人形師の第三夫人は傍観者

久守 龍司

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36.

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「…………ということがあったのです」
 王太子殿下と王太子妃殿下への愚痴のようなものをイザベラさんに話していました。
 ずっとあの後も舌戦を繰り広げ、私は時折投げかけられる皮肉にたじろぎながら帰宅しました。

「王太子妃のマルグリット様ね。辺境伯の長女で、王太子殿下とは身分違いの恋の末に結婚。そのせいで苦労もしたようだから、恋愛結婚なのに政略結婚としても成り立っている貴女のことが羨ましいのよ」
「そうなのですね。私は公ではない場所くらいは友好的な関係を築きたかったのですけれど……」
「それは難しいかもしれないわね」
 イザベラさんはそれと、と付け加えます。

「もっと気さくに喋ってくださらない? 本来なら敬語を使わなくてはならないのは私の方。私は公爵令嬢で、テオドラは王弟妃なのだから……それに、貴女と私は友人でしょう」
「イザベラさ、ん」
「イザベラよ」
「ありがとう。イザベラ」
 友人ですか。どちらかというと戦友……の方だと勝手に思っているのですが。

 やはり友好的な関係を築くのは厳しいのでしょうか。殿下……旦那様もずっと嫌味を言っていたような気がしますから。

 そう思い返せばなんだか腹が立って来ました。平凡だとか、冴えないだとか結構失礼な言葉を言われていた気がします。かといって頭に血を上らせて言い返しては、挑発に乗ったも同じこと。

「王位継承権を旦那様に差し上げるしかないかもね」
「ええ。そういう手も悪くないと……え? 王位継承権を?」
「王位継承権第一位の座を王弟殿下が手に入れることができれば、ストレスもなくなって一石二鳥ね」
「話のスケールが大きくなりすぎていない?」
 些か話が巨大になりすぎているような気もしますが、ゆくゆくは対峙しなければいけない問題。
 そもそも、誰が次の王になるかという重大な議題を、ずっと有耶無耶なまま放置している方がよろしくないでしょう。
 イザベラさんは多少困惑していますが、私は公爵様にそのことについて意見を求める書簡を書くと決めました。

 しかし、国王陛下のお気持ちを鑑みれば、どう考えても弟より実の子に政権を譲渡したい筈。曖昧になっている今の状況から悪化させないよう、細心の注意を払う必要があります。
 まず、次代についてはっきりしていないのは王弟殿下と王弟派の貴族の勢力が無視できないほど大きいからでしょう。
 当代の国王陛下の政策として主なものは、広大な領地を持つ大貴族への締め付けを強め、中小貴族を引き立てたことがあげられます。
 それに反発し、領地に基盤を置いた大貴族が王弟殿下を支持、反対に中小貴族や商業に基盤を置いた大貴族は王太子殿下を支持しているということです。

 さて、どうしたものでしょう。
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