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左遷太守と不遜補佐・7

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「先ほどは、お見苦しい姿を失礼いたしました」
「ははっ、いいって。とりあえずさ、あの庭さびしいし、手入れもほどほどにしてくれよな」
「……承知いたしました」

雑草騒ぎを終えて、太守が使用する私室へと彼らは落ち着いていた。青明が淹れた花茶の温かな香りが室内の空気をまろやかにしている。

太守館にはこの私室のほかに、太守の執務室、従える官吏たちの仕事場が併設されており、この敷地内ですべての公務が行える作りだ。
あの無機質な庭では本来、民の要求を聞いたり裁きを行ったりもする。

「お前、あんなに大きい声出せたんだな。驚いたよ。……落ち込んでるのか?」
「わたしとしては大変な汚点です。あなたに醜態を見せたことよりも、雑草が残っていることが、ですが。太守館の管理はわたしがしているようなものですし、管理不行き届きなんて、いままで……一度も……」
「あーっ! うまい茶だな。俺、まだなんにも分かってねえけど、この茶がうまいことだけは、分かる」
「……はあ」

弱弱とした青明の気配を吹き飛ばすかのように、赤伯は茶を飲み干して、その椀を机上へがさつに置いた。
所作一つとっても、さすが元訓練兵らしき無骨さが見てとれる。しかし青明は何も言わずに、その椀に残る一滴のしずくが光るのを見ていた。

「姉さんの結婚相手がさ……ようはもうすぐ俺の義兄さんになる人が、茶の商売人なんだけど」
「……お兄さま、で……ございますか」

兄という言葉に、青明は冷静に口を動かした。

「そ。黙ってるとすっげえ強面で、商人なんて言われても近寄るのすら恐いんだけどさ。話すといい人だっていうのが伝わってくるんだ。そんな兄さんが淹れる茶は絶品でさぁ……姉さんが同じ茶葉で淹れても敵わないんだぜ?」

なぜか自慢げに語られて、青明は眉一つ動かさずに、視線だけを赤伯へ向ける。

「それが、なにか」
「だから、顔とか態度とかって関係ないんだよな。この茶がうまいってことは、お前が心の底から酷い奴じゃないってことなんだと思う」

うまいもん、この茶。そう付け足しながら、赤伯はおかわりをねだって椀を突き出した。幼くもしっかりと芯の通る純粋な金瞳から目を反らし、青明は椀をさげた。

彼が椀を置いた所作を、内心で軽蔑した自分こそ浅ましいのだろうか、と不意に案じながら。
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