誕生石物語・Ⅱ

水田 みる

文字の大きさ
53 / 81
アメジストの章

最後の案件①

しおりを挟む

 夜中の睡眠妨害から一睡もできなかったアメジストは目の下に薄っすら隈ができている。

身なりを専属侍女と共に整えて、いつもの強力な胃薬も準備をしてもらった。


「今日はいつもみたいに嫌なお顔はなさらないんですね?」

「寝不足だからぁ…気付け薬代わりに飲む日が来るとは思わなかったわよ。」


そう言ってアメジストは胃薬を一気飲みする。


「ゴホゴホゴホッ!!」


それでも強い苦味に思わず咽せた。

涙目の苦い顔をしながら侍女に告げる。


「これで最後です。行ってきます!」



ーアメジストの最後の役目が始まった。





☆☆☆☆☆

 定刻通りに2回目の公判は始まる。

被告人である皇弟はアメジストが見下ろす証言台に既に立っていた。

今日も傍聴席は立ち見も含めて満席である。

その中に当然、皇帝・皇后夫妻も含まれていた。


アメジストは木槌を3回鳴らす。


「ーこれより『特例許可法違反』の2回目の公判を開廷致します。

静粛に!」


彼女の開廷の発言でざわついていた場が静まった。


「被告人、この罪に関して無罪を主張していますが変わりありませんか?」

「あぁ、無罪を主張する。」


アメジストから見える皇弟の顔は黒いモヤで何も見えない。


「では検事、証拠品の提出をお願いします。」


アメジストは検事である騎士に向かって告げた。

騎士も彼女の言葉を合図に証拠品である書類を二枚手渡す。

アメジストはその中の『養子縁組』の書類をまず手に取った。


「ー被告人、この書類に見覚えはありますか?」

「ある訳がない。」


やはり皇弟の顔は真っ黒である。


「内容を要約して読み上げます。

『アレキサンダー・ルーナ・ジュエリーラが養親、そしてパールを養子として迎え入れる。』

この内容でパールを養子にしましたか?」

「していない!」


先程より黒いモヤは少し薄れた。

実際、書類は作成したものの自身が知らない内に提出されていたのだ。

全てが嘘な訳ではないだろう。


「ですが署名欄に被告人とパールの直筆のサインと拇印が揃っていますが?」

「偽物だ!」


祝福者二人が周到に準備した証拠だ。

偽物のはずがない。

この書類に関してはもう追及する点はないので、アメジストは『特例許可証』を手に取った。


「この証拠品は『特例許可証』。

ジュエリーラ帝国の祝福者が国外に出る時に役所に提出する書類です。

これは『パールの祝福者』パールの許可証。

ーつまり、この書類が破棄されずここにあるという事はパールは国外逃亡したという事です。」


女神ジュエルの祝福者が国外逃亡したという事実に傍聴席が騒然となる。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

世界の現実は、理不尽で残酷だ――平等など存在しない

鷹 綾
恋愛
「学園内は、身分に関係なく平等であるべきです」 その“正義”が、王国を崩しかけた。 王太子ルイスは、貴族学院で平民出身の聖女マリアがいじめられたと信じ、 婚約者である公爵令嬢アリエノール・ダキテーヌを断罪し、婚約破棄を宣言する。 だが―― たとえそれが事実であったとしても、 それは婚約破棄の正当な理由にはならなかった。 貴族社会において、婚約とは恋愛ではない。 それは契約であり、権力であり、国家の均衡そのものだ。 「世界は、残酷で不平等なのです」 その現実を理解しないまま振るわれた“善意の正義”は、 王太子の廃嫡、聖女の幽閉、王家と公爵家の決定的な断絶を招く。 婚約破棄は恋愛劇では終わらない。 それは、国家が牙を剥く瞬間だ。 本作は、 「いじめられたという事実があっても、それは免罪符にはならない」 「平等を信じた者が、最も残酷な結末に辿り着く」 そんな現実を、徹底して描く。 ――これは、ざまぁではない。 誰も救われない、残酷な現実の物語である。 ※本作は中世ヨーロッパをモデルにしたフィクションです。  学園制度・男女共学などは史実とは異なりますが、  権力構造と政治的判断の冷酷さを重視して描いています。 ---

処理中です...