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37.詰問
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「気付いてました? その様子だと、最初から」
「まあね。でも戦う気じゃないよ。勝算のない相手を刺激するほど、僕も馬鹿じゃない。どうしてシェミハザの名を騙って、しかもよりにもよってなんでアザゼルの討伐隊に志願したのか訊いておきたかっただけ。アザゼルとシェミハザは知己……ってのはまあまあ機密だったや、とにかくバレるのにさ。知らなかった?」
立ち塞がるように入り口に立ちながら数段上から見下ろしてくるタニアは、心の底から興味深そうな顔をしていた。俺より拳ひとつ分くらい上の位置から声が降ってくる。
「俺にはそれ以外、名乗る名を持たないので。別に名前に固執してるわけじゃないんですよ。アザゼルの討伐に志願したのは、シェミハザを知っているなら、何か俺のことが分かるかと思ってのことです」
「それだけ? シェミハザを名乗る理由の方、聞いてないんだけど?」
ピンポイントで訊ねられたら、どうはぐらかしても突っ込まれるだろう。
「……馬鹿みたいな話なんですが、いいですか?」
「いいから早く聞きたいな」
タニアの周りの魔力が、少しだけ和らぐ。話を聞いてくれる雰囲気だ。
「俺は、俺のことを本気でシェミハザだと信じ込んでて……暗示のたぐいです。今では俺が一体誰なのか分からないんですけど。名乗ってるのはそういう訳です。俺は何も知らない、知らないから知りたいと」
「シェミハザだと思い込まされてた理由は不明、ね。はあ……一体誰がそれやって得するんだか。暗示かけてきたのは魔族?」
暗示はかかっていると言われて初めて気付いたくらいだから、誰がかけたのかなんて分かるはずもない。本当に何も分からないという表情をしていると、タニアはフッと笑った。
「記憶喪失ってやつかな。それじゃ知りたくなるのも無理ないよね。ほんとはさ、アザゼルと会う前に消す予定だったんだよ、君のこと。でもできそうにないし、やる気も失せちゃった」
通せんぼのように立っていた出入り口の段差を上がって「そろそろ戻ろう」となんでもなかったかのような言葉を掛けられる。
「俺もタニアさんに尋ねたいことが──」
「魔法師ギルドに戻ってからでもいいでしょ?」
戸惑いつつも後に続くと、外に集まっていた野次馬の群れの中から1人の少女が進み出た。
「アタシの仲間を探してたら、なんかまた絡まれてるじゃない」
のんびりしていながらも余裕のあるタニアの声とは違った鋭い声色、出会った時より伸びた真紅の髪のすらっとした美少女──アレーナだ。首元には宿舎に置いてきたもう1人仲間、クエレブレが掛けられている。
「嫌だなぁ、そんなあたかも僕が不良みたいに絡んでるような言い方」
「違うの? 金ランクさん。仲間をどっか連れてくなら、アタシもついて行く」
随分と棘のある言い方だ。この2人が言葉を交わすのを見るのは今が初めてなんだが。
「逸れた魔法が観客席の方にもバンバン飛んでくるから、死にかけながら脱出した。取り敢えず宿舎戻って、それからまた練兵場に戻ってきたらこうなってたってわけ」
「俺はぶっ壊した弁償代わりに元に戻して、魔法師ギルドに報告するところ。アレーナも一緒に行こう」
タニアはまだ何か言いたそうな感じだったが、俺とアレーナがあからさまにむっとすると何も言い返してこなかった。
「魔法師ギルドに急に呼ばれるなんて、流石はシェミハザ様。アタシ魔法師じゃないけど、ついて行くから。ふらっとどこかに消えちゃったらどうしようかと思った」
「俺はどこにも行かないけど」
「またそんなこと言って」
手を繋いでいないと逸れる子供扱いか。
空は既に陽が傾き、1日の大半をこのおかしな冒険者と過ごしてしまったことを悟る。大団円のようでいて、トラブルを半分くらいしか収拾できていない。
今日はそこそこ魔力を消耗したが、それでも生成される魔力の方が多いのはもはや脅威の域だろう。
タニアは記憶喪失と言っていた。
俺に過去なんてあるのかと思っていた。魔力量や魔法の知識が消えていないならそれは記憶喪失なのか?
