人形師の第三夫人は傍観者

久守 龍司

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14.

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 満喫していた筈の散策は、慌ただしげな使用人の報告で中断されました。

「ッ申し上げます……! 公爵家の馬車が襲撃を受けました……!」
「なんだと!?」
 殿下は慌てた様子で使用人に詰め寄りました。

「襲撃者はどこの手の者だ」
「おそらくは、元伯爵夫人アイリーンを護送中に連れ去った者と同じ組織だと思われます」
「ならば、やはり公爵家に恨みがある組織か……」
 すぐに対応できる、と仰いましたがまさに今その状況になっています。公爵家は王家とも近しい間柄。殿下と私はすぐに室内へ戻り、詳しい状況を知るために早馬を公爵家に送りました。
 殿下ご自身も、やって来た時よりも簡素な馬車を呼び、私の方に振り返りました。

「貴女はここで待ってくれていても構わないよ。危険な目に遭わせてしまうかもしれない」
「いいえ、私も参ります」
 アイリーンさんが関わっているということは、私にも少なからず関係があるということ。いつまでも傍観者ではいられませんから。


 先程の簡素な馬車で王都の公爵邸まで向かいます。公爵邸も大きなお屋敷でしたが、今はどこか物々しい雰囲気が漂っています。
 紋章付きの馬車と私たちの顔を確認した衛兵に馬車を通され、公爵様に会いました。

「領地に滞在しておられたと聞きましたが、慌ただしいところにいらっしゃって……なんと言ったら良いか」
 公爵様は大分疲れた様子です。無理もありません。イザベラさんの冤罪事件からまだそれほど時間が経っていないのに、今度は馬車が襲撃される……公爵家に攻撃を仕掛ける人々は一体何を目的としているのでしょうか。

「襲撃を受けたのは妻の馬車です。幸い妻はむちうちで済んではおりますが……」
「それは気の毒なことだ。前のことといい、犯人に目星はついているのか?」
「おそらく、私が数年前に軍を率いて壊滅させた過激な新興宗教の残党でしょう」
 新興宗教……名前は「再生教」とかいいましたか。祖国でもそれなりに流行して、お父様が苦労させられていました。

「再生教か。何故今になって……公爵、貴方の身にも危険が迫っているだろう。私の方からも兵を」
 次々に話が進んでいく中、私にはひとつ気がかりなことがあります。再生教が公爵のことを恨んでいたとして、公爵夫人の馬車を襲うのはわかります。しかし、アイリーンさんが伯爵様に近付いて、イザベラさんに殺人未遂の罪を擦りつける……というのは少々回りくどすぎると思うのです。
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