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アメジストの章
事情聴取ー公爵令嬢の場合ー③
しおりを挟む公爵令嬢は暫しの間、逡巡する様子だったが決意してアメジストを見つめた。
「これはあくまで、わたくしが小耳に挟んだ位のお話とお思いくださいませ。」
「はい」と、アメジストは頷く。
「トムリード家は領地経営だけでなく商いの方面も手広く経営されております。
ですが、最近その内の一つが大損害を受けたらしいのです。
そしてそれがドミノ式になって他の商いにも影響しているとの事。
近々わたくし自身でしっかりと情報を得ようとした矢先でー」
ーこの狂言事件だった訳である。
「でも、その状況でスラリズラ様と婚約破棄する方がトムリード様にとって損なのでは?」
「恐らくですが、わたくしの『持参金』にも手を付けているのでしょう。」
「『持参金』?」
聞き慣れない単語にアメジストはコテンと小首を傾げた。
「我々貴族は嫁入り、婿入りする時に婚約を結ぶ時に相手方に『持参金』という名目でお金を渡すのです。
そのお金で結婚費用を賄ったり、いざという時に使用したりします。
ですが元々はこちらのお金ですので、婚約解消の場合や離縁した時は全額返さねばなりません。」
「えっ…あれっ!?じゃ、じゃあ婚約破棄の場合はどうなるんですか?」
令嬢は一つ間を取って答える。
「慰謝料代わりに返さなくても良いのです。
それでも足りない場合は支払う事もございます。」
ーアメジストは頭をハンマーで殴られた様な気分だ。
最初は個人間の諍いと思っていた案件が、背後に侯爵家も絡んでいるであろう案件になってしまった。
いや持参金に手を付けているなら確実に絡んでいる。
アメジストは事の大きさに両手で頭を抱えた。
「…うぅ、私には荷が重すぎるよぅ…」
心の声がつい口から出てしまう。
それを聞いた令嬢の眼差しが強くなった。
「自信をお持ちくださいませ、アメジスト様!
貴女様の判断はたとえ皇帝陛下であっても覆す事はできません!」
「ちょっ、ちょっとー、何で私にそんなにプレッシャーかけるんですかぁ!?」
思わぬ圧にアメジストは涙目だ。
「…いえ、何となく貴女様はそうした方が気合いが入りそうな気が致しまして。」
「逆効果ですぅぅ!!」
ケロリと答えた令嬢にアメジストは抗議した。
「それよりも話を戻しますが、今回の件で巻き込まれたベンディ様です。」
しれっとした顔で令嬢は流れを引き戻す。
アメジストも気を引き締めた。
「彼女に関してはまだ何も情報を持っておりません。
ステファン様が生徒会に熱心に勧誘なさっていたというのも初耳です。」
「分かりました、ご協力ありがとうございました。」
アメジストは公爵令嬢に一礼して彼女の事情聴取は終わった。
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