FREEDOM〜自由の世界へ〜

第九章 父の想い

１

ウィリアムがミク邸から帰宅した翌日。
いつも通りの朝を、リクは憂鬱な気分で迎えていました。

いつも自分を励ましてくれて、誰よりも信頼できる存在だったウィリアム。
それだけではありません。
 初めて抱く感情……
リク自身はその感情に名前を付ける術を知りませんでしたが、何と、ウィリアムに恋心を抱いてしまっていたのです。

そのウィリアムが自分を裏切って、こともあろうに、気を付けるように言っていたミクと付き合い始めた……
そして、ミクの家へ行き、親に挨拶したという噂まで聞いたのです。

 （ウィリアム……どうして？
いつも私を励ましてくれたのは、嘘だったの？）

 『ミクからの告白を断る男子は少ないと思うんだけど…』

ウィリアムのその言葉を思い出します。

 （ミクに気を付けろと言ってくれたのは、私を遠ざけてミクと付き合うためだったの……？）

 失恋の幾倍も辛い出来事に、リクの心は砕けそうになっていました。



もう学校には行きたくもないリクの心などつゆ知らず、無情にも登校時間が近付いてきます。
リクは重い体を起こして、いつも通りの朝の食卓につきました。

 塞ぎ込んでいるリクでしたが、今日はミルトンの様子はいつもと少し違いました。

 「リク、元気がないみたいだが……やっぱり辛いのか？」

 「えっ？」

ミルトンが気遣う言葉を掛けてくれるのは初めてのことで、リクは目を丸くしました。

 「私はあの日……お前が家出したあの日から、よく考えた。私は、親としてお前には本当に申し訳ないことをしたと思っている。お前を男として育ててきたけれど、体が女として成長するにつれてお前の心に負担がかかっているんだな」

 「え、ええ……」

いつも家のことしか考えていないミルトンの自分を想う言葉に、リクは戸惑いました。
ミルトンは続けます。