ウサギとカメ

水田 みる

文字の大きさ
25 / 26

エピローグ②

しおりを挟む

 小春はお見舞いのリンゴを剥いて、半分を私に半分は自分で食べている。

リンゴをショリショリ食べながら私に語り始めた。


「あの事故でな助けたあの男の子、楓に突き飛ばされた衝撃でかすり傷は負ったけど無事だぞ。」

「良かったぁ。」


あの男の子を助ける為に生死の狭間を彷徨ったのだ。

無事でホッとする。


「楓は全身打撲だけど骨折はしてなくて、打ち所が悪くて昏睡状態だったんだ。

一歩間違ってたら『タ◯チ』のかっちゃんだ。」


私はあの有名なセリフを思い出す。


『キレイな顔してるだろう。ウソみたいだろう。死んでるんだぜ、それで…』


小春が言いたいのも、恐らくこれだろう。


「まっ、楓が生きてるから言えるジョークだけどな。

でも家族以外、ずっと面会謝絶だったんだぞ。」


私が事故に遭ってすぐに、男の子の家族が男の子を伴って謝罪に来たらしい(車の運転手は直後に逮捕されてしまったそうな)。


父親は早くに亡くしておらず、母親と兄が来たそうだが…


「…驚くなよ、その兄ちゃんが何と…」


小春が言いかけた瞬間


「失礼しますっ!この度は弟のせいで申し訳ありませんでしたっ!!」


そこに立って深くお辞儀をしていたのは今をときめくプロ野球選手の投手、加藤かとう 皐月さつきだった。

しかも私と小春は大ファンだ。


「えぇぇぇーーーっっっ!!!」


個室で良かった、かなり大声が出てしまった。


「驚いただろ、加藤選手は年の離れたお兄さんなんだって。」


加藤選手はまだお辞儀の姿勢のままだ。


「あ、あのっ、こうして私は助かったんで顔を上げて下さい!」


顔を上げた彼と初めて目が合う。

加藤選手はすごく驚いた顔をしていたけれど、この時の私は分からなかった。


この後、私達は弟さんが今は元気だと聞いて安心した。

しかも、ちゃっかり二人してサインまで貰ってしまった。



ーー検査の関係で目が覚めて10日後、つまり今日が退院日だ。

ひいお祖母ちゃんと水平思考ゲームをした日数と一緒だなぁと思いながら、私は両親と小春と一緒に病院を後にした。


「ありがとう、ひいお祖母ちゃん。」


心の中でお礼を伝えた。





《完》
















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...