「まあね。でも戦う気じゃないよ。勝算のない相手を刺激するほど、僕も馬鹿じゃない。どうしてシェミハザの名を騙って、しかもよりにもよってなんでアザゼルの討伐隊に志願したのか訊いておきたかっただけ。アザゼルとシェミハザは知己……ってのはまあまあ機密だったや、とにかくバレるのにさ。知らなかった?」
立ち塞がるように入り口に立ちながら数段上から見下ろしてくるタニアは、心の底から興味深そうな顔をしていた。俺より拳ひとつ分くらい上の位置から声が降ってくる。
「俺にはそれ以外、名乗る名を持たないので。別に名前に固執してるわけじゃないんですよ。アザゼルの討伐に志願したのは、シェミハザを知っているなら、何か俺のことが分かるかと思ってのことです」
「それだけ? シェミハザを名乗る理由の方、聞いてないんだけど?」
ピンポイントで訊ねられたら、どうはぐらかしても突っ込まれるだろう。
「……馬鹿みたいな話なんですが、いいですか?」
「いいから早く聞きたいな」
タニアの周りの魔力が、少しだけ和らぐ。話を聞いてくれる雰囲気だ。
「俺は、俺のことを本気でシェミハザだと信じ込んでて……暗示のたぐいです。今では俺が一体誰なのか分からないんですけど。名乗ってるのはそういう訳です。俺は何も知らない、知らないから知りたいと」
「シェミハザだと思い込まされてた理由は不明、ね。はあ……一体誰がそれやって得するんだか。暗示かけてきたのは魔族?」
暗示はかかっていると言われて初めて気付いたくらいだから、誰がかけたのかなんて分かるはずもない。本当に何も分からないという表情をしていると、タニアはフッと笑った。
「記憶喪失ってやつかな。それじゃ知りたくなるのも無理ないよね。ほんとはさ、アザゼルと会う前に消す予定だったんだよ、君のこと。でもできそうにないし、やる気も失せちゃった」
通せんぼのように立っていた出入り口の段差を上がって「そろそろ戻ろう」となんでもなかったかのような言葉を掛けられる。
「俺もタニアさんに尋ねたいことが──」
「魔法師ギルドに戻ってからでもいいでしょ?」
戸惑いつつも後に続くと、外に集まっていた野次馬の群れの中から1人の少女が進み出た。
「アタシの仲間を探してたら、なんかまた絡まれてるじゃない」
のんびりしていながらも余裕のあるタニアの声とは違った鋭い声色、出会った時より伸びた真紅の髪のすらっとした美少女──アレーナだ。首元には宿舎に置いてきたもう1人仲間、クエレブレが掛けられている。
「嫌だなぁ、そんなあたかも僕が不良みたいに絡んでるような言い方」
「違うの? 金ランクさん。仲間をどっか連れてくなら、アタシもついて行く」
随分と棘のある言い方だ。この2人が言葉を交わすのを見るのは今が初めてなんだが。
「逸れた魔法が観客席の方にもバンバン飛んでくるから、死にかけながら脱出した。取り敢えず宿舎戻って、それからまた練兵場に戻ってきたらこうなってたってわけ」
「俺はぶっ壊した弁償代わりに元に戻して、魔法師ギルドに報告するところ。アレーナも一緒に行こう」
タニアはまだ何か言いたそうな感じだったが、俺とアレーナがあからさまにむっとすると何も言い返してこなかった。
「魔法師ギルドに急に呼ばれるなんて、流石はシェミハザ様。アタシ魔法師じゃないけど、ついて行くから。ふらっとどこかに消えちゃったらどうしようかと思った」
「俺はどこにも行かないけど」
「またそんなこと言って」
手を繋いでいないと逸れる子供扱いか。
空は既に陽が傾き、1日の大半をこのおかしな冒険者と過ごしてしまったことを悟る。大団円のようでいて、トラブルを半分くらいしか収拾できていない。
今日はそこそこ魔力を消耗したが、それでも生成される魔力の方が多いのはもはや脅威の域だろう。
タニアは記憶喪失と言っていた。
俺に過去なんてあるのかと思っていた。魔力量や魔法の知識が消えていないならそれは記憶喪失なのか?
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