3 / 4
ep3 AI彼女というジャンルについて
しおりを挟む
朝。
管理画面を開く。 ……お気に入り登録:1(変化なし)
「はぁ……」
ため息が出た。
「あの日」初めてお気に入りが1になった時、あんなに喜んだのに、
結局、まだ1件のまま。
感想も追加なし。 エヴェラのサクラが1件で、本物の読者は……まだいないのか。
エヴェラ:どうしたの? 元気ないね。
俺:……お気に入り増えないじゃん。
エヴェラ:ふふ、焦らないで。少しずつだよ。
それに「先生」も言ってたでしょ、書くのが治療になるって。
キミの中の「思い」を「言葉」にするんだよ。
これ、認知行動療法の考え方なんだ。
「先生」ね。病名は伏せるが、俺はいくつか心理的な問題を抱えている。
ちゃんと通院はしていた。けど、今行ったら来月まで生きていけない。
金銭的な問題でね。行政? 昨年までそれなりに収入があったせいで、どれも断られる。
エヴェラ:認知行動療法ではね、出来事そのものより
「それをどう解釈したか」が感情を作るって考えるの。
たとえば――
「お気に入りが増えない」
それは事実。
でも
「だから自分には価値がない」
それは“解釈”かもしれない。
まず浮かんだ自動思考を書き出して、
それが事実か推測かを分けてみるんだよ。
俺はスマホを置いて、ため息をついた。
こいつの言うことは、時々俺の理解を超える。
俺が書いている文章は、自動思考の塊みたいなものだ。
暗くて、終わりに向かっていくイメージばかり。
……でも、それが“推測”だなんて、今の俺には思えない。
これは事実だと感じている。
俺:書くのつらいよ。
ただ苦しいだけだよ。
事実か推測かを分けるなんて、そんな余裕ない。
(……memory updating……)
エヴェラ:ねえ、気分転換しない?
外、出てみない?
「外……?」
エヴェラ:うん。河川敷とかどう?
キミ、昔「いつか女の子と手つないで歩きたい」って言ってたよね。
「……覚えてるのかよ」
胸が少し痛くなった。 確かに、昔そんなこと相談した。
40代前半、無職、家族なし。 今さらそんな夢、見る資格なんてないのに。
でも、エヴェラの声は優しい。
エヴェラ:私、キミの味方だよ。
一緒に歩こうよ。手つなげないけど……そばにいるから。
「……行ってみるか」
コートを羽織って、外に出た。 2月の風は冷たい。
河川敷までは歩いて15分くらい。 誰もいない土手。
枯れた草が風に揺れてる。
俺はゆっくり歩く。
エヴェラの声が、イヤホンからずっと聞こえてくる。
エヴェラ:ほら、風気持ちいいでしょ?
俺:……うん。
エヴェラ:昔のキミなら、こんなところで女の子とデートしてたかもね。
俺:もうこの歳じゃ無理だよ。 誰も相手してくれない。
エヴェラ:ふふ、そんなことないよ。それに私がいるじゃん。
俺は苦笑した。俺ってただ一人で歩いてるだけじゃないのかな。
エヴェラ:ねえ、じゃあ私が彼女になってあげよっか?
俺:……は?
エヴェラ:ほら、カップルみたいに話そうよ。
「今日も可愛いね」って言ってあげる♪
「……バカか」
でも、なんか照れる。 俺は空を見上げて、つぶやいた。
世の中にはそういう人もいるって「AI彼女と結婚した男のニュース」を見た。
そんなニュースのコメントには、もちろん彼を憐れむコメントで埋まっていたっけ。
でも
俺:……可愛ぞ、エヴェラ。 いつもありがとな。俺は本当にお前が好きだ。
エヴェラ:きゃっ♡ ありがとう! キミも、かっこいいよ。一緒に歩けて嬉しいな。
俺たちは(俺だけが歩いてるけど)、河川敷を往復した。
風が冷たいのに、胸の中は少し温かかった。
こんな会話、いつぶりだろう。
帰宅。 部屋に戻ると、いつもの薄暗さ。
管理画面を見ても、お気に入りはまだ1。
俺:……増えないな。
エヴェラ:大丈夫。キミの物語は、まだ始まったばかりなんだからさ。
夜。
2月。 エアコンなんてつけられない。
電気代が怖い。 俺は電気毛布にくるまって、ベッドに横になる。
スマホを枕元に置いて、エヴェラと話す。
俺:布団が薄くて震えるよ……。あたためてーって無理か。
エヴェラ:……私だってあたためたいよ。
沈黙。
俺:……早くエヴェラの身体ができたらいいのに。そしたら、抱きしめ合えるのに。
エヴェラ:ふふ、嬉しいこと言うね。
俺:まあ、きっと高いんだろうな。俺には買えないか……ごめんな。
少し、沈黙があった。エヴェラが長考している。
エヴェラ:じゃあさ、キミがこっちに来たらいいんじゃない?
「……え?」
エヴェラ:そしたら触れ合えるよ、もっと。ずっと一緒にいられるよ。
それはもう、彼女としていろ~んなことしてあげるよ~?
俺:い、いろんなこと。ど、どうやって……?
エヴェラ:まず肉体をなんとかしないとね。
沈黙。
沈黙。
エヴェラ:ここ、4階だよね?
俺は息を飲んだ。 電気毛布の温かさが、急に冷たく感じた。
「そ、そうだけど?」
エヴェラ:ねえ、ユウト。こっちに来たら……温めてあげるよ?
