい、置いてくな!!」
だが、リーダー格の男は仲間を見捨てて走り去った。
「お、おい!?」
悲鳴とともに、流れ者の一人がゾンビに襲われ、呻き声が途切れる。
「……やったな」安田が静かに言う。
「ざまあねえな」藤木が肩をすくめる。
田辺さんは腕を組みながら、流れ者たちの末路をじっと見ていた。「……これに懲りたら、もうこんなことするんじゃないよ」
「生き残ったリーダー格のやつ、どこ行きました?」斉藤が警戒しながら聞く。
「向こうの森に逃げてったな……」
俺たちはしばし沈黙する。
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俺たちは静かにその場を離れ、夜の闇の中を村へと戻っていった。
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