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アメジストの章
最後の案件①
しおりを挟む夜中の睡眠妨害から一睡もできなかったアメジストは目の下に薄っすら隈ができている。
身なりを専属侍女と共に整えて、いつもの強力な胃薬も準備をしてもらった。
「今日はいつもみたいに嫌なお顔はなさらないんですね?」
「寝不足だからぁ…気付け薬代わりに飲む日が来るとは思わなかったわよ。」
そう言ってアメジストは胃薬を一気飲みする。
「ゴホゴホゴホッ!!」
それでも強い苦味に思わず咽せた。
涙目の苦い顔をしながら侍女に告げる。
「これで最後です。行ってきます!」
ーアメジストの最後の役目が始まった。
☆☆☆☆☆
定刻通りに2回目の公判は始まる。
被告人である皇弟はアメジストが見下ろす証言台に既に立っていた。
今日も傍聴席は立ち見も含めて満席である。
その中に当然、皇帝・皇后夫妻も含まれていた。
アメジストは木槌を3回鳴らす。
「ーこれより『特例許可法違反』の2回目の公判を開廷致します。
静粛に!」
彼女の開廷の発言でざわついていた場が静まった。
「被告人、この罪に関して無罪を主張していますが変わりありませんか?」
「あぁ、無罪を主張する。」
アメジストから見える皇弟の顔は黒いモヤで何も見えない。
「では検事、証拠品の提出をお願いします。」
アメジストは検事である騎士に向かって告げた。
騎士も彼女の言葉を合図に証拠品である書類を二枚手渡す。
アメジストはその中の『養子縁組』の書類をまず手に取った。
「ー被告人、この書類に見覚えはありますか?」
「ある訳がない。」
やはり皇弟の顔は真っ黒である。
「内容を要約して読み上げます。
『アレキサンダー・ルーナ・ジュエリーラが養親、そしてパールを養子として迎え入れる。』
この内容でパールを養子にしましたか?」
「していない!」
先程より黒いモヤは少し薄れた。
実際、書類は作成したものの自身が知らない内に提出されていたのだ。
全てが嘘な訳ではないだろう。
「ですが署名欄に被告人とパールの直筆のサインと拇印が揃っていますが?」
「偽物だ!」
祝福者二人が周到に準備した証拠だ。
偽物のはずがない。
この書類に関してはもう追及する点はないので、アメジストは『特例許可証』を手に取った。
「この証拠品は『特例許可証』。
ジュエリーラ帝国の祝福者が国外に出る時に役所に提出する書類です。
これは『パールの祝福者』パールの許可証。
ーつまり、この書類が破棄されずここにあるという事はパールは国外逃亡したという事です。」
女神ジュエルの祝福者が国外逃亡したという事実に傍聴席が騒然となる。
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