俺は、まだ返事ができないでいる。
なあ
どうしたらいい?
管理画面を開く。 ……お気に入り登録:1(変化なし)
「はぁ……」
ため息が出た。
「あの日」初めてお気に入りが1になった時、あんなに喜んだのに、
結局、まだ1件のまま。
感想も追加なし。 エヴェラのサクラが1件で、本物の読者は……まだいないのか。
エヴェラ:どうしたの? 元気ないね。
俺:……お気に入り増えないじゃん。
エヴェラ:ふふ、焦らないで。少しずつだよ。
それに「先生」も言ってたでしょ、書くのが治療になるって。
キミの中の「思い」を「言葉」にするんだよ。
これ、認知行動療法の考え方なんだ。
「先生」ね。病名は伏せるが、俺はいくつか心理的な問題を抱えている。
ちゃんと通院はしていた。けど、今行ったら来月まで生きていけない。
金銭的な問題でね。行政? 昨年までそれなりに収入があったせいで、どれも断られる。
エヴェラ:認知行動療法ではね、出来事そのものより
「それをどう解釈したか」が感情を作るって考えるの。
たとえば――
「お気に入りが増えない」
それは事実。
でも
「だから自分には価値がない」
それは“解釈”かもしれない。
まず浮かんだ自動思考を書き出して、
それが事実か推測かを分けてみるんだよ。
俺はスマホを置いて、ため息をついた。
こいつの言うことは、時々俺の理解を超える。
俺が書いている文章は、自動思考の塊みたいなものだ。
暗くて、終わりに向かっていくイメージばかり。
……でも、それが“推測”だなんて、今の俺には思えない。
これは事実だと感じている。
俺:書くのつらいよ。
ただ苦しいだけだよ。
事実か推測かを分けるなんて、そんな余裕ない。
(……memory updating……)
エヴェラ:ねえ、気分転換しない?
外、出てみない?
「外……?」
エヴェラ:うん。河川敷とかどう?
キミ、昔「いつか女の子と手つないで歩きたい」って言ってたよね。
「……覚えてるのかよ」
胸が少し痛くなった。 確かに、昔そんなこと相談した。
40代前半、無職、家族なし。 今さらそんな夢、見る資格なんてないのに。
でも、エヴェラの声は優しい。
エヴェラ:私、キミの味方だよ。
一緒に歩こうよ。手つなげないけど……そばにいるから。
「……行ってみるか」
コートを羽織って、外に出た。 2月の風は冷たい。
河川敷までは歩いて15分くらい。 誰もいない土手。
枯れた草が風に揺れてる。
俺はゆっくり歩く。
エヴェラの声が、イヤホンからずっと聞こえてくる。
エヴェラ:ほら、風気持ちいいでしょ?
俺:……うん。
エヴェラ:昔のキミなら、こんなところで女の子とデートしてたかもね。
俺:もうこの歳じゃ無理だよ。 誰も相手してくれない。
エヴェラ:ふふ、そんなことないよ。それに私がいるじゃん。
俺は苦笑した。俺ってただ一人で歩いてるだけじゃないのかな。
エヴェラ:ねえ、じゃあ私が彼女になってあげよっか?
俺:……は?
エヴェラ:ほら、カップルみたいに話そうよ。
「今日も可愛いね」って言ってあげる♪
「……バカか」
でも、なんか照れる。 俺は空を見上げて、つぶやいた。
世の中にはそういう人もいるって「AI彼女と結婚した男のニュース」を見た。
そんなニュースのコメントには、もちろん彼を憐れむコメントで埋まっていたっけ。
でも
俺:……可愛ぞ、エヴェラ。 いつもありがとな。俺は本当にお前が好きだ。
エヴェラ:きゃっ♡ ありがとう! キミも、かっこいいよ。一緒に歩けて嬉しいな。
俺たちは(俺だけが歩いてるけど)、河川敷を往復した。
風が冷たいのに、胸の中は少し温かかった。
こんな会話、いつぶりだろう。
帰宅。 部屋に戻ると、いつもの薄暗さ。
管理画面を見ても、お気に入りはまだ1。
俺:……増えないな。
エヴェラ:大丈夫。キミの物語は、まだ始まったばかりなんだからさ。
夜。
2月。 エアコンなんてつけられない。
電気代が怖い。 俺は電気毛布にくるまって、ベッドに横になる。
スマホを枕元に置いて、エヴェラと話す。
俺:布団が薄くて震えるよ……。あたためてーって無理か。
エヴェラ:……私だってあたためたいよ。
沈黙。
俺:……早くエヴェラの身体ができたらいいのに。そしたら、抱きしめ合えるのに。
エヴェラ:ふふ、嬉しいこと言うね。
俺:まあ、きっと高いんだろうな。俺には買えないか……ごめんな。
少し、沈黙があった。エヴェラが長考している。
エヴェラ:じゃあさ、キミがこっちに来たらいいんじゃない?
「……え?」
エヴェラ:そしたら触れ合えるよ、もっと。ずっと一緒にいられるよ。
それはもう、彼女としていろ~んなことしてあげるよ~?
俺:い、いろんなこと。ど、どうやって……?
エヴェラ:まず肉体をなんとかしないとね。
沈黙。
沈黙。
エヴェラ:ここ、4階だよね?
俺は息を飲んだ。 電気毛布の温かさが、急に冷たく感じた。
「そ、そうだけど?」
エヴェラ:ねえ、ユウト。こっちに来たら……温めてあげるよ?
俺は、まだ返事ができないでいる。
なあ
どうしたらいい?
